PHOTO:Yama/PIXTA

2023年になりました。昨年を振り返ると、さまざまなことがありました。2月にはロシアがウクライナ侵攻を始め、現代においても戦争が起こりうること、日本も対岸の火事ではないことが明らかになりました。

3月に米FRBはゼロ金利政策を解除し、金利引き上げが開始されました。4月には日本円が急落し、一時1ドル131円台となり20年ぶりの円安と話題になり、現在も円安が続いています。

7月には安倍元首相が銃撃されて亡くなりました。9月には国内では政府・日本銀行(日銀)が24年ぶりに円買い介入を行い、円安阻止に踏み切りました。同月に、海外ではエリザベス英女王が死去し、10月には就任したばかりだったトラス英首相が経済政策の失敗により金融市場の混乱を招き、わずか1カ月半で辞任しました。また、同じ9月には中国の習近平氏が3期目に突入しています。11月にはワールドカップでの日本代表の激戦に日本中が注目する一方で、防衛費が増額される方向性が決まっていきます。

2022年は筆者にとって「戦争とインフレの年」でした。戦争は禁じ手ではないという不都合な事実が明らかになり、インフレと共に金利が上昇する世の中となりました。日本の国力低下を感じながらも国の防衛にも焦点が当たった、後から思い出すと歴史の転換点となった年だったのでしょう。

この2022年が終わり、2023年に突入しました。

これから日本は、そして世界はどのようになっていくのでしょうか。インフレや金利動向はどうなるのでしょうか。為替はどうでしょう。銀行の融資姿勢や不動産市況には変化はあるのでしょうか。そして不動産投資の環境はどうなのでしょう。今回は2023年について、筆者なりに占ってみたいと思います。

1.日銀総裁人事による影響は?

今年4月、日本銀行総裁の任期が満了となります。現在、黒田総裁の後継としては副総裁の雨宮正佳氏、そして前副総裁の中曽宏氏(大和総研理事長)が有力視されています。これはどの報道を見ても同様です。

筆者は、有力候補とされている雨宮氏、中曽氏のどちらかが総裁になった場合には、金融政策に特段の違いは出ないのではないかと考えています。どちらも現在の日銀の金融政策を支えてきた経緯があり、路線は変わらないと考えるからです。

ただし、両名の近時の発言だけを鑑みると、中曽氏の方が政策変更に早急に取り組む可能性が「相対的に」高いと見られています。そのため、中曽氏が総裁となった場合には、金融マーケットが利上げを予測するモードに突入することは考えられるでしょう。

なお、日本の金融政策について考えるうえで大きな国内イベントは、この「日銀総裁交代」と「統一地方選挙」です。昨年12月の金融緩和縮小のように、黒田総裁就任後はサプライズが好きな日銀ですから、日銀は新総裁就任を持たずさらなる政策変更(修正)を行う可能性も捨てきれません。また、統一地方選挙をにらんだ与党の動きも出てくるでしょう。

2.今年の為替相場はどうなる?

そのようなことを考えると、場合によっては今年1月に政策変更がなされることだってあり得ます。

その場合の政策変更としては、マイナス金利政策(日銀当座預金への▲0.1%付利)の変更、ETF(株式、REIT)購入の取りやめが考えられます。その後、さらなる金融政策変更として、長期金利の許容変動幅の拡大(±0.5%からさらに拡大)がなされる可能性があるでしょう。

これは、他国の金融政策や債券、為替のマーケット動向に左右されることになりますし、(日銀は認めなくとも)政治の影響を受けることもあり得ます。円安に対する日銀への批判が高まったり、政府の物価高対策への協力要請があった際に、表立ってではなくとも、協調して日銀が政策を変更することはあり得るでしょう。

米国の金融マーケットでは、FRBは2023年の前半にかけて金利を引き上げ、FF(フェデラルファンド)金利の誘導目標が5.00%程度に達したところで金利は横ばい、そして米国の利下げは2023年中はなく、2024年に入ってからとなることが想定されています。この予想もインフレや景気動向次第ではありますが、今のマーケットのコンセンサスに近いものと思われます。

このような環境下においては、金融の教科書的に考えると、米国の金利上昇が止まり、一方で日銀が金利を引き上げていくのであれば、日米の金融政策の違いから円高方向に動く可能性があることになります。

では、2023年は円高だと考えておけば良いのでしょうか?

そう簡単ではありません。なぜなら、米国はまだ利上げを続けていることを忘れてはいけません。1回の利上げ幅も日本より大きいのです。そして、日本は簡単に金利をどんどんと引き上げることはできないでしょう。インフレ率は欧米を下回っていますし、金利が上昇すると日本政府の財政が圧迫され、国債価格も低下し日銀のバランスシートが注目されることになります。

筆者は、年初にはドル円は横ばいもしくは円高傾向となるものの、一旦は円安が進む局面があり、その後、年末にかけて円高傾向が出てくると想定しています。ただし、筆者にとって、為替相場は今までも当たったことの方が数少ないぐらい予想が難しい分野です(当てる能力があればサラリーマンを辞めてFXトレーダーとなり今頃は富裕層になっているのでしょう)。

また、さまざまな年初の媒体をぜひ記憶しておきたいところですが、金融業界のプロが年初に1年の為替予想を行っているものの、大体外れています。だれが2022年の始めに「円安で150円台に行きます」と予想していたでしょうか。これが現実ですので、2023年については、金利はある程度緩やかな上昇傾向が続き、ドル円は円高傾向となるという予想がある、とだけ認識しておけば良いのではないでしょうか。筆者は、レンジとしては1ドル120~140円と幅広に想定していますが、これが当たるかは分かりません。

なお、日本経済の状況を考えると中長期的には円安方向に動いていく可能性は高いと考えています。日本はすでに貿易での黒字を獲得するのが難しい国となっており、日本経済の成長力も低いためです。

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