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昨年国土交通省が発表した方針によると、2023年度より民泊運営事業に参入する際の条件が緩和される予定となっている。これまでは資格や一定の事業経験が必要とされたが、規制緩和後は指定された講習を受ければ営業ができるようになる。アフターコロナでのインバウンド増加を見込んでのことだ。

不動産投資家にとっては、今後民泊事業に参入できるチャンスが広がり、投資先の選択肢を増やすことにもつながるだろう。現状の参入条件をまとめたうえで、どのように規制緩和が行われるのか改めて見ておきたい。

民泊運営は難易度高く…

民泊などの旅館業法によらない宿泊施設を運営する場合、住宅宿泊事業法(民泊新法)に従うことになる。民泊新法では、(1)住宅宿泊事業者、(2)住宅宿泊管理業者、(3)住宅宿泊仲介業者(旅行業者以外の者で、報酬を得て住宅宿泊仲介業を行う者)の3つのプレイヤーが位置付けられており、それぞれに役割や義務などが決められている。

(1)住宅宿泊事業者は都道府県知事などに届出をして民泊を営む、いわゆる民泊のホストのことを指す。しかし、家主が不在の場合や居室数が5を超える場合は、(2)住宅宿泊管理業者(国土交通大臣の登録を受けて、住宅宿泊管理業を営む者)に委託する必要がある。

この住宅宿泊管理業者として登録するためには、宅地建物取引士、マンションの管理業務主任者、賃貸不動産経営管理士のいずれかの資格が必要になる。もしくは、住宅の取引や管理における2年以上の事業経験が求められる。

資格の取得はどれも難易度が高く、一般的に合格率は20%程度・勉強時間は最低300時間が必要と言われており、民泊事業参入の高い障壁となっている。

現状の規制では、民泊管理を行えるのが不動産関連業者に偏り、一般人や他事業者が参入しにくいとの指摘もされてきた。特に地方では、民泊の管理業者が不足しており、民泊を営みたくても委託先の管理会社が見つからずに諦めてしまうという事例もあるという。また、都市部の管理業者に委託する場合でも、高い手数料を取られ、民泊経営の利益が目減りするということもあるようだ。

こうした背景に加え、アフターコロナではインバウンド増加によるホテル不足が懸念されていることから、政府は2023年度中の規制緩和に踏み込んだ。

2022年度中に方針決定へ

具体的な内容は未決定だが、民泊管理に必要な知識や技能、遵守事項を学ぶための講習を取得することで、住宅宿泊管理業者としての登録が可能になる見込みだ。政府は今後、不動産や民泊の事業者団体との検討を進め、2022年度中に方針を決めたいとしている。住宅宿泊事業法に基づく民泊運営のガイドライン改正につなげる。

一例として、これまでに行われた内閣府が主導する規制改革推進会議では、一般社団法人・住宅宿泊協会と一般社団法人・シェアリングエコノミー協会が現状の課題について資料にまとめている。民泊を始めようとしている人や関係者の声も踏まえ、特に「地方における住宅宿泊管理業者の不足」について、強く言及している。

規制緩和が進むことで、不動産関連業者以外でも民泊事業に参入できるようになる。不動産投資家にとってハードルが高かった民泊事業。居室数が5を超える規模の民泊を運営できるようになれば、参入しやすくなり、民泊事業全体がより活性化することが予想される。

また、地域のホテル業者や旅行業者が民泊管理事業に参入し、管理業者の数が増えることで、委託料の低下が進む可能性もあるだろう。例えば、全国的に問題となっている空き家を民泊物件として活用するなど、選択肢が増えることも考えられる。今後も規制緩和の行方に注目したい。

(山口伸/楽待新聞編集部)