
PHOTO:ABC/PIXTA
「法人の減価償却は任意だから、計上しなくても問題ない」
「減価償却費を計上したりしなかったりして、うまく税金をコントロールしましょう」
このような話を聞いたことはないでしょうか? これは「任意償却」と呼ばれる考え方で、簡単に言えば「資産の耐用年数期間内なら、いつ減価償却をしてもよい」という考え方のことです。つまり、減価償却費を計上したりしなかったりして、利益を調整できる、ということです。
この任意償却、制度上は一種の「グレーゾーン」と言えます。ただ、税理士によって言うことが異なることもあり、何が正しいのかよくわからない、というご相談は意外と多いです。
そこで今回は、この「任意償却」について、どのような仕組みで節税になるのか、法人税法上適法と言えるのか? などを詳しく見ていきたいと思います。
※個人の所得税法においては減価償却は強制であり、償却費の調整の余地はありません。今回は法人であることを前提としています
法人が「減価償却」で利益を調整する理由は?
そもそも法人は、何のために減価償却で利益を調整しようとするのでしょうか?
一般的な中小企業においては、赤字になりそうなときにあえて減価償却費を計上せず、黒字を確保する、ということはけっこう聞く話です。これは、赤字だと運転資金の融資が難しくなることがあるからですね。
一方、不動産投資を法人で行っているような場合、減価償却で赤字になっているくらいであれば、直ちに銀行評価に悪影響を与えるとは言いがたいでしょう。
そもそも不動産投資では、法人単独の評価のみで融資を受けるわけではありません。属性や物件の担保評価も評価されます。また、「債務償還年数」(借入金を何年で返済できるかを表す指標)といった財務評価基準においては、利益に減価償却費を足し戻して評価することがあります。減価償却費を計上しないことによって黒字にしても、そこまで大きな意味持たないケースも多いでしょう。
ですから、不動産投資において、減価償却費を調整する理由は、通常は「節税のため」ということになります。なぜ、減価償却費を計上しないことが節税になり得るのかというと、「減価償却費を計上する保有事業年度と、売却等で利益が大きくなる事業年度の税率の差」が活用できるためです。
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