全国的に人口が減少する中、東京都中央区は人口が増え続けている。同区では沿岸部を中心にタワマン建設ラッシュが続いているが、その中でも最も注目されるエリアの1つが「勝どき」。首都圏で家を買って住みたい街ランキングの上位に毎年名を連ねるなど、人気の高さがうかがえる。
勝どきは、埋め立てエリアの一画を指す町名。「もんじゃ焼き」で有名な「月島」の隣に位置することもあってか、下町のイメージを持っている人も多いかもしれない。
銀座や東京駅からも近い立地ではあるものの、住宅地として注目されるようになったのは2000年代に入ってからだ。国土交通省が発表している地価公示を見ても、勝どきの平均坪単価は2000年から2023年の間に倍近く上昇している。
この記事では、そんな勝どきの現状と今後の開発動向にスポットを当ててみたい。
20年で大きく変わった勝どき
まずは、住宅地として知名度が上がるきっかけとなった、勝どきの開発の歩みを簡単に振り返ってみたい。
2000年には都営大江戸線「勝どき駅」が開業。同時に「ソフィアタワー勝どき」、「コスモ東京ベイタワー」といったタワーマンションが完成した。その後も続々とタワマン建設が進み、2008年の「ザ・東京タワーズ」、2010年の「勝どきビュータワー」が建ったあたりから、「勝どきと言えばタワマン」のイメージが浸透してきたのではないだろうか。
今、勝どき周辺で最も注目を集めるタワマンはなんといってもこの夏に完成間近の「パークタワー勝どき」だろう。「パークタワー」という名称は三井不動産レジデンシャルが手掛ける人気のマンションブランドの一つ。駅直結や便利な施設を建物内に内包するなど、住みやすさを重視していて、ファミリー層でも快適に過ごせるのが特徴となっている。
スーパーマーケットやクリニックホール、そして定員200名規模の保育所も設置されるなど、申し分のない住環境といえる。総戸数は2786戸で首都圏最大規模とされる。竣工時期は2023年8月、入居時期は2024年4月以降の予定だが、入居前から転売組が登場するほど人気が過熱している。販売仲介サイトを見ると、転売住戸がリストに並べられており、既に数十件以上成約していることが分かる。
モデルルームの来場希望者も殺到。2023年6月時点で3万件を超える申し込みがあり、予約が取りづらい状況になっているという。
駅直通のタワマンは「勝どきビュータワー」以来なので十数年ぶり。東京オリンピック・パラリンピック選手村跡地に建設された「晴海フラッグ」が注目されているが、勝どき駅へは徒歩18分。利便性は駅直結の「パークタワー勝どき」に軍配が上がる。
2027年に新たな大規模再開発プロジェクト
今後も勝どき周辺での再開発は続く。注目が集まるプロジェクトの一つが勝どき駅から徒歩10分圏の「豊海地区第一種市街地再開発事業」だ。
クリニックや保育所などの生活利便施設もある総戸数2077戸(予定)のタワマン建設が予定されている。すでに着工されており、2027年竣工予定だが、まだマンションブランド名は発表されていない。
最寄り駅から徒歩10分と聞くと少し遠く感じるかもしれないが、勝どき駅周辺のタワマン群の中で最も海に近い立地となっていて、眺望は抜群となりそうだ。
予定通りの戸数が完売すると住民は4000~6000人規模になることが予想される。人口の増加に伴い新たなインフラが必要となるなど気になる点はあるものの、勝どきエリアの活気はさらに増すだろう。
勝どきと芝をつなぐ環状3号線延伸プロジェクト
大規模マンション建設以外にも、勝どき全体の価値向上に寄与するであろう計画がある。勝どきと港区の芝エリアをつないでアクセスの大幅な向上が期待されるのが「環状3号線」の延伸プロジェクトだ。災害などの緊急時の移動手段としても重要視され、東京都が早期の整備を目指している。
道路が開通すれば、勝どきから海をまたいで西方向へのルートが確保され、通勤通学などの移動時間の大幅な短縮が見込まれる。
環状3号線が延伸すれば、勝どきからJR浜松町駅までバスで5分で移動できるようになる。この延伸は、大地震があっても「倒れない・燃えない・助かる」まちをつくることを目的とし、2022年12月に発表したTOKYO強靭化プロジェクトの中でも「リーディング事業」に位置付けられている。
具体的な完成時期こそ定まっていないが、環状3号線延伸で勝どきと芝のアクセスが良くなると、資産価値はさらに高まるだろう。特に豊海地区からJR浜松町駅まで今は徒歩と電車で20分以上かかるため、少なく見積もっても15分の短縮ができる計算だ。
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銀座や東京駅へのアクセスも良く、住宅地として注目を浴びる勝どき。これからも再開発によるタワマン建設や環状3号線延伸でさらに住みやすくなるだろう。加えて、東京駅と有明を結ぶ都心部・臨海地域地下鉄構想があり、2040年の開業を目標にしている。まだまだ開発が進む勝どきエリアの発展に今後も目が離せない。
(七海碧/楽待新聞編集部)
七海 碧
ファイナンシャルプランナー。不動産会社で再開発に従事したことがきっかけで不動産に興味を持つ。個人では、不動産を軸に据えながら株式や暗号資産にも幅広く投資。 大手メディアで金融や不動産ジャンルを中心に執筆している。自分自身の投資体験をもとに初心者にも分かりやすく説明することが得意。
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