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はじめまして、川北英貴と申します。

大学卒業後の7年半、地方銀行の銀行員として融資や営業の業務を経験し、その後独立して18年間、コンサルタントの仕事をしています。専門分野は企業の銀行融資、資金調達、資金繰りです。不動産賃貸業にとって重要な銀行融資について執筆していきます。よろしくお願いします。

さて、物件を購入して不動産賃貸業を行うには、銀行からの融資が非常に重要になります。一方で、銀行から融資を受けたことがない人にとって、銀行用語は分からないものも多いでしょう。ところが、こうした「基本中の基本」については、解説書などもあまり多くありません。

そこで本連載では、地方銀行で融資業務を手掛けた筆者が、銀行融資に関する基礎知識をていねいに解説していきます。銀行融資の基礎を学び、銀行員の発する言葉を理解できるようになれば、融資交渉もしやすくなることでしょう。

今回は、「銀行融資の4つの種類」とその違いをテーマに解説をしていきます。

知っているようで知らない? 4種類の銀行融資

普段はあまり意識することがないかもしれませんが、銀行融資には下表のとおり、「証書貸付」「手形貸付」「当座貸越」「手形割引」の4種類があり、形式によって特徴も異なります。

それでは、4種類の銀行融資、それぞれの特徴を1つずつ確認していきましょう。

1.証書貸付
証書貸付は、銀行と「金銭消費貸借契約書」を交わしたうえで融資を受ける方法です。融資金額や金利、返済期間、返済方法などを記載し、会社の署名・捺印、連帯保証人の署名・捺印を行った上で銀行と契約を交わします。主に返済期間1年を超える長期融資でこの方法がとられ、返済は毎月など、銀行と取り決めた間隔で行います。

不動産賃貸業では、不動産を購入するときにこの証書貸付の方法がとられることが普通です。

【証書貸付の具体例】
不動産購入資金として5000万円の融資を証書貸付で受ける。返済期間は30年、金利2.0%、元利均等返済、毎月18万4809円の360回返済となった。

2.手形貸付
手形貸付とは、「借入用手形」を銀行に差し入れることにより、融資を受ける方法です。手形というのは、記載された金額を期日までに支払う、ということを約束する証書です。手形貸付における借入用手形は、融資を受ける側が「振出人(手形の発行をする者)」、融資を行った銀行が「受取人(手形の金額を支払う義務のある者)」となります。

手形を振り出すには通常、当座預金口座を使います。ただし、借入用手形は銀行が用意するので、当座預金口座がなく手形を振り出すことがない会社でも、手形貸付で銀行から融資を受けることができます。主に返済期間1年以内の短期融資で手形貸付が行われます。

不動産賃貸業では「つなぎ資金」として、手形貸付で融資を受けることがあります。例えば土地を仕入れてアパートを建築する場合です。入居を開始するまでの間、土地の仕入資金や建設業者に着工金・中間金を支払う必要がある時に、最後にまとめて証書貸付に切り替えるまでのつなぎ資金として、手形貸付の方法が取られることがよくあります。

手形貸付は、証書貸付に比べ、融資の手続きが簡素化されています。証書貸付では、融資を受ける会社と連帯保証人の署名・捺印を行ったり、会社や連帯保証人の印鑑証明書を提出したりするなど、手間がかかります。

一方、手形貸付では、その銀行ではじめて融資を受ける時に、銀行取引契約書と連帯保証人の保証契約書を銀行と交わしていれば、その後の毎回の手形貸付の融資では、借入用手形に会社の署名・捺印を行うだけでよいです。手形貸付では、証書貸付に比べて返済期間が短い融資が多いです。そのため手続きが簡素化されているというわけです。また、「金銭消費貸借契約書」に貼る収入印紙に比べ、手形貸付で融資を受ける場合に銀行に差し入れる借入用手形に貼る収入印紙の方が安いです。実際の印紙税額は取引の金額によって異なります。

【手形貸付の具体例】
土地購入とアパート建築で総額8000万円の融資を、1年後に証書貸付として受けることを銀行から約束された。土地仕入時に3000万円、建設業者への中間金支払時に2000万円が必要なので、それぞれの時に手形貸付として融資を一部実行されることとなった。

まず土地仕入資金として3000万円の融資を、1年後に証書貸付へ借り換えるまでのつなぎ資金として手形貸付で融資を受けた(途中の分割返済はなし)。

そこから建築をスタートし、6カ月後に建設業者へ中間金として支払うため2000万円を、そこからさらに6カ月後に証書貸付へ借り換えるまでのつなぎ資金として手形貸付で受けた(途中の分割返済はなし)。1年後の完工時に、残り3000万円を含めた8000万円の融資を受け、既存の手形貸付2本はこの融資で借り換え、30年間の毎月返済がスタートした。

3.当座貸越
当座貸越とは、融資の限度額を設定し、その限度額までであれば、いつでも借入申込書1つで借りたり返したりできる方法です。その融資限度額を「極度額」と言います。

銀行は融資にあたり、極度額を設定しても問題ないかを審査します。審査が通ったら、銀行と「当座貸越契約書」を交わします。その後は、いつでも借入申込書1つで融資が受けられるようになります。

銀行が個人向けに融資商品として出しているカードローンも当座貸越の一種です。ただし極度額は数百万円と低めで、金利は10%近くもしくはそれを超える高い金利になります。企業に対して行われる当座貸越では、極度額は数千万円でも銀行の審査しだいで可能であり、金利も0%台~3%と低くなります。

なお当座貸越は、製造業、卸売業、小売業などで利用されます。仕入や外注費の支払いが多い時にいつでも借りられるようにし、また売掛金の回収が多い時期にいつでも返せるようにするなど、運転資金の融資を想定しています。不動産の購入資金で当座貸越の方法で融資を行うことはありません。

4.手形割引
手形割引とは、売掛先から受け取った手形を銀行に買い取ってもらい、現金化する方法です。銀行は、手形の支払期日に手形を取り立てすることで資金を回収します。そのため、手形割引を行った会社はあとで銀行へ返済する必要がありません。しかし、割引した手形が不渡りになった場合、手形割引を行った会社が銀行から手形を買い戻す義務があります。

不動産賃貸業では賃借人から賃料を手形で受け取ったときに早く現金化するために手形割引を行うことが想定されますが、実務ではほとんどないでしょう。

銀行員の発する言葉の意味を分かるようにしておく

以上のように、銀行融資には4つの種類があります。不動産賃貸業で使われることが最も多いのは「証書貸付」、次に「手形貸付」です。

4つの種類を知っておくことによって、銀行員の発する言葉の意味を分かるようになり、銀行融資への理解が深まることでしょう。

次回以降も、銀行融資に関する基本について引き続き解説していく予定です。

資金繰りプラス・川北英貴)