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「不動産投資はインカムゲインで儲けるのが基本」。マンション価格が高騰し続けている現在、そんな暗黙の認識は今後変化していくかもしれない。

今回は、区分マンション投資家の大御所・芦沢晃さんと、「愛のお説教部屋」でおなじみの五十嵐未帆さんが「これからの区分マンション投資」について語る。

区分マンション投資は今後どのような展開になるのか、投資家が注意するべき点はどこなのかを学び、ぜひ自身の投資活動の参考にしてほしい。

プロフィール

芦沢晃さん
投資歴28年、60室(58棟)の中古区分マンションを現金で買い進めてきたベテラン大家。現在の家賃年収は約3600万円、税引き前CFは約2000万円にのぼる。

五十嵐未帆さん
3人の子どもを育てながら不動産投資を始め、現在は専業大家。横浜・川崎を中心に8棟72室を所有している。家賃年収6000万円、年間CFは2100万円。

区分マンションで「キャピタル狙い」はあり?

五十嵐
私は「愛のお説教部屋」という企画で投資家さんのお悩みを聞いているのですが、最近はインカムゲインがマイナスの物件を購入する、という相談者様が多い気がします。

インカムゲインがマイナスの物件を購入してキャピタルゲインを狙う、という投資方法について芦沢先生はどう思いますか?

【用語解説】
インカムゲイン
資産を保有することで得る利益(運用益)。不動産投資で言うと、自分が保有している物件の家賃収入。

キャピタルゲイン
資産を売却することで得る利益(売却益)。不動産投資で言うと、物件を購入した金額よりも高く売却できた場合に生じる売却益。

芦沢
区分マンション投資に限っては、キャピタルゲインが成立する市場も最近はあるというのが私の感じていることです。

私が初めてマンションを買ったのは1989年、いわゆる平成バブルの時代でした。あの頃は「マンション投資=キャピタル投資」だったんですよ。2000万円で買ったマンションが翌年には3000万円、さらに翌年には4000万円…というようにどんどん値段が釣り上がっていくのも珍しくはなかったんです。だから初めはキャッシュフローがマイナスでも、最後に購入金額の3~4倍で売って利益を得るというやり方が普通でした。

五十嵐
すごい時代でしたね。

芦沢
それからバブル崩壊後に日本の金利が下がって、「フルローンで土地付きの一棟を買ってキャッシュフローが出る」という時代が来たわけですが、今はまた事情が異なります。フルローンによるプラスのキャッシュフローが出る時代というのは終わったんじゃないかと私は思っています。

ただ、ここまでは一棟のお話で、先ほども言ったように区分の場合はまた違います。東京23区、さらにその中の8区、さらにその中の3区…というように限定的な視点で見ていくと、むしろキャピタルゲインが成立する市場が数年前から始まってるのかなと感じることがあるんです。

それは東京23区だからという話ではなく、各地でそういったスポットがまだらに点在しているということです。

五十嵐
そういったスポットがあるなら、キャピタル狙いの投資も間違ってはいないということでしょうか。

芦沢
とはいえ、そのキャピタルゲインもバブルの頃のような確実なものではありません。「以前のように必ずキャピタルが出るものではなくなってきている」という点をきちんと考えて本当に安く買うことが必要です。

バブル時代で痛い目を見た投資家によって「キャピタルゲイン投資は危ない」という概念が広がっていたと思いますが、最近はその限りではないと思います。インカムゲインだけではなく、また反対にキャピタルゲインだけでもない、両方を考えると良いのかなと。

五十嵐
機会損失や失敗にならないよう、その選別をきちんとしていきたいですね。

悪質な管理会社に注意

芦沢
マンション投資をする際は、管理会社の悪質な手口に引っかからないように気をつけてほしいです。

最近、悪質な管理会社が増えてきているんですよ。例えばマンションを建てた流れで、駐輪場や管理室・共用部の一部が「デベロッパー系統の管理会社」の持分のままになっているパターンです。

名義が管理会社になっているので、管理室や駐輪場を管理組合に売って、そのお金を修繕積立金から抜いて会社に振り替えてしまうんです。管理会社の社員が管理室を使うのにもちろん賃料は払わないので、大家にとっての収入はありません。管理費がどんどん持っていかれて、積立金がゼロになってしまうことも考えられます。

五十嵐
恐ろしいですね…。

芦沢
会計はどうなっているのかよく見ていくと、例えば50世帯のマンションでは年間契約費が普通200万円くらいあって、その他に共用部エレベーターの電気代や清掃費、修繕提案費用や名義書き換え費用などがあります。それらの業務ごとに手数料を取っているんですね。

そうなると、じゃあ初めの年間委託費って一体何なんだろうという話になりますよね。年間委託費には契約書があるんですが、その契約書に書いていないグレーな部分の手数料が次々と足されていくんです。酷い場合だと、年間契約費200万円の金額に対して40%ぐらいの割合で別の手数料が取られています。

五十嵐
きちんと決算書を確認しないと、そんな悪質な手口にかかってしまうこともあるんですね。気をつけたいです。

芦沢
グレーな手数料を取る管理会社の手口についてはあまり表に出てきませんが、皆さんが思うよりも大きな規模で行われているというのが実態です。素人目には分からないような会計が共用部全体で出ていないか、という点をチェックすることが運営の上では非常に重要です。

自身が所有する専有部でせっかく利益が上がっている状態でも、共用部で損をしていては意味がありません。管理会社がどれだけ透明性の高い運営を行ってくれるか次第となりますが、自身でも注意しておくようにしましょう。

今回紹介した「区分マンションの今後の見通し」以外にも、芦沢晃さんと五十嵐未帆さんという異なる投資手法の2人の対談については「不動産投資家プレミアム対談」の動画で公開している。

「新鮮な物件情報を得るルートを作る方法」「ベテランならではのリスクヘッジ法」など、ベテラン投資家のプロの技を知りたいという方はぜひチェックしてほしい。

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(楽待新聞編集部)