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「戸建てを購入して10年目を過ぎた頃から、家の修繕費が毎年50万~100万円前後の勢いで出ていく」

Twitter上に投稿されたそんな呟きが、1.6万の「いいね」を集めるなど注目を浴びた。ツイートしたのは、戸建てに住む主婦の「なちゅ。」さん。16年前に新築で戸建てを購入したが、ここ数年の高額な出費に頭を悩ませており、「戸建てを購入する場合は修繕費の積み立てが重要だ」と感じているという。

住宅の劣化については、実際に住んでみないと分からないことも多い。物件に投資をする不動産投資家も、居住者目線の住宅に対する考え方を知っておいて損はないだろう。

今回は、戸建てに住み続けるとどんな劣化が生じるのか、住宅維持で大切なのはどんな考え方なのか、戸建て居住者であるなちゅ。さんに話を聞いてみた。

高額な修繕費、盲点だった「太陽光パネル」

―「戸建て購入から10年を過ぎた頃に修繕費がかさむ」というのは、どういうことでしょうか

家を建ててから10年が過ぎると、屋根や水回りなど、あちこちが一斉に傷んでくるんですよ。ついでに新築時に買った家電も買い替えのサイクルが来て、急に大きな出費が発生します。

私の場合は、そういった設備の取り替えや家電の買い替えが重なったので、ここ数年は毎年50万~100万円ほどお金が出ていってます。

―具体的には、どのようなところで出費が発生したのでしょうか

この数年で発生した大きな出費で言うと、まずは屋根補強ですね。それからトイレ、キッチン水栓、浴槽水栓、給湯機、ビルトイン食洗機、IHクッキングヒーターの修繕や取り換え。あとはエアコン、冷蔵庫、洗濯乾燥機など家電の買い替えもありました。

加えて、うちは建築当時の流行に乗って屋根に太陽光パネルをつけたんですよ。パワーコンディショナー(太陽光パネルで発電した電力を家庭で使用できる電力に変換する装置)の交換や、電力会社側の売電価格の大幅変更による蓄電池(太陽光で発電した電気を貯めて使うことができる装置)の増設もありました。

―太陽光パネルには予想外にお金がかかったそうですね

そうなんですよ。屋根補強のとき、既存の屋根の上にガルバリウム鋼板の屋根をかぶせてカバーする工法にして全体で300万円ほどかかったんですが、そのうち約80万円が太陽光パネルの取り換えで発生した費用なんです。屋根に載せている太陽光パネルを一度撤去して再設置する必要があって…。

うちは住宅密集地にある3階建ての家なので、屋根作業をしようと思うと足場を組まなきゃいけなくて、ただでさえお金がかかるんです。そこへさらに太陽光パネルの80万円が上乗せされてしまったということで、この点は導入時には考えが及んでいませんでした。

―太陽光パネルをつけたことを後悔していますか

太陽光パネルは、災害時の備えとしてはとても良いものだと思っているので、後悔しているというほどではないです。ただ、設置当初に戻れるならもう設置しようとは思いませんね(笑)。取り換えなどのコストを踏まえてもあえて導入するべきかと考えると、微妙だというのが率直な感想です。

「そこが取れるの!?」 予想外の修繕箇所も

―戸建て購入当初には思いつかなかった「予想外の修繕」は何かありましたか

水回りは予想外の修繕が起こりやすいです。ひとつひとつは高額というわけではないですが、こまごまとした修繕が積み重なるとけっこうな費用になるんですよね。

―水回りというと浴室やキッチン、トイレなどでしょうか

そうです。浴槽の栓が閉まらないとか、浴室のドアのゴムパッキンが駄目になるとか。これはTwitterでも投稿したんですが、キッチンの水道の取っ手が丸ごともげてしまったこともあります。「ここがもげるのか!」とすごく驚きました。

あとは、築10年くらいで必要になったトイレの取り替えも予想外でした。一体型トイレ(便器・タンク・便座が一体型のトイレ)だったんですが、ある時温水洗浄便座が壊れてしまったんです。そこだけ取り替えられたら良かったんですが、一体型なので部分的に直すということができなくて…。

「組み合わせトイレ」と呼ばれる、独立した便器・タンク・便座を組み合わせた昔ながらのトイレなら一部分だけを取り替えることができたんですけどね。一体型トイレを選んだことでこんな弊害があるというのは想定外でした。

トイレは2カ所ありましたし、子どものトイレトレーニングを経たのもあって壁や床の経年劣化もかなり目についたので、合わせて床壁の補修もしました。このときの総取り替えでかかったのは50万円ほどです。トイレが10年で壊れることはないだろうと思っていたんですが、その時に初めて「そうか、トイレって家電なんだ」と意識しました。

住宅維持、「壊れてから直す」では遅いものも

―なちゅ。さんは修繕に関して、「壊れる前に手を入れる」「壊れてから直す」「壊れたら諦める」というものに分けて考えているそうですね

屋根や外壁、水回りといった重要な設備は壊れる前にメンテナンスを行うようにしています。壊れてから直すのは食洗器や照明器具などです。ライフラインに直結するものではなく、生活に大きなダメージを与えないものであれば、後回しにしても大丈夫だという考えです。

壊れたら諦めるのは浴室乾燥機や床暖房です。家電などにセットでついてきたので導入したものなんですが、「あったら便利だけど、なくても問題はない」というものはそのまま諦めるか、グレードを下げるかという判断をしています。

―生活の上での重要度によって、修繕の優先度を決めているんですね

はい。家電も設備も、生活に直接影響するようなものに関しては完全に壊れる前に替えてしまうのが肝だと思います。

たとえば給湯器が真冬に止まった場合、「直るまでの1~2カ月は水でしのいでください」なんて状況になったら耐えられないじゃないですか。銭湯を使えばいいという人もいますが、家族全員の毎日の利用料や時間コストを考えると、決して安くはない出費です。

そのため、生活上欠かせない設備や家電については、たとえもう少し使えそうだなという状態であっても、調子が悪そうという兆候が見えた時点で取り替えるようにしています。

―それがなちゅ。さんの住宅維持の秘訣ということでしょうか

そうですね。私は住宅維持の鍵は「致命的に壊れないように手を入れること」だと思っています。「修理=壊れたから直す」ではないんですよ。ここ数年で行った屋根の補強についても、耐久値が下がり切って雨漏りしてから慌てて直していては内部にまでダメージが及んでしまうので、傷む前に手を入れたんです。

生活上の影響が大きい部分は定期的に点検やメンテナンスを行って、壊れる前に対処しておくことが重要だと個人的には思います。

修繕費の積み立てと定期点検を

―もし5年前、10年前に戻れるなら、何をしておきたいですか

まずは貯金! これ一択ですね(笑)。ツイートでも言ったように、築10年を超えた頃から毎年50万~100万円の修繕費がかかっているんです。さすがにこれから先も毎年同じくらいの修繕費がかかるとは思いませんが、いつ出費が止まってくれるのだろうと思っています。

あらかじめきちんとお金を積み立てていれば、修繕が連続して必要になった際も慌てず対処できると思います。設備が壊れる前に定期的なメンテナンスをして事前に備えるのと同時に、壊れた時に慌てないよう事前にお金を貯めて備えておくのが重要です。

あとは「信頼できる業者」と関係を築いておくのも大事だと思います。これも一朝一夕で築けるものではないと思うので、数年前に戻れるなら業者さんと良い関係を続けるように一層気をつけたいですね。

―これから戸建てに住む人に何か伝えたいことがあれば教えてください

繰り返しになりますが、家の設備には「壊れてから直す」方法では遅いというものもあります。できる限り事前に備えて、点検を行って、屋根や水回りなど壊れると生活に大きなダメージを与える可能性のある部位は早め早めにメンテナンスしていただくのが良いんじゃないかと思います。

戸建てに住むなちゅ。さんは、「快適な環境を安定して維持していくことが最も重要」と語った。そのために必要な費用や手間は惜しまないのが基本的なスタンスだという。

戸建てに限らず、「住宅維持」の考え方は不動産投資家にとっても重要になる。どんな点で修繕が必要になるのか、またどのように修繕に備えていけば良いのか、ぜひなちゅ。さんの考え方を参考にしてはいかがだろうか。

○取材協力
なちゅ。さん(Twitter:@itacchiku

(楽待新聞編集部)