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多くの大家さんは、賃貸借契約において「普通借家契約」を選択しているだろう。普通借家契約は1年以上(2年とするケースが多い)の期間で設定され、入居者が希望すれば契約が更新されるのが基本だ。

この普通借家契約は、一般に入居者に有利な契約と言われる。入居者が退去を希望しない限り、仮に問題のある入居者であっても、大家側の都合で退去してもらうことが難しいためだ。

そうした中、「定期借家契約」をうまく活用している大家さんもいる。今回は、定期借家契約を活用する投資家にメリットやデメリット、運営上の注意点を聞いた。また不動産トラブルに詳しい阿部栄一郎弁護士に、定期借家契約における注意点も解説してもらう。

定期借家契約とは?

「定期借家契約」とは、期間を限定した借家契約のことだ。

普通借家契約は前述の通り、一般的に入居者保護の性格が強い。入居者を退去させるハードルが高く、説得のために「立ち退き料」を支払う大家もいる。

これに対し定期借家契約では、期間満了時に契約が終了する。その後は入居者は退去するか、住み続ける場合は大家と入居者の合意の上で再契約する。

 

定期借家契約と普通借家契約の違い(監修:弁護士法人丸の内ソレイユ法律事務所 阿部栄一郎弁護士)

再契約の場合、大家が礼金を家賃1カ月分ほど、客付け会社が家賃1カ月分の25~50%ほどの「再契約料」をもらうのが一般的だ。敷金については、本来は契約終了に伴って一度返金するというが、返金せずにそのまま預かる場合も多いという。このあたりも、契約内容によってある程度自由に設定できる。

このほかにも特徴があるが、全体として定期借家契約は「普通借家契約より大家側の権限が大きい」契約内容となっている。

たとえば、入居者からの賃料減額交渉を排除する特約は普通借家契約では認められないが、定期借家契約では認められている。また契約期間は自由に定められ、原則として、期間満了までは借主側から契約を解除できない。

「全室定期借家」のワケ

5棟107室を保有する内本智子さんは、そのすべてを定期借家契約で運営する。どれも住居用で、間取りはファミリータイプから単身用までさまざまだ。内本さんが感じる定期借家契約のメリットは、

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