PHOTO:ponta2012/PIXTA

みなさんこんにちは。一級建築士の満山堅太郎です。突然ですが、みなさん「コストコ」はお好きですか?

ご存知の方も多いとは思いますが、コストコは米国発祥の会員制スーパーです。1999年に日本に上陸し、本稿執筆時点で国内に31店舗を構えています。

コストコと言えば、やはり「ホットドッグ」です。円安・物価高のこの時代にトッピング無料、ドリンク付きで180円という安さは魅力です。また店内で販売されている商品も一般的なスーパーとは異なります。米国発祥だけあって量も多く、店内には珍しい商品がたくさん並んでいます。

そんなコストコですが、日本支社長のケン・テリオ氏が2021年に「今後10年で国内60店舗を目指す」と発表しています。もし、みなさんの所有物件の近くにコストコが新規出店されたら、入居者募集にプラスに働くのではないでしょうか?

そこで今回は、コストコのこれまでの出店戦略を分析しながら、今後の新規出店エリアを予測してみたいと思います。コストコの公式発表や、既存店舗エリアの分析、また出店可能な用途地域などから、総合的に考えていきたいと思います。

コストコはなぜ人気なのか?

本題に入る前に、本記事の主役であるコストコの魅力について、もう少し語らせてください。

コストコの特徴は、「コストパフォーマンスの高い商品」、「近所のスーパーでは買えない珍しい商品」、そして冒頭でお話した「トッピング無料のドリンク付き激安ホットドッグ」です。これらに惹きつけられて、コストコに何度も通う人は多いかもしれません。

また、コストコは会員制スーパーで、年会費として4840円(2022年12月時点、税込)がかかります。けっこうな金額なので、元を取ろうとする心理が生じ、継続的な購買行動に繋がっている、ということもありそうです。

コストコ名物、トッピング無料のホットドッグ(著者撮影)

「自分の住む街にコストコがほしい!」と考える人も多いです。

私は今年の3月まで、地方の市役所の職員として、建築や都市計画など街づくり全般に関する業務に携わっていました。当時は地域の方々とまちづくりについてお話する機会がとても多かったのですが、誘致してほしい店舗を聞くと、必ずと言っていいほど「コストコ」が上位に入っていました。比較的若い世代の方に人気があったように記憶しています。

コストコの店舗数と立地戦略を分析する

コストコの魅力についてはこのぐらいにして、ここからは、コストコの出店戦略と出店実績を見ていきます。

冒頭で述べた通り、コストコは今後、店舗数を増やしていく方針を打ち出しています。「今後10年で60店舗まで増やす」とのことから今後、地方都市圏も含めて出店を加速していくものと考えられます。

ここではまず、コストコの既存店舗の立地条件と、都市圏別の人口を見ていきましょう。なお、ここで言う「都市圏」は、市町村の行政区域単位のことではなく、複数市町村で構成される都市計画法上の「都市計画区域」を指します。これは一般的に、日常生活圏が密接に関係するエリアであるため、行政区域よりも実体の経済圏に近いのが特徴的です。

さて、下表はコストコの既存店舗の一覧表です。2023年春の開業が決定している群馬県明和町の1店舗も加えて、32店舗分記載しました。

コストコの既存店舗一覧(著者作成)

注目すべきは、やはり人口です。集計したところ、1店舗あたりの都市圏平均人口は約103万人、中央値は約70万人という結果になりました。現時点では大都市地域への出店の割合が多いため、1店舗あたりの人口規模は大きくなっていますが、今後地方圏への出店が進めば下がっていくでしょう。

さて、この既存店舗の一覧表を見ると、もっと人口が多い場所があるのに、なぜその地域に出店がないのか? と思うところもあるかもしれません。これは、土地の確保が難しい地域があるためでしょう。市街地で大規模な敷地を確保するのはなかなか難しいのです。

コストコの出店条件の1つである「敷地面積1万坪以上」というのは、工場跡地や自治体がつくる新たな造成地でもない限りは見つけるのは困難です。仮に見つかったことしても、コストコ以外の商業施設だったり、新規工場の需要がありますから競争となります。

地方圏には未利用地がたくさんあるのでは? と思われるかもしれませんが、未利用地といっても、まとまった集団の土地があるわけではなく、未利用地周辺に住宅が点在していたり、建築基準法上の道路がなかったりします。こういう土地は区画整理などが必要となり、時間とコストが生じる可能性があります。

コストコが公式発表している出店条件は?

続いてはこの結果を、コストコが公式Webサイトで公表している出店エリアの立地条件と照らし合わせてみましょう。公式Webサイトでは、全部で9つの条件が設けられています。

1. 高所得層マーケット
2. 半径10キロメートルの人口が50万人以上
3. 企業が多い地域
4. 敷地面積 1万坪以上(ガスステーション用敷地を含む)
5. 建築面積 約4500坪以上
6. 用途地域=準工、商業、近隣商業(売り場面積1万平米超)
7. 駐車場収容台数、800台以上
8. 車のアクセスの良い物件
9. 購入・定期借地(40年以上)・建貸

この中で特に注目したいのは、やはり「半径10キロメートルの人口が50万人以上」です。スーパーにとって商圏内の人口は重要です。

すでに出店している都市圏をみると、ひたちなか市(茨城県)や富山市、野々市市(石川)のように都市圏人口が50万人以上の地域に加え、岐阜羽島や熊本御船のように大規模都市圏(岐阜市や熊本市)に隣接した地域に出店しているケースが見られます。確かに、人口については十分に考慮して出店計画が立てられているようです。

ただし、例外がないわけではありません。上山市のように、都市圏人口が30万人程度のエリアにも出店しているケースもあります。

「用途地域」も重要な要件

ちなみに、前出の9つの条件のうちの1つ、「用途地域=準工、商業、近隣商業(売り場面積1万平米超)」は、不動産にも関係のある項目なので、ここで触れておきたいと思います。

コストコは多くの店舗が、床面積1万平方メートル程度、合計床面積3〜4万平方メートル程度の規模となっており、広域から不特定多数の集客を行える規模になっています。こうした規模の大きな施設のことを、都市計画では「大規模集客施設」といいます。

現在の都市計画法・建築基準法では、コストコやイオンモールのような大規模集客施設は、原則として「準工業地域」「商業地域」「近隣商業地域」にのみ建築可能となっています。また、「市街化区域と市街化調整区域を指定していない都市計画区域の白地地域」でも、建築が禁止されています。

地域経済に大きな変化をもたらし、場合によっては中心市街地の不動産価格にまで影響を及ぼす大規模集客施設は、基本的にこの3つの用途地域(準工業、近隣商業、商業)にのみ建築することができる、と覚えておきましょう。

コストコの新規出店エリアを予測

それでは、現在の各都市の都市圏人口から今後、出店可能性の高い都市圏をランキング形式で紹介します。5つの都市圏をランキングしました。結果は下表の通りです。

※人口密度の値は、都市圏によって非可住地(山林・田畑等)の位置・面積が異なり、実態の居住地の人口密度とは異なるため参考値としています(参考:半径10km内の人口50万以上=15.92人/ha)

なお上記ランキングは、前出の9条件のうち「人口規模」に着目して作成し、その他の要件は除外しています。残りの要件の多くは、人口規模に応じて増加・拡大する傾向にあるので、人口規模が大きければ他の要件も同時に満たせる可能性が高いためです。ただしコストコの出店条件にある「半径10キロメートル」圏内の正確な人口を算出することが困難なことから、ここでは市町村の集合体である都市計画区域内の人口をベースとしています。

またこのランキングでは、人口規模が大きく都市圏の範囲が超広域であり、土地が確保できれば立地可能な三大都市圏(首都圏、中部圏、近畿圏)の市を除いています。

ズバリここ、というようなピンポイントな出店予測ではありませんが、1つの参考にしていただければと思います。

なお、余談ですが、大規模集客施設の出店場所によって、経済の流れは大きく変化することになります。その意味で、都市圏内での利害調整機能の役割を果たす行政の役割は重要になります。特に、近年の広域ネットワークの充実によって、従来の都市計画区域と実態の経済圏が乖離しているという状況があります。再編が必要となっている区域が存在しているので、ますます、行政の役割は重要となってくるでしょう。

逆を言えば、都市計画区域が経済の実態と乖離している非線引き都市計画区域の一部地域などは、大規模集客施設の立地の穴場だったりします。

これまでの出店実績から、コストコが商圏として捉えている地域は、基本的には、中核市・政令指定都市クラスの人口を抱える都市圏であることが分かります。

これらの地域は地方の拠点となる地域です。今後、日本全体で急速な人口減少と少子高齢化が進む中でも、比較的安定した人口と人口密度を維持、もしくはゆるやかな減少にとどまり、極端に経済が縮小する可能性は低いと考えられます。

比較的経済が維持できる都市というのは、人口も流入し続けることが想定されるでしょう。こうしたエリアは不動産の流動性も高く、投資しやすい地域と言えるかもしれません。今後数十年先を見据えた不動産投資でできる限り損を回避するなら、コストコが立地戦略として捉えている地域を選択することも戦略の1つにできるのではないでしょうか。

(一級建築士・満山堅太郎)