まさか銀行がこんなことをするなんて─。
世間の度肝を抜き、社会問題にもなった「かぼちゃの馬車」事件から5年が経ちました。当時、不動産融資で高い収益力を誇ったスルガ銀行が、この事件で瀬戸際まで追い詰められたことは、みなさんの記憶にも残っていることでしょう。
その後スルガ銀行は、シェアハウスローンについては、実質的な借金の免除を行いました。そして今年5月には、ノンバンク大手の「クレディセゾン」との資本業務提携を発表しています。シェアハウスオーナーとの係争の末に、新たなスタートを切った形です。
このように、5年間で少しずつ進展があったスルガ銀行の事件ですが、最近不動産投資を始めた、あるいは興味を持ったという方の中には、この事件について詳しく知らない、という人もいるのではないでしょうか。
この記事では、スルガ銀行の不正融資問題のこれまでのまとめと、スルガ銀行の今後の展望について解説していきます。投資用不動産ローンを借り入れる方にとっても、銀行の株式への投資を行っている投資家にとっても、スルガ銀行の事件は参考になるところが多いはずです。
すべての不動産オーナーにとって他人事ではないこの大事件を、一緒に振り返っていきましょう。
■目次
「地銀の優等生」だったスルガ銀行
不正融資事件とは何だったのか
事件後のビジネスモデルの変化
スルガ事件が世間に与えた影響
スルガ事件以降、銀行はどう変わったか
結局決裂した「ノジマ」との提携
クレディセゾンとの提携、狙いは
山場を超えた? スルガ銀行は「普通の銀行」へ
「地銀の優等生」だったスルガ銀行
スルガ銀行は、地銀の中で突出した利益を上げ、得意分野に特化した「異彩を放つ銀行」とされていました。
地元には、地銀最大手の1つである「静岡銀行」という強力なライバルがおり、法人取引では飛躍が望めません。そうした中、スルガ銀行は、個人取引に特化することで、驚異的な収益力を誇っていたのです。
通常の地銀は、企業との取引を重視します。取り扱う金額が多く、効率的だからです。中でも、取引が長く従業員数も多い製造業との付き合いを重視する地銀は多くありました。
ところが、スルガ銀行の地元の製造業では、長引く日本経済の低迷もあり、製造拠点を海外に移したり、設備投資を抑制したりして、資金需要が低迷していました。それに伴い、地銀の収益も低迷してきました。ちなみにいま、ほとんどの地銀がこれと同じ状況に直面しています。
ところが、スルガ銀行は法人取引を捨てて、まだ資金需要のある個人に特化しました。その中でも最大のヒット商品が「アパートローン」だったのです。
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