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楽待新聞では2022年末、2023年の不動産市況についてアンケートを実施し、305人の不動産投資家から回答を得た。2023年の投資用不動産の価格はどうなるか、また金融機関の融資姿勢について予測してもらった。

また、2023年の自身の物件購入・売却の方針についても回答してもらった。2023年の投資戦略を考えるうえで、1つの参考にしてほしい。

※アンケート実施概要
調査時期:2022年12月13日~25日
有効回答数:305

不動産価格は上がる? 下がる?

2022年、資材高騰などの影響で不動産価格の上昇が続いていたが、この流れは今後も続くのだろうか?

「2023年の投資用不動産価格はどうなる?」という問いに対する回答結果を見ると、「上昇する」「下落する」「変わらない」で回答が三分される形となった。「かなり上昇する」「やや上昇する」と回答したのは35%、「かなり下落する」「やや下落する」が40%で、「変わらない」が25%だった。

以降では、それぞれの回答理由について、一部を抜粋して紹介する。

「物件価格が上昇する」と回答した人の理由(一部抜粋)

まだまだ物価も資材も高騰するはずなので、それに合わせて不動産価格も上がると予想している(神奈川県、40代、投資歴1~3年未満)

金利は上昇するが、コロナも一段落して銀行側も利益を取らざるを得ない。結果、融資は緩くなり買える人は買えると思うから(東京都、40代、投資歴5~10年未満)

2022年の急激な米国金利上昇に伴う景気後退懸念により、株価が不安定になり、株式投資資本が不動産へ流れ込むと思うから(大阪府、40代、投資歴5~10年未満)

一方、「かなり下落する」「やや下落する」と回答した人は、7割近くが金利の上昇を理由として挙げていた。

「物件価格が下落する」と回答した人の意見(一部抜粋)

金利上昇による、投資物件購入希望者の減少が予想されるから(長野県、50代、投資歴10~20年未満)

長期金利の上昇とともに短期金利も上がり、ローンの支払いに困窮して売りに出る不動産が増えると思うので、値崩れすると思います(東京都、50代、投資歴10~20年未満)

日銀の金融政策の不透明感から融資が出にくい状況が生まれ、不動産価格はやや下落する可能性がある(広島県、30代、投資歴1~3年未満)

円高により、海外投資家による日本の不動産買いが減少するため(愛知県、40代、投資歴3~5年未満)

コロナ融資の返済が始まり、事業者の不動産の売却が始まりそう(北海道、50代、投資歴20~30年未満)

相続財産の登記が義務付けられることを理由とする人も。2024年4月から、不動産を相続した際の登記が義務化されるため、登記の手間や登記費用がかかることなどから、売却を進める人が増えるのでは、と考えているようだ。また、2023年5月にコロナのゼロゼロ融資の返済が始まるのにともない、自宅を手放し、賃貸物件に引っ越す人が増えるのではないかという意見もあった。

なお、「変わらない」と回答した人は、価格が上昇する要因と下降する要因をそれぞれ挙げ、プラスマイナスゼロになると予測する人が多かった。

「物件価格は変わらない」と回答した人の意見(一部抜粋)

良い物件は価格が保たれ、良くない物件も市場参加者数の増加により価格が下がりきらない気がするため(大阪府、50代、投資歴10~20年未満)

円安は落ち着いて海外投資家は減る。一方で新築施工費が労働力不足で上がる。プラスマイナスでトントンと予想します(東京都、40代、投資歴半年~1年未満)

仕入れコスト、建築コストの上昇が続くも、利上げで値下げ圧力も働く。結果的に2022年並みの価格で横這いの予想(東京都、30代、投資歴10~20年未満)

金融機関の融資姿勢はどうなる?

2023年の金融機関の融資姿勢についても予想してもらった。

「変わらない」と回答した人が最も多い37%だった。「かなり積極的になる」「やや積極的になる」と回答した人は30%、「かなり消極的になる」「やや消極的になる」と答えた人は33%と、ほとんど割合に差は見られなかった。

「かなり積極的になる」「やや積極的になる」と回答した人からは、銀行は利ざやで稼ぐためという意見や、金利が上がり新規借り入れの件数が少なくなることが予想され、今以上に融資に積極的になるのではないかという意見が寄せられた。

「融資に積極的になる」と回答した人の意見(一部抜粋)

利ザヤで稼ぐ金融機関としては金利上昇時こそ貸したいはず(東京都、40代、投資歴1~3年未満)

景気悪化により融資先が限られること、金利が上昇傾向になるであろうことから収益物件向けの金利を上げる大義名分ができたため(山口県、40代、投資歴3~5年未満)

スルガ銀行問題等の禊が済んで徐々に通常の状態に戻りつつある感じがする(千葉県、50代、投資歴10~20年未満)

シェアハウスに代表される某金融機関の不正融資以降、目立ったトラブルもなく金融機関が消極的になる要素はない。そろそろほとぼりが冷めて今年よりも積極的になると予想(神奈川県、40代、投資歴5~10年未満)

一方、「かなり消極的になる」「やや消極的になる」と回答した人は、金利上昇の影響で融資審査が厳しくなるのではないかと指摘する人が多かった。

「融資に消極的になる」と回答した人の意見(一部抜粋)

金利の上昇により、返済能力をシビアにチェックされると思うので(長野県、50代、投資歴10~20年未満)

全体的には金利を上げていく方向なので、ローン審査の厳格化が予想され、結果、融資姿勢はやや消極的になると考えている(神奈川県、50代、投資歴半年~1年未満)

銀行訪問をした際に、融資を出せるような優良物件がかなり減少していると聞いている(愛知県、60代、投資歴10~20年未満)

サラリーマンに対する融資は今年同様の厳しさが続く。退場する事業者が出始めると、事業者全体への見方も厳しくなり、自己資金なども今年以上に必要になりそう(北海道、50代、投資歴20~30年未満)

「変わらない」と回答した人は、利上げなどの影響はありつつも、金融機関の融資姿勢が変わるほどではないと考えている人が多かった。

「融資姿勢は変わらない」と回答した人の意見(一部抜粋)

日銀の利上げの影響は限定的であり、融資姿勢は変わらないと予想します(東京都、30代、投資歴1~3年未満)

消極姿勢は変わらない。長期金利も上昇傾向のため、積極姿勢に転じる理由がない(東京都、50代、投資歴5~10年未満)

貸したいのが前提だが借り手をより選別する傾向になると予想する(岐阜県、30代、投資歴1~3年未満)

2023年、物件購入への意欲は?

では不動産投資家たちは自身の投資方針をどのように考えているのだろうか。

物件購入の方針について、「かなり積極的になる」「やや積極的になる」と回答したのは34%だった。一方、「かなり消極的になる」「やや消極的になる」と回答したのが21%、「変わらない」が最も多い45%という結果となった。

「かなり積極的になる」「やや積極的になる」と回答した人は、不動産価格の下落や融資環境の改善に期待を寄せる人が多かった。

購入姿勢「積極的になる」と回答した人の意見(一部抜粋)

不動産価格が下がると予測されるため(東京都、40代、投資歴20年~30年未満)

コロナ不況で自宅を手放した人の物件が出てくると思われる
(兵庫県、60代、投資歴1~3年未満)

物件が高くて一年半くらい購入できなかったため。また、自己資金がたまってきたため(東京都、30代、投資歴1~3年未満)

円安で海外物件を売却しました。国内物件を増やしたいためです(愛知県、40代、投資歴5~10年未満)

日本の景気の持ち直しを感じるため(大阪府、40代、投資歴5~10年未満)

一方、「かなり消極的になる」「やや消極的になる」と回答した人から、価格が割高なことや今後金利が上昇していくことなどを懸念する声が寄せられた。

購入姿勢について「消極的になる」と回答した人の意見(一部抜粋)

利回りの良い物件が少ない(東京都、60代、投資歴5~10年未満)

銀行融資がひきしまり、物件購入はなかなか厳しいものになると思います(千葉県、60代、投資歴3~5年未満)

金利上昇と高齢化による人口減少で、賃貸市況が厳しくなる(東京都、50代、投資歴10~20年未満)

とにかく物件価格が高い。これだけの手間暇とリスクを取っているにも関わらず利益は少ない。この程度の利益で有れば他の投資の方が余程効率が良いものが多々ある(東京都、50代、投資歴20~30年未満)

ようやく天井から下落局面になり始めるので、買い場はまだまだ先(福岡県、50代、投資歴10~20年未満)

物件価格の高騰を実感している人が多く、不動産投資自体の投資効率を疑問視する声も上がった。

「変わらない」と回答した人からは、自身のもともとの投資方針を重視する考えや、利上げなどの影響について様子見したい考えが寄せられた。

購入姿勢について「変わらない」と回答した人の意見(一部抜粋)

今後安くなるとも限らないので、今の相場の中で良いものを探し続ける(神奈川県、40代、投資歴1~3年未満)

利上げが不動産市場にどのような影響を及ぼすか様子見(東京都、50代、投資歴3~5年未満)

元々自分の属性では今までも良い条件でお金を借りられない。種銭を貯めてなるべく無借金で進もうと思っていたので。今回の利上げを受けて、よりその思いが強くなったから(広島県、30代、投資歴半年~1年未満)

物件売却への意欲は?

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