「特集 戸建投資」と題して、データ分析や投資戦略、収支公開、失敗事例など、さまざまな角度から戸建投資について取り上げてきた。今後、戸建投資への参入を考えている人は、ぜひすべての記事をご覧いただき、実践に役立ててほしい。

最終回となる第7回では、「戸建投資の現在と未来」について改めて見ていきたい。経験豊富な投資家5人に、「現在の戸建投資ブームをどう見ているのか」「今後、戸建投資がどうなると予想するか」を聞いた。

また、後半ではこれまでのコンテンツを要素別にまとめている。見逃した記事などがあれば、ぜひご覧いただきたい。

戸建投資の未来予想は?

 築古大家のコージーさん
 投資歴:約9年
 戸建所有数:12軒

―いまの戸建投資ブームをどう見ていますか

私が不動産投資を始めた2012年ごろは、一棟物件に注目が集まっていました。というのも、一棟物件の不動産に融資をしてくれる金融機関が多かったことや、一棟物件を多く所有する有名な投資家が生まれていたからです。その状況が大きく変わり、今や「戸建投資ブーム」と言われるまで、戸建物件に人気が出るとは思っていませんでした。

不正融資問題が明るみになったことをきっかけに、不動産投資への金融機関の融資姿勢が厳しくなりました。そして、不正融資による無謀な不動産投資の実態などが明るみになったことで、比較的少額の現金で始められてコツコツ堅実感のある戸建投資に注目が集まったという流れのように感じます。

世間に戸建投資が浸透したことで、収益用途に使える戸建に一定の相場観が形成されました。その影響で、利回りを確保できる収益戸建が激減しているように思います。

―戸建投資の今後をどう予想しますか

世の中にある建物の大多数は築古戸建です。地元の不動産会社などにコネクションを作れる方は、十分に利回りが取れる価格で、今後も継続して戸建を購入していくでしょう。

一棟物は地主や資産家のもので「雲の上」という印象があるのに対し、戸建は多くの方が想像しやすい身近な不動産です。築古や地方物件の立地となれば、ただ同然で手に入れることもできます。

現在は家庭の主婦からFIREしたいサラリーマン投資家、業者まで参入しています。この加熱感は冷めることなく、このままの状況が定常化すると思われます。利回りの出る収益戸建がポータルサイトにたくさん掲載されている時代は終わったと感じます。

今後注意しないといけないことは、日本の世帯数が減少に転じていることです。核家族化や単身者が増えることで、これまで世帯数は伸び続けていましたが、とうとう不動産賃貸のマーケットが縮み始めたと読み取れます。

これまで入居付けに困っていなかった戸建であっても、例えば立地条件の悪い場所にあれば、入居者が徐々につきにくくなっていくことも考えられます。今後はより立地に気を配る必要が出てくるでしょう。

 地主の婿養子大家さん
 投資歴:約17年
 戸建所有数:11軒

―いまの戸建投資ブームをどう見ていますか

応援する気持ち半分と危惧する気持ち半分です。過去にも業者が買取再販で流行った時期はありましたが、大半の業者は撤退しました。

業者が撤退した理由は以下です。
・不測の出費により思ったより儲からないから
・手間がかかるのに儲からないから
・再販時に住宅ローンが使えない案件が多いことに気がついたから

この「住宅ローンが使えない案件」という部分ですが、知らない方も多いのではないかと思います。築古戸建は住宅ローンの適用外のものも多いです。業者の中にはリフォームを上手に活用して採算を合わせた会社がある一方で、大半の業者はその採算が合わずに撤退しました。

私の場合、実需売却を出口に見据えていますが、過去の2軒売却のどちらも現金購入の実需売却で、最初からそのつもりで絵を描いていました。ただ、そのあたりを一般投資家の方に当てはめるのは難しいと思います。

程度の低い物件は、オーナーチェンジで売り逃げるケースも見受けられますが、それはまさにババ引きなわけです。流行りの裏には必ずこのような実態もあると懸念しています。

―戸建投資の今後をどう予想しますか

自分で言うのもなんですが、私は流行る前からやっていますし、一部の業者でも戸建に特化している業者すらあり、完全に無くなることはないと思います。ただ、流行りそのものはそのうち必ず頭打ちになる時期は来ると思っています。

一方で、流行るには理由があり、その理由の中にまさに戸建投資の魅力が詰まっていると思います。その魅力を享受するためには、戸建の持つポテンシャルをしっかり引き出せる腕と、儲かる戸建と儲からない戸建を見分ける目が必要になると思います。やっぱりしっかり勉強して肌で感じることでしか、成功を「続ける」ということは難しいのでしょうね。

ということで読者の皆さん、実践大家コラムで一緒に学びましょう! 学んでいるうちに自分には戸建が合っている、一棟物が合っていると分かるようになると思います。

 しげお@さん
 投資歴:約5年
 戸建所有数:5軒

―戸建投資の今後をどう予想しますか

プラス面では、一棟物の価格が高騰し、融資を受けて購入検討できる物件が少ないなどの理由により、戸建人気は継続すると思います。ローンを組むというハードルの高さがなく、現金で処理できてしまう点も新規参入が増える理由の一つだと思います。(最悪損しても現金だから)

DIYをして高利回りを目指そうとする初心者投資家の参入は増えていくでしょう。数年前から戸建投資をしている投資家は戸建の値段の上がり具合を見て一旦様子見し、よほど良い物件が出た時に反応できるように準備しています。DIYセミナーや大家の会などは活発になると思いますね。

一方マイナス面では、物件価格が高騰していて、リフォーム費用の圧縮しか教えない(教えることができない)セミナーや大家の会が増えています。こうしたセミナーや大家の会経由の初心者投資家が、物件の価値を見誤り、DIYをしても採算の合わない物件(元値が高い)やDIYの難易度が高い(その方の技術不足)物件を誤って買い、被害を受けるケースが増える懸念があります。

さらに、それを狙った投資家・不動産再販業者が増えていることも事実です。契約不適合責任免責にして売る業者も存在します。オーナーチェンジ物件は内見不可のため、思ったより内部の劣化が進んでいるといった問題もあるでしょう。買主のレベルを上げないと大変なことになってしまいます。

ブームに流されて、戸建価格が高騰し、利回りが低下する中で、戸建を現金で買うなら一棟物件を買った方が良いという考え方もあります。偏った情報ではなく、多様な考え方をバランスよく学ぶ事ができる情報発信力のあるサイトが必要だと思います。

実践大家コラムでは、多様なスタイルを持つ投資家の方々がノウハウを発信しています。悲観的なことも書きましたが、私もコラムニストの1人として、戸建投資で損する方が出ないように情報を発信していきたいです。

 MOLTAさん
 投資歴:約30年
 所有物件数:6棟132室

―いまの戸建投資ブームをどう見ていますか

戸建賃貸という手法が広く知られたことは、良い傾向だと思っています。サラリーマンとしての給与収入に加えて、もう1つの収入の柱を作ろうと決心し、実行に移せる人は格段に増えたと思います。

自分にとってはライバルの増加に直結しますが、そういった投資マインドを持っている人の比率は、社会全体の中で1割をはるかに下回っていると思います。リスクを背負う覚悟を持ちつつ、事業に取り組もうとする前向きな人とは一緒に切磋琢磨していきたいですし、もっと増えてほしいですね。

ただ、戸建投資はハードルが低い分、腹の括り具合が甘い方も増えてきていると感じます。もちろん、失敗も経験しながら経験値を積んでいくという考え方もあります。しかし、人様に安心安全なお住まいを提供するという賃貸業は、決して甘い考えで取り組むべきものではないと思っていただきたいです。

―戸建投資の今後をどう予想しますか

まだまだビジネスチャンスは広がると思っています。戸建投資は、(1)保有を続ける、(2)投資家向けに売却し利確する、(3)実需向けに売却し利確するといった、大きく3つの出口があると思っています。

仕入れ価格が上昇を続けている中では、(2)はなかなか厳しいと思いますが、(1)は共同担保などへの活用が考えられます。また、(3)はイールドギャップへの期待も考えられます。こうした多様性も戸建投資の魅力ですし、その魅力はまだまだ損なわれないと思っています。

ただ、ポータルサイトに上がってくるような物件については、まだまだ高止まりするでしょう。そのため、仕入れ力が問われることになると思います。

それでも、皆が皆、「CF1000万円!」といったラインを目指す必要はないわけです。「毎月の収入に10万円程度の余裕が欲しい」と思って始める方もいて全然OKです。

そうして始められた中で、不動産の魅力を感じ、より大きなフィールドを目指していくことは素晴らしいことだと思います。そうした不動産投資の間口を広げるための手段として、戸建投資はまだまだ有効ですし、これからも魅力ある投資の一つとなり得ると思っています。

 FIRE大家 テリー隊長さん
 投資歴:約20年
 所有物件数:一棟物件6棟、区分2軒など

―いまの戸建投資ブームをどう見ていますか

多くの初心者が戸建投資に参入していると思いますが、戸建投資の特徴を正しく理解しているかが少し心配です。重要なポイントは大きく4つあると思います。

・築古木造戸建は、減価償却期間が4年で終了する
・購入時と、その後の修繕費を正確に見積もる必要がある
・税金(所得税、住民税)の計算と、経時変化の見極めが重要
・土地値での売却や実需での売却は保証されておらず、簡単ではない

購入時のCF計算だけでなく、上記のポイントを考慮して、10~20年後の収益計算、出口戦略も検討することが必要です。SNSなどの書き込みを見ると、その検討が不十分な人も見られ、心配になることが多いです。そもそも戸建投資、特に築古戸建は上級者向けの投資という認識があり、少し非効率的な投資だと考えています。

―戸建投資の今後をどう予想しますか

日本では、過度に新築戸建の支援政策が継続された結果、日本中に老朽化した戸建があふれています。一方、国民の所得伸び悩みにより、家を所有することから借りることに考え方が変化して、今後は賃貸住宅の割合が増えていくと思われます。

このような状況の中、比較的少ない投資額から始められ、折からの副業ブームと合わせて、既存の戸建て住宅を活用して大家業を始めようとする人が増えています。益々戸建投資は活況を帯びてくるでしょう。

ただし、物件の価格高騰や奪い合いで、実質利回りは低下し、なかなか儲けられない投資になっていくと思います。よって、勝者になるためには不動産や建築、投資に関する高度な知識が求められるようになっていくと予想します。

「特集 戸建投資」を振り返る

11月28日から始まった戸建投資の特集を振り返りたい。楽待新聞編集部の記事以外にも、YouTube動画や実践大家コラム、楽待相談室などでも戸建てに関するコンテンツを取り上げている。見逃しているコンテンツがあれば、ぜひご覧いただきたい。

●YouTube動画

【楽待特集】副収入月5万円目指し格安の空き家を購入、オーナーの思わぬ誤算とは?「空き家投資」のリアルに迫る

将来への不安から、副収入を得るべく戸建投資に挑戦した複数の投資家を現地取材。予想以上にリフォーム費がかさみ、「厳しい現実を突きつけられた」と肩を落とすオーナーも。

また、近年ブームとなっている「築古戸建DIY」のリスクについても調査。YouTubeを見てDIYに挑戦したオーナーは「実際にやってみると動画のようにうまくはいかないと分かった」と話し、入居付けにも苦戦、結局損切りを余儀なくされた。

動画の後半では、建築構造の専門家が「倒壊の危険をはらむ、やってはいけないDIY」について詳しく解説している。

●楽待新聞編集部 記事

第1回:10年分のデータから読み解く、「戸建投資」の現在

楽待に蓄積されたデータや、投資家アンケートの結果などをもとに、戸建投資の現状を探った。47都道府県別の「戸建て賃貸の市場動向レポート」は、購入対象エリアの選定に大変役立つ内容になっている。ぜひPDFデータをダウンロードして、ご覧いただきたい。

第2回:「築古DIY」はもう古い? 戸建で勝つための新・投資戦略

戸建てブームの今、戸建投資の経験が豊富な6人の投資家たちが考える「新たな投資戦略」を紹介した。300万円以下の物件を狙う投資家もいれば、リフォーム込みで1000万円台まで範囲を広げる投資家もいる。一口に戸建投資と言っても、投資エリアや資産背景などによって、多様なやり方があることがわかる。

物件価格やリフォーム価格の高騰といった環境変化を踏まえ、自身に合った投資戦略を考えるきっかけにしてほしい。

第3回:310万円と1380万円の中古戸建、2物件の収支を大公開!

戸建と言っても、都心か地方か、融資の有無などによって、保有中のCFや利益はまったく違う。この記事では、現金で購入した地方の310万円の戸建と、融資を受けて購入した都心の1380万円の戸建の収支を公開。それぞれいくら費用がかかり、どれくらいの利益が得られたのかぜひチェックしてほしい。

第4回:こんなはずでは…戸建投資の「ワナ」にはまった投資家たち

戸建投資に参入したばかりの投資初心者が陥りやすい失敗を、事例をもとに紹介した。「購入前に不具合を見抜けなかった」「想定外のリフォーム費用が…」など、あるある失敗談ばかりだ。

これから戸建投資を始めようと検討中の方へ、成功ノウハウももちろん大事だが、失敗事例ほど読んで損になることは他にない。

第5回:戸建ブームでDIYリフォームに注目、「素人工事」のリスクも

戸建投資の利回りへの影響が大きい「リフォーム費用」。初心者にとって難しい戸建リフォーム費用の見極め方について、経験豊富な投資家のリフォーム事例をまじえて紹介した。

また、戸建ブームでDIYリフォームをする人も増える中、「素人工事」の問題点について専門家に意見を聞いた。入居者が安全かつ快適に暮らせる住まいを提供する重要性についてもあらためて考えるきっかけにしてほしい。

第6回:築古戸建のリフォーム費、「空家再生屋」はいくらかける?

価格が安い築古戸建の場合、リフォームをどの程度まで行えばいいのか迷う人もいるのではないだろうか。この記事では、これまで約200戸の戸建を再生してきた「空家再生屋」の川村ふぁるさんに、リフォーム費用を抑えるコツや物件の選び方について聞いた。ぜひ動画と合わせてご覧いただきたい。

実践大家コラム コラボ企画「戸建投資」

特集期間中、実践大家コラムニストに「戸建投資」をテーマにしたコラムを執筆いただいた。これまでに経験した自身の体験談や今後の戸建市況予想など、幅広い情報を得ることができる。先輩投資家が提供しているリアルな情報を今後の投資に役立ててほしい。

実践大家コラムは、こちらから!

楽待相談室

楽待相談室では、特集期間中に戸建投資に関する質問が多く投稿されていた。リフォームや融資、害虫駆除に関する多様な投稿があり、参考になる回答もたくさんあった。

回答を見ることも学びになるが、ぜひご自身の悩みを投稿してみてほしい。他の方の知識や経験を借りることで、これまで悩んでいたことを解決できることもあるかもしれない。

楽待相談室は、こちらから!

近年、融資の引き締めや物件価格の高騰により、安く入手できる「戸建投資」の人気が明らかに高まってきている。また、全国的に増え続ける「空き家」問題の解決策として、多様なメディアでも特集が組まれたことでさらに認知度が高まった。

戸建投資は良い面ばかりがクローズアップされがちだ。しかし、その手軽さゆえに、戸建投資の裏に隠れた危険についてよく理解しないまま手を出してしまう投資家が増えることが懸念される。

そういった問題意識から、不動産投資専門メディアである「楽待新聞」が戸建投資について網羅的な情報を提供することで投資家の役に立てると考え、今回の特集に至った。

失敗事例で見てきたように、戸建を少額で購入できるからといって、失敗のリスクが減るわけではない。むしろ、安さの裏に大きな危険が隠れていると考えてほしい。また、安直に行ったDIYリフォームが人命を危険にさらす恐れもある。

戸建投資に限る話ではないが、投資の成功と失敗を分ける要素の1つに「十分な学習をしたかどうか」が挙げられる。本特集が戸建投資について理解を深める機会になれば幸いだ。

(楽待新聞編集部)