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先々週末から先週にかけて、日米欧で金融政策の決定会合が相次ぎ、それぞれ異なる金融政策の方向性が示された。

まず、4月28日(金)、日銀は、植田新体制で初となる金融政策決定会合で、現行の金融政策の維持を決定した。一部では、長期金利に誘導水準を設定するイールドカーブ・コントロール(YCC)政策の見直しが実施されるのではないかという見方もあった。結局、今回は見送りとなり、黒田体制以来の金融緩和策を、当面は継続する姿勢が明確にされた。

一方、5月3日(水)には米連邦準備制度理事会(FRB)が0.25%の追加利上げを決定した。これで、米国の政策金利(短期市場金利であるフェデラルファンド金利の誘導目標)は5.00~5.25%にまで上がった。それと同時に、今回の措置で一連の利上げがいったん打ち止めとなる可能性も示唆されている。

翌5月4日(木)には、欧州中央銀行(ECB)がやはり0.25%の追加利上げを決めた。主要政策金利(入札方式でECBが市中銀行に資金を供給する際のオペ金利)はこれで3.75%になった。同時にECBは、FRBとは違って、今後も利上げを継続する方針を打ち出している。

米国は利上げ打ち止め、そして利下げへの早期転換へ

米国の状況を少し詳しく見てみよう。米国は今なおインフレ率が高止まりしている。5月5日に発表された雇用統計の非農業部門雇用者数が予想を上回るなど、少しずつ減速し始めているとはいえ、経済状況は想定以上の堅調さを示している。

だが、すでに政策金利が5%に達し、またこれまでの金利上昇によって債券価格が大幅に下落、それが中堅・中小金融機関の経営に打撃を与えて金融不安を引き起こしている。これらのことから、ここからは当面、様子見の姿勢に転じることになるだろう。インフレ率が今後も高止まりを続ければ、夏場以降に再び引締め方向に動く可能性もないわけではないが、市場では「次の一手は利下げ」という見方が圧倒的に有力になっている。

以下のグラフは、先物市場などが織り込んでいる、来年末までの政策金利の推移予想である。これによると、FRBは今年9月頃から利下げに転じ、年内に3回(0.75%)程度、24年末にかけては計8回(2%)以上の利下げが見込まれている。

米国政策金利の推移予想(2023/5/5時点、単位:%)

その背景にあるのは、インフレ圧力が今後、着実に沈静化していくと同時に、景気が停滞色を強め、かつ金融不安が完全には解消されずにくすぶり続ける、との想定である。

インフレ率が高止まりして早期に利下げに転じることが難しくなる可能性がほとんど考慮されていないという点で、こうした市場の見方はやや前のめりとも感じられるが、アメリカの金融情勢が大きな局面転換を迎えつつあることは確かであろう。

一方欧州は、まだ政策金利がアメリカほどには高くなっていないこと、インフレ圧力の根強さがアメリカ以上であることから、なお1~2回程度の利上げを実施することが予想され、それが為替市場でのユーロ高を支えている。とはいえ、欧州の経済動向もいずれはアメリカの後を追う可能性が高く、遅かれ早かれ、利上げ停止さらには利下げへの転換を視野に入れることになりそうである。

さて、こうした海外の情勢が、日本の金融政策にどのように影響するのであろうか。それを以下で見ていこう。