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先月28日、日本銀行がYCCの修正を決めたことを受け、長期金利の動向に注目が集まっている。

週明け31日の東京債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが一時0.605%まで上昇、約9年ぶりの高水準となるなど、金利上昇圧力が高まっている。

そうした中、大手銀行は31日、いっせいに住宅ローンの固定金利引き上げを発表した。住宅ローンの固定金利は、主に長期金利の水準を参考に各銀行が決定する。このところの長期金利の上昇を踏まえ、住宅ローンの固定金利の水準を引き上げた格好だ。

変動金利は据え置き

まずは各行の引き上げ幅を確認しておく。

三菱UFJ銀行は先月から0.09ポイント引き上げて年0.78%、三井住友銀行は0.1ポイント引き上げて年0.89%、みずほ銀行は0.05ポイント引き上げて年1.2%とする。なお、いずれも10年固定で最も優遇する場合の金利を示している。

注意したいのは、上記で紹介した8月の住宅ローン固定金利は、先日の日本銀行によるYCC修正を反映したものではないという点だ。これについては後述する。

なお、短期金利と連動する変動型については、各行とも据え置いた。

大手行以外の動きは? 変動金利の今後は?

日銀の政策修正を受け、長期金利の上昇圧力は確実に高まっている。今後、大手行以外にもローン金利引き上げの動きは波及していくのか。また、変動金利への影響は考えられるのか。現役銀行員でブロガーの旦直土さんに聞いた。

─大手行がいっせいに長期金利を引き上げた背景は
今回の住宅ローン固定金利引上げは、事前に決まっていたものであり、タイミング的に先日のYCCの修整は反映されていないはずです。そもそも7月はマーケットでさまざまな思惑が交錯し、長期金利は上昇していました。今回の固定金利引上げは、それを反映したものでしょう。

ちなみに銀行としては「やっと金利が上昇していく」という感覚があり、これに伴って利ざやも回復していくという期待感があるのは間違いありません。マーケットもそれを期待して、銀行の株価は上昇傾向にあります。

─変動金利にも影響は及ぶと考えられるか
日銀は現在のところ、短期金利政策、すなわちマイナス金利政策を変更していません。マイナス金利を続ける理由は、金融機関が日銀におカネをプールせず、世の中におカネを回すようにしたいからです。この金融緩和方針は大きな変更ないため、短期金利は低いままです。変動金利は短期金利に連動しますので、あまり動かないと考えられます。

─今後はさらなる上昇があるか? 大手行以外の動向は
先日のYCC運用柔軟化の影響は、次の固定金利が決まるタイミングで反映されます。したがって、今後はさらに住宅ローンの固定金利が上昇していく可能性は高いでしょう。

なお大手行以外は、収益源が多様化されておらず、さらに貸出全体に占める住宅ローンの割合が高い銀行も多いのが実情です。大手行以外も採算改善のために、追随する可能性は充分にあると考えられます。

今年1月、楽待新聞編集部では金利に関するアンケート調査を実施している。今後の金利変動リスクへの対策を「講じている」と回答した人は全体の4割ほどに留まっていた。

 とはいえ、長く続いた日銀による異次元の金融緩和が転換点を迎えていることも事実だ。低金利が当たり前だった時代も、今後は変わっていく可能性もある。金利上昇リスクも含め、さまざまな変化に備えておきたい。

(楽待新聞編集部)