PHOTO:iLand/PIXTA

先月、日本銀行(日銀)がイールドカーブコントロール(YCC)運用の柔軟化を決めました。

ニュースでは「日銀がYCCを修正」と、当たり前のように報じられていますが、そもそもこれは非常に分かりにくい政策の変更です。政策の変更自体が分かりにくいので、「これによって不動産市場にどのような影響が生じるのか?」ということもなかなかイメージができないのではないでしょうか。

今回は、このYCC運用の柔軟化とはどのようなものかを簡単に確認するとともに、この運用柔軟化、そして同時に注目された日銀の物価展望が、今後の不動産にどのような影響を与える可能性があるのかについて考察したいと思います。

日銀の政策変更を改めておさらい

冒頭でも述べたように、先日の「YCC運用柔軟化」という政策変更は非常に分かりにくいものです。ともあれ、まずは日銀の発表(抜粋)を見てみましょう。

(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)

1.次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする(全員一致)。

短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。

長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。

 

2.長短金利操作の運用(賛成8反対1)

長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する(※)。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。

※現在の金利情勢のもとでは応札は見込まれないと考えられるが、当分の間、毎営業日、実施する。
(出典:日本銀行「当面の金融政策運営について」2023年7月28日)

この説明を読んで、すぐに日銀の政策が分かる人は少ないのではないでしょうか。少しかみ砕いていきます。

まず、日銀は長期金利、すなわち10年物国債金利を「ゼロ%程度」で推移するように国債を購入する方針としています。ただしその運用においては、長期金利の変動を許容しており、プラスマイナス0.5%程度は変動を容認しています。さらにややこしいのが今回の政策の修正部分ですが、10年物国債を、金利が1.0%になればとにかく買うと表明しています。

0.5%を「目途」という曖昧な表現として残したうえで、1.0%になったら国債を買うと言っているのですから、長期金利の変動許容上限を事実上1.0%に引き上げた、との解釈もできます。

ただし日銀は「各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する」とも表明していますので、1.0%ではなくても日銀は国債を購入するでしょう。要するに日銀の政策に「柔軟性」を持たせた、というのが今回の変更だったと言えます。

これを図解したものが以下となります。

まあ、金利という側面だけで言えば、日銀はとにかく長期金利を上限1.0%まで許容するということであり、実質的には利上げに近いというのが今回の政策変更である、というわけです(日銀の説明では「運用の柔軟化」ですが)。

「物価見通し」から何が見える?

今回の日銀金融政策決定会合では、経済展望(2023年7月、通称『展望レポート』)による物価の見通しも注目されていました。

2023年度の消費者物価(除く生鮮食品)は、前年同月比プラス2.5%と、前回4月時点のプラス1.8%から大幅に上方修正されています。つまり日銀は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁が想定を上回って進んでいることなどから、足許のインフレ率が高まっていると認識を改めたことになります。

一方で、2024年度の物価見通しはプラス1.9%と、前回見通しのプラス2.0%から下方修正され、2025年度の見通しは、プラス1.6%と前回見通しから据え置きとなりました。

今回の日銀による物価展望は、2%を超える物価上昇率は持続的ではなく、2025年度までの間には物価上昇率が2%を下回る可能性があるとすることで、「賃金の上昇を伴う形で、2%の『物価安定の目標』を持続的・安定的に実現することを目指して」いる日銀の物価目標達成が、依然見通せないとの認識を示したものでしょう。

2%の物価安定の目標が達成されると日銀が認識を示したならば、本格的な政策修正が早期に実施されるとマーケットは認識します。本格的な政策修正は、時期尚早であると日銀はマーケットを牽制したということです。

結局どうなる? 不動産に与える影響を考える

ここまで、今回の日銀政策決定会合の結果と日銀による物価の見通しについて簡単に確認してきました。では、これらが不動産にどのような影響を与えるのでしょうか?

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