
PHOTO:PIXTOKYO / PIXTA
国土交通省は毎月、新設住宅の着工件数および前月比の増減などを集計した「建築着工統計調査報告」を公開している。
このデータは住宅投資の動向を判断できる指標の1つとされている。持家(自分で居住する目的で建築するもの)、貸家(賃貸する目的で建築するもの)、分譲住宅(建て売り又は分譲の目的で建築するもの)などに分類され、詳細を確認することができる。
今回は2022年11月30日に公開された2022年10月分のデータから、最近の傾向を見ていきたい。
新設住宅の着工件数は横ばい
10月の新設住宅着工は持家が減少し、全体では前年同月比1.8%のマイナスとなった。総計は約7万6000戸で、2022年1〜10月まででは一番多い戸数となっている。
ちなみに2022年で着工件数が一番少なかったのは1月で約5万9000戸だった。しかし、2月からは増加傾向にあり、その後は増減を繰り返しながらも持ち直している状況が伺える。季節調整値年率は87万1000戸で、2022年9月の85万8000戸に対して前月比1.5%増加した。

出典:国土交通省「令和4年10月分 建築着工 統計調査報告」 P2
貸家は20カ月連続の増加
一方、貸家は前年同月比7.3%増と好調で、約3万1000戸が新しく着工。貸家の着工件数の前年比は20カ月連続で増加した。2022年10月において持家の着工件数が2万1000戸、前年比マイナス18.7%なのに対し、貸家は安定した着工数をキープしている。
このように、貸家が好調であるため持家が低調であっても、新設住宅着工はなんとか前年同月比より1.8%減程度に抑えているとみられる。なお、三大都市圏別に貸家の新設住宅着工数をまとめたのが以下の表である。

三大都市圏別 「貸家」の新設住宅着工数(国土交通省「令和4年10月分 建築着工 統計調査報告」より編集部作成)
貸家の新設住宅着工数は首都圏が一番多いが、前年比よりマイナス1.5%となっている。しかし、2022年6月から9月までの着工数は前年比よりプラスになっているので、比較的堅調であると言えるだろう。中部圏は現状維持といった様相であるが、近畿圏は41.2%増となっている。
分譲住宅、3カ月連続の増加
分譲住宅も堅調な動きを見せており、2022年10月時点での着工件数は2万1000戸、前年同月比4.8%増で3カ月連続の増加となっている。
ただ、2022年8月は前年同月比16.2%増の2万3000戸、同年9月は前年同月比10.2%増の2万戸で、10月は4.8%増と低い数字となっているため、これからの動きに注目したいところである。
ちなみに分譲住宅はマンション、戸建ともに好調だ。マンションは2022年10月において前年比10.2%増の9000戸、戸建は前年比1.4%増の1万2000戸となった。マンションが分譲住宅全体に占める割合は42.6%(2022年10月時点)であり、同年8月から3カ月連続で40%台をキープしている。
三大都市圏マンション着工戸数は増加続く
国土交通省が作成した「三大都市圏別 マンション(都府県別)の着工戸数」の表を参照すると、三大都市圏の着工戸数は2022年8月から前年比より増加傾向となっていることが分かる。その中でも首都圏の動きに注目したい。

出典:国土交通省「令和4年10月分 建築着工 統計調査報告」
2022年10月時点では特に千葉県の着工件数の増加が目立ち、前年比より690%増と大幅にアップした。ただ、埼玉県では前年比マイナス60.6%、神奈川県ではマイナス33.1%とダウンしている。埼玉県は8月に426%もアップしたが、同年9月にはマイナス61.9%とダウンしており、浮き沈みが目立つ状況だ。東京都の同年10月は62.5%増となっており、同年8月から前年比を上回る状況が続いている。
◇
近年の貸家建設の動向では、東京都や大阪府などの大都市で貸家の着工件数が増加傾向にある。しかし、野村総合研究所が発表する将来予測を見ると、移動世帯数の減少や平均築年数の伸長などの要因により、2040年度の新設住宅着工戸数は46万戸まで減少すると見込まれている。
実際に、新設住宅着工戸数はどのように推移していくのだろうか。今後に注目が集まる。
(矢口ミカ/楽待新聞編集部)
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