PHOTO : うぃき / PIXTA

賃貸住宅の入居者が孤独死したように装い保険金をだまし取ったとして、管理会社と保険代理店を経営する夫婦らが詐欺などの疑いで25日、大阪府警に逮捕された。容疑者らは虚偽の書類を保険会社に提出し、居室の清掃費用などとして保険金約100万円をだまし取ったとされる。ほかの入居者ら16人についても同様に総額1000万円の保険金を受け取っていたとみられる。

報道によると、詐欺などの疑いで逮捕されたのは大阪市北区の保険代理店を経営する高山泰和容疑者(56)と、妻で住宅管理会社の代表を務める高山聖生容疑者(54)ら3人。容疑者らは2020年2月、共謀の上、70代の男性が自宅で死亡したとする虚偽の内容の死体検案書を、大阪市内の保険会社に提出して保険金を請求。孤独死した場合に清掃費用や遺品整理費用などが補償される「賃貸入居者総合保険」の保険金100万円を詐取した疑い。警察は3人の認否を明らかにしていない。

70代男性は身寄りがなく、1人暮らし。容疑者が管理する大阪市内の賃貸住宅で生活保護を受けながら暮らしていたとみられる。死因は病死で、実際には路上で亡くなったという。

また、容疑者らは2018年以降、計17人について同様の保険金請求で総額1000万円を受け取っていたとみられる。このうちの大半が生活保護受給者だったことも判明しており、警察は、生活保護費から孤独死保険の保険料を支払わせる「貧困ビジネス」を行っていた疑いもあるとみて調べている。

「孤独死保険」の仕組みを悪用か

今回の事件の背景には、どのような問題があるのだろうか。

保険代理店「保険ヴィレッジ」の斎藤慎治氏は、入居者が加入するタイプの少額短期保険が悪用された可能性を指摘する。

「『孤独死保険』と言うのは総称で、家主が加入する保険と入居者が加入する保険に大きく分かれます。このうち今回使われた保険は、入居者が被保険者となるタイプです。家主向けの孤独死保険とちがい、孤独死で亡くなった場合に部屋の汚損がなくても保険金が支払われます。このため、悪用されそうだなという懸念はしていました」(斎藤氏)

入居者向けの孤独死保険の場合、死体検案書で死亡が確認できれば、孤独死によって部屋に汚損があったかどうかは関係なく、室内写真の提出なども必要ないという。

この死体検案書についても、医師が作成したものを後から偽造することが可能だと斎藤氏は指摘する。

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