2022年11月、広島県のカキ小屋で

「2022年の不動産賃貸業を振り返る」をテーマに、経験豊富な投資家にコラムを執筆いただきました。今回は6棟132室を所有、年間CF約9000万円のMOLTAさんです。

これまで地方を中心に、一棟RC物件を買い増してきたというMOLTAさんですが、ここ数年は投資戦略を大きく転換して動いているといいます。今年は、愛着のあった築20年前後の一棟物件を売却したそうですが、なぜ売ることにしたのでしょうか。2022年の不動産賃貸業を振り返っていただきましょう。

不動産市況は、依然「バブル」

今年の不動産市況を振り返ると、本当に「バブル」だったと思います。例えば、私の地元である大阪では、残耐用年数がほぼないような築30年超鉄骨造の物件が、利回り8%前後で流通して、そのまま売れてしまう状況が続いています。明らかに、インカムゲインでは回らないと思える市場ですが、これほど不動産がバブルになってきたのには大きく4つの背景があるように感じています。

1つ目は、関西にある一部の金融機関で、期間を相当延伸して融資を出すケースが増えてきていることです。これまで一部の信金や信組を除き、多くの金融機関は残耐用年数以内で融資を出すことが一般的でした。鑑定評価を行って数年期間を延ばすことができるくらいでした。

しかし、最近はこれまで保守的だった金融機関も、残耐用年数よりも長く融資期間を延ばす事例をよく聞くようになりました。それも資産背景のある人へのスポット的な対応にとどまらず、物件の条件を明確に決め、合致すれば期間を延伸するといった形式にです。

とはいえ、多くの金融機関はその動きにまだ追随しておらず、不動産投資市場では一般化していません。そういった状況下で、残耐用年数オーバーの融資ばかり引いてしまうと、他の金融機関から新たな融資を引きにくい状態に陥ってしまうリスクがあることも事実です。

これから規模拡大を目指す投資家としては、長い期間融資を引ける金融機関をどのように使いこなすのか。そして、自身のポートフォリオをどのような形で組み替えていくのかという中長期の戦略が重要になってくると思います。

2つ目は、プロである不動産会社が物件を爆買いして、さらに利益を上乗せして転売しているということです。統計データではなく、あくまで個人的な感覚と知り合いの不動産会社の社長さん数人から聞いた話ですが、設立したばかりの不動産会社(宅建番号1番)を中心に、いわゆるエンド価格で購入している事例が増えているようです。

ここ2年ほどはコロナ融資で資金調達がしやすかったことが背景にあるのでしょう。また、物件価格が高止まりを続けていることから、まだまだ価格が上がっていくと予想しているのだと思います。1年以内に1000万~2000万円近く利益を上乗せして売りさばこうとしているのでしょうね。

3つ目は、円安が進んだことで、現金資産を持つよりも資産価値の高い不動産を持ったほうが良いと考える富裕層の動きがあったのではないでしょうか。特に東京都心5区や大阪の中心部などで、長年保有していても資産価値が目減りせず、インフレが進めば相対的に価値が上昇するような物件に注目が集まったと思います。

もちろん、そうした高額家賃物件に住んでいた層が、徐々に周辺のより安い賃料物件へシフトする動きも出ているので、これまで同様に盤石というわけではありませんが…。

最後は海外マネーの流入です。特に中国マネーは多く流入してきていると聞きます。とある不動産会社の社長から聞いた話では、コロナ直前には大阪で売買された収益物件の1割は中国マネーだったということでした。コロナが落ち着いた今でも、そこまでの規模には戻っていないものの、徐々に取引事例が増えてきているそうです。

また、知り合いで東京都23区内に2億円台前半で新築を竣工した人は、2か月後に3億円台前半で中国国籍の方に売却したと言っていました。もちろん、規模の大きい物件であれば、竣工までのリスクを背負うことになりますが、それでも竣工からすぐ転売して1億円近い売却益が出る市況は、バブルといってもいいのではないかと思います。

大規模修繕前に、売却を決断

市況についてはこれくらいにして、私の不動産賃貸業の話に移りましょう。

今年は、地方の一棟RC物件を1軒売却しました。すでに売却している物件なので、あまり情報をお伝えできませんが、売却までの経緯についてお話します。

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