不動産投資家の後藤さんが運営する宿泊施設

「私なら、今宿泊業に参入するのは、『やめとけ』と言いたいですね」「そこまで甘い事業ではないと」―。

新型コロナウイルスの影響が落ち着きを見せ、国内外の観光客の数が爆発的に増えている。今年5月の日本における延べ宿泊人数は、日本人・外国人あわせて約5000万人。コロナ前の2019年同月比でマイナス2.5%と、「コロナ前の水準に戻りつつある」(観光庁担当者)数字だ。

だが、そうした中で、宿泊施設に投資する投資家からは冒頭のようなセリフも聞かれる。コロナ禍を生き抜いた投資家は、なぜ今こう話すのか。現在、宿泊施設を運営する投資家らに、現状と今後の見通し、課題を聞いた。

コロナ下では月20万の赤字も、現状は「8割回復」

「コロナ禍で、稼働がゼロの時もありました。当然、固定費の分だけ赤字。月に20万円がただただ飛んでいくようなこともあって、相当ダメージは大きかったです。今年に入って、ようやく抜け出せたかな、という感じです」

そう語るのは、京都市内で京町家を改装した宿泊施設を運営する後藤隆志さん(仮名)。同市内に14棟の賃貸物件を持ち、家賃年収1800万円という投資家だ。後藤さんは2009年から旅館業にも参入しており、これまで3棟を運営してきたという。

現在運営している京町家を利用した宿泊施設は、空き家状態だったものを、定期賃貸借契約を結んでオーナーから借りている。改装費は後藤さんが拠出したうえで、転貸で宿泊施設として運営していると話す。

「和モダン」がコンセプトという宿泊施設。リビングに置かれた家具などにもこだわった

ベッドが置かれた寝室

宿泊のターゲットにしているのは、ラグジュアリーな宿泊体験を求める中高年の日本人客。夫婦やファミリーのほか、10人まで宿泊できる施設のため、友人グループなどで泊まるケースもあるという。

「この物件の築年数は不詳です。もともとは借りて住んでいた方がいたそうですが、その方が出られてからは空き家になっていて。ボロボロの状態で、屋根なども危険な状態だったので、それで、どうにか活用できないか、ということで縁あって私のところに話が来ました。2014年にオーナーと定期賃貸借契約をし、2015年から稼働を開始しています」

改装や備品など、かかった初期費用は約2800万円。一方、オーナーへの家賃は毎月約15万円だが、建築協力金として10万円ほどを差し引いているため、月々約5万円を支払っているという。そのほか、運営委託費やリネン費、清掃費などの固定費も毎月稼働に応じてかかっている。

会員限定記事です

この記事の続きを読むには、会員登録が必要です
会員登録(無料) ログインする