金融機関別の融資動向は?
続いて、どのような金融機関が積極的に融資を出しているのかをアンケート結果から分析する。
金融機関種別を見ると、「地方銀行」の割合が41%と、前回と比べて2倍近くに増加した。次に割合の多い「信用金庫・信用組合」は23%と前回から変化はなく、次いで多い「信託銀行」は12%と前回の14%から微減した。「ネット銀行」や「ノンバンク」は前回と比べて減少している。
アンケート回答の中には、「一部の地方銀行や信用金庫・信用組合の融資姿勢が活発になっていると感じた」というコメントもあった。不動産会社に対して積極的に営業を行っている金融機関や、物件の築年数を問わず、条件次第で長期間の融資を出す金融機関もあるようだ。
■事例4:都内への融資に積極的、不動産会社への営業も
【融資情報】
金融機関名:山梨中央銀行
物件種別:新築一棟アパート
物件価格:9700万円
融資条件:金利1.5%、返済期間30年、自己資金1割
2007年から不動産投資に取り組むDさんは、2022年12月、西東京の新築木造アパートで初めて山梨中央銀行を利用した。
取引のきっかけは、不動産会社からの紹介だった。「私がお世話になった不動産会社の社長さんに対し、山梨中央銀行のほうから熱烈な営業があったと聞いています。山梨の地銀ですが都内にも支店があり、積極的に不動産融資を出しているようです」
面談時に物件資料と自身のプロフィールシートを見せたところ、「ぜひ融資させてほしい」という反応。その後1週間ほどで支店内審査が終わり、1カ月ほどで本部の承認が下りた。
担当者の話では、「事業として不動産をやっていく人に融資を出したい」とのこと。Dさんは、「属性や、不動産賃貸業への向き合い方は見られていると思います。これからもご協力しますよ、と言っていただいているので、今後のメインバンクになるかもしれません」
■事例5:耐用年数超えで融資、AIで物件分析も
【融資情報】
金融機関名:京都中央信用金庫
物件種別:一棟アパート
物件価格:1億2400万円
融資条件:金利1.3%、返済期間35年、自己資金1割
大阪府在住の会社役員Eさんは、2023年1月、築7年の木造一棟アパートで初めての不動産融資を受けたと話す。
物件を購入した不動産会社から京都中央信用金庫を紹介され、融資を打診し、無事承認がおりた。最近出店した支店だったため新規顧客の獲得に積極的だったことや、物件の利回りが周辺と比べて良かったことなどから承認を得られたと予想する。
融資面談はほかの金融機関と比べて和やかで、少し雰囲気が違うと感じたそうだ。ところどころ家計の状況や人柄を探るような質問もあったものの、厳しい審査ではなく「不動産投資の夢を語ってください」というような質問もあった。「ファミリーで長く住んでもらえるような物件を増やしていきたいとか、自主管理大家としてやっていきたいと語ったら、『良いですね』と言われました」
また、経験が浅い担当者でもAIなどを使って物件の分析ができる仕組みを導入しているため、「収益性が高ければ、耐用年数を超えている物件でも融資が可能」という話もあったそうだ。「今回の物件も木造で築7年でしたが、期間35年で融資が下りました。ほかの金融機関だったら、まず35年は出ないと思います。今後も長くお付き合いしていきたいです」
融資がおりた金融機関ランキング
最後に、融資が下りた金融機関のランキングをみていきたい。
融資が下りた件数が最も多かったのは、オリックス銀行だった。次点で三井住友トラストL&F、滋賀銀行、スルガ銀行が続く。
滋賀銀行は、前々回は事例数3件、前回は4件だったのに対し、18件まで増加した。
関西を中心に不動産投資をする「MOLTA」さんによると、「数年前から、滋賀銀行の融資姿勢が変化してきている」という。
「もともと滋賀銀行はどちらかというと保守的で、滋賀県在住の投資家以外には積極的に融資をしていなかったと思います。しかし最近は、2017年から保証業務提携したセゾンファンデックスを後ろ盾に、融資審査を電子化・簡易化して全国にどんどん融資を出している印象です。ただ、支店によって温度差もあるようです。滋賀銀行本部内の積極派や、その直轄の支店がアグレッシブに融資をしているのかもしれません」(MOLTAさん)
■事例6:交渉で融資額増、返済期間も8年延長
【融資情報】
金融機関名:滋賀銀行
物件種別:一棟アパート
物件価格:3700万円
融資条件:金利2.57%、返済期間28年、自己資金約4割
今年から不動産投資を始めた関東在住のFさん。2月に1棟目として、築14年の軽量鉄骨造アパートを3700万円で購入し、滋賀銀行から2200万円の融資を受けた。
先輩大家さんから「滋賀銀行は属性にかかわらず融資をひける」と紹介されて融資を打診。実際、預金額など金融資産に関する資料の提出は求められず「属性は重視しないのだ」と感じたという。また、物件の戸数6戸のうちの3戸が空室だったが、特に問題はなかったと話す。レントロールを提出したが、空室対策の方法等については聞かれなかった。
さらに、交渉によって融資条件が良くなった。当初は、融資額2000万円、返済期間20年で申し込んだが、増額できないか相談したところ、2200万円に増やしてもらうことができた。担当者からの提案で返済期間も28年に延びたという。
担当者によれば、融資する金額の上限は「4500万円」との回答があったそうだ。また、不動産収入が本業収入を上回ると融資が受けられなくなるという話もあった。
今回の融資は不動産担保ローンだったが、無担保ローンを併用できないか試しに聞いてみたところ、断られたという。先輩大家さんの中には併用している人もいるため、「そこは属性を見られているのかもしれない」と語った。
■事例7:築古でも期間28年、面談は人柄重視か
【融資情報】
金融機関名:スルガ銀行
物件種別:区分マンション
物件価格:4050万円
融資条件:金利1.6%、返済期間28年、自己資金約1割
都内在住の会社員Gさんは、2023年3月、築38年で4050万円の区分マンションを法人名義で購入。スルガ銀行から約3500万円の融資を受けた。
不動産会社の紹介から複数の金融機関を紹介されたが、返済期間が短かったり、法人名義では融資が受けられなかったりしたため断念した。例えばりそな銀行は、残存耐用年数が最低でも11年必要と言われ、ソニー銀行と三井住友トラストL&Fからは法人への融資はできないと言われた。
そんな中、スルガ銀行は法人名義可で、築古でも返済期間が長く理想的だったという。ただ、2回あった面談の際にはさまざまなことを根掘り葉掘り聞かれた。
株の投資経験のほか、お金を貯められる性格がどうかを探るような質問や、妻の金銭感覚を尋ねるような質問もあった。そのほか、今の仕事だけでなく、社会人になってからどんなことをしてきたかや、大学時代の専攻まで聞かれたと話す。また面談の後、融資担当者が物件を見に来たという。築古のため、物件の管理状態や修繕状況を見られている印象があったと話す。
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プレミアム会員限定でダウンロードできる「全国の収益物件の融資事例(2022年10月~2023年3月版)」では、金融機関名、自己資金比率、金利、返済期間、融資時期、物件価格、築年数、購入者情報などを確認できる。実際にどのような物件に融資を出したのか、参考にしてほしい。
※サンプル※
<本データについて>
・本データは、楽待会員を対象に実施した「投資用不動産融資アンケート」の情報をもとに作成しております
・アンケートをもとに作成したデータであり、すべての情報についてその内容の正確性を保証するものではありません
・トラブル防止の為、「築年数」「物件価格」「自己資本比率」「金利」「融資期間」は範囲表示になっております
・SNS投稿やセミナーなど、個人利用以外の目的で、本データを使用することは禁止いたします
・本データは、特定の金融機関から融資の承認が得られることを保証するものではありません
【投資用不動産の融資事例(2022年10月~2023年3月版)】
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※アンケート結果のダウンロード期間は終了いたしました。
※PDFデータのダウンロードは、2023年8月31日までです。以降、ダウンロードができなくなりますのでご注意ください。
※PDFデータは、プレミアム会員のみ閲覧可能です。ダウンロードしたデータでは、279事例すべてを閲覧いただけます。
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今回は「融資アンケート」の情報をもとに、2022年10月から2023年3月までにおりた融資事例を分析してきた。具体的な物件情報やどのような融資条件で借り入れているのか、資料にまとめた情報をぜひ今後の融資戦略に役立ててほしい。
(楽待新聞編集部)
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