築古戸建の場合、リフォーム費用は必ずかかると思っておいた方がよいだろう。しかし、初心者にとって戸建1軒のリフォームにどのくらいの費用がかかるのかを購入前に見極めるのは難しい。
戸建投資の利回りは、「物件の購入価格+リフォーム費用」をベースに考える必要がある。せっかく安い物件を購入しても、物件の状態によっては想定以上のリフォーム費用がかかって利回りが大幅に低下してしまう恐れもある。
戸建投資でつまずいてしまった投資家たちの失敗談を紹介した前回の記事でも、リフォームに関連する失敗が多かった。
今回は、玄人投資家が実践しているリフォーム費用が安く済む物件の見極め方や、賃料を上げるためのリフォーム術などを紹介する。また、入居者の安全性を脅かす危険性をはらむ「素人工事」の注意点を専門家に解説してもらう。
戸建リフォーム費用はいくらかかる?
都内に13軒の戸建を所有し、DIYリフォームを得意とする不動産投資家の岩橋さん。岩橋さんがこれまでに購入した戸建のうち、最小限のリフォームを行った物件とバリューアップのリフォームを行った物件を例に、実際にどのぐらいの費用をかけてリフォームを行ったのか確認していこう。
岩橋さんが所有する戸建は、築20年ほどのものから築50年以上までさまざま。内装は基本的にDIYリフォームを行うが、リフォーム内容によって外注工事を組み合わせている。築年数が古いものでも途中でリフォームされている物件を選ぶことで、1軒当たりのリフォーム費用は平均80万円ほどに収めているという。
そんな岩橋さんが購入した中でも、あまりリフォーム費用をかけずに済んだ物件から紹介する。
【最小限のリフォーム物件概要】
・購入時期 2021年夏
・エリア 東京23区
・築年数 築20年
・価格 売却済みのため非公表。売却益は100万円程度。
・間取り 3DK
・家賃 月12万円
・リフォーム費用 30万円
築年数が20年程度の物件だったが、使いにくい間取りであった為、キッチンや洗面台の配管をDIYして位置を変更し、新品を入れたそうだ。クロスを全室張替え、床の一部を張替えるなどの部分リフォームも行った。DIYで工期は1カ月ほどかかったが、リフォーム費用は約30万円におさまった。

キッチンの位置を90度変更し、DIYで設備を新調した
【DIYリフォーム費用の明細】
IKEAキッチン 14万5000円
レンジフード 4万5000円
ガスレンジ 2万6000円
クロス 2万6000円
フロアタイル 3万3000円
照明 8500円
キッチンタイル 5000円
ガス管付け替え費用(外注)1万5000円
合計 約30万円
この物件のリフォーム費用が安く済んだ理由は、物件の状態がよかったことに加え、ほとんどをDIYで行ったためだ。当初は外注してキッチンの配置を変更する計画だったが、リフォーム会社と日程が折り合わず、結局DIYすることにした。ガス管の付け替え工事は外注した。
今回の作業をリフォーム会社に依頼した場合「20万~30万の追加費用がかかっていたのではないか」と話す。岩橋さんの場合、DIYで表層リフォームを行う場合、まるまる1軒でも総額は100万円以内に収まるケースが多いという。しかし、すべてを外注した場合はその2~3倍の費用がかかると考えている。
戸建を購入する際は、リフォーム費用がかからなそうな物件を選ぶという岩橋さん。リフォーム費用が膨らむことを警戒して避ける物件もある。
【岩橋さんが避ける物件の特徴】
・バランス釜
・和式トイレ
・屋根に太陽光設備などがある物件
岩橋さんの考えでは、バランス釜や和式トイレだと募集時の反響があまりよくないため交換が必要となり、リフォーム費用が膨らむ要因となる。例えば、バランス釜の浴室からユニットバスに変更する場合の相場は80万~100万円ほど。和式から洋式トイレへの交換は、業者に依頼すると20~30万円前後。DIYでも10万円ぐらいかかる。
600万円かけてバリューアップも
最低限のリフォームに抑える物件がある一方、しっかりとリフォームする物件もある。豊島区の高級住宅街にあり、隣接するアパートとセットで購入した2階建ての戸建だ。
基本的にはリフォーム費用があまりかからない物件を選んでいるという岩橋さんだが、この物件は立地が良く将来的な利用価値も高いと見込んで取得した。土地柄、しっかりとリフォームすれば高い家賃で貸せると考え、躯体の耐震補強工事なども含めて600万円ほどをかけてリフォームした。
【バリューアップリフォームした物件の概要】
・購入時期 2019年8月
・エリア 東京都豊島区
・土地面積 33坪
・築年数 築99年
・間取り 4K(3LDKに間取り変更)
・価格 1800万円程度(アパートとセット購入のため概算で)
・リフォーム費用 約600万円
・家賃 月22万円

和室をリビングルームにリフォーム
「この物件は築年数がかなり古いのですが、これまで一度も大がかりなリフォームは行われていないようでした。玄関ドアやサッシも、元はすべて木製でした。よくボロ物件であるような、床が抜けているといったことはありませんでしたが、決済の直前に台所で漏水が発生しました。壁の中の管から水漏れしたので壁などに影響が出ましたが、この物件はもともと数百万円かけてフルリフォームする予定だったので、そのまま購入することにしました」
購入時点でリフォームに数百万円はかかると見込んでいたという岩橋さん。実際にかかったリフォーム費用は以下の通りだ。
この連載について
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全16話
金融機関の融資姿勢や物件価格の高騰などを背景に、購入価格が安く手が届きやすい「戸建投資」に注目が集まっている。だが、「戸建投資」にリスクやデメリットはないのだろうか。この先、どのように戸建投資で生き残るためにどうすればよいのだろうか。楽待がこれまで蓄積してきたデータや、複数の戸建投資家たちの戦略など、あらゆる角度から「戸建投資」を徹底的に特集する。
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