東京メトロ日比谷線・千代田線や東武鉄道などが乗り入れるターミナル駅である「北千住駅」。その周辺エリアで、再開発が計画されている。
今年7月、三井不動産レジデンシャルなどの団体(再開発準備組合)が、東口北街区エリアにおける新施設計画を足立区に提案した。2023年8月時点では計画のすり合わせをしている段階だが、提案内容から北千住駅前エリアの発展が期待される。
再開発されるエリアの現状や今後の街づくりについて知ることで、投資エリアの選定に活用できるかもしれない。本記事では、北千住駅の現状や提案された再開発施設の内容、今後の改善が期待される課題などについて解説する。
北千住駅周辺に着目すべき理由は?
北千住駅がある足立区は東京23区の中でも最北端に位置しており、東京都と埼玉県との県境に位置している。北千住駅周辺に着目すべき理由の1つは、乗り入れ路線と駅乗降客数の多さだ。
北千住駅にはJR・東京メトロ・東武線・つくばエクスプレスが乗り入れており、2022年度の1日平均乗降客数合計は82万8194人にも上る。2022年度の新宿駅の1日平均乗降客数(JRのみ、私鉄除く)は60万2558人だが、それと比較しても遜色のない数となっている。
また、北千住駅前で過去に都市開発が進んでいたのは主に西口側だったが、2012年には東口側から徒歩1分、駅から非常に近い好立地に東京電機大学のキャンパスが新設された。
足立区と言うと下町のイメージが強く、高齢者の住民が多い印象を持っている人もいるかもしれないが、北千住駅周辺では若い世代が集まる環境が少しずつ整ってきていると言える。
27階建てのタワマン計画
そんな北千住駅前エリアにおいて、今年7月に「北千住駅前再開発準備組合(北街区)」が再開発計画を提案した。内容は以下のようになっている。なお、再開発準備組合の事業協力者には、三井不動産レジデンシャル・トーショーホールディングス・大成建設が名を連ねている。
再開発準備組合が提示したのは、いわゆるゲタ履きのタワーマンション(1階や2階などの低層階が駐車場や店舗、事務所として使われ、その上層階は住宅として使われるタイプのマンション)だ。
建物規模は地上27階建てで建物高さは約100メートル。建物用途は住宅・商業施設・子育て支援施設・駐車場等となっており、イメージ図を見る限りでは1階~3階が商業施設・子育て支援施設で4階以上が住宅となるようだ。
なお、再開発の対象区域は駅西口目前の約0.5ヘクタール。北千住駅改札階のコンコースと再開発建物をデッキで接続することについて、鉄道事業者と調整する予定とされている。もし実現すれば、駅直結で利便性の高い建物となるだろう。
再開発の内容については、区が今後再開発準備組合と協議・調整していくとのことだ。足立区のサイトには再開発の完了予定時期は掲載されていないため、続報が待たれる。
再開発が課題の解決につながるか
北千住駅東口周辺エリアでは、以前からとある課題が挙げられている。足立区が当エリアの課題と認識しているポイントは、主に高齢化・防災・商業施設の多様性などだ。
足立区がこれまでに策定してきた「北千住駅東口周辺地区 まちづくり構想」を確認すると、北千住駅東口周辺地区では15歳~64歳の生産年齢人口が足立区平均より少なく、65歳以上の人口が区の平均より多いことが分かる。また、資料には「単身者の居住が多く、5年未満の居住率が高い」と記載されている。
つまり、足立区の中では比較的高齢化が進んでいるエリアである上に、単身者が多いもののあまり定着していないということだ。これらの実態から、当該エリアでは「ファミリー世帯を中心とした生産年齢人口の定住を促す住宅供給を誘導する必要がある」とされている。
防災面については、東京都都市整備局が発表している資料によると、荒川の河川敷を中心に、相対的に地震や火災の危険性が高いエリアとして評価されている状況だ。
比較的燃えやすい木造の建物が多い上に、幅の狭い道路が多く緊急車両の通行に支障をきたすと判断されると「危険性が高い」と評価される。足立区のまちづくり構想では、地震に強く燃えにくい建物への建替え促進・緊急車両が通行できる道路の確保などが課題として挙げられている。
商業施設の多様性については、北千住駅東口側の商店街である「千住旭町商店街」で、生活用品を扱う店舗が少ない点を現状の課題としている。西口側ではルミネやマルイなど商用施設があるが、東口側の活性化が課題となっており、さまざまな商品を取扱うテナントが入る商業施設を誘致すべきと足立区は考えているようだ。
これらの課題が、再開発によって解決されるかもしれない。先程紹介した、再開発準備組合が提示したゲタ履きのタワーマンションで長期間定住する人口を増やし、コンクリート造の建物で防災性を確保、下層階の商業施設に多様な店舗を誘致するとなれば、足立区がまちづくり構想で課題としているポイントを解決することになる。
また、足立区がまちづくり構想を策定する上で実施した住民・来街者向けアンケートにおいても、「日常の買い物ができる商業施設」を望む声は最も大きな割合を占めていた。アンケート結果からは、もともと交通利便性の高さに満足している地元住民は多いことが伺える。
生活利便性が高まれば、北千住駅の東口側は投資対象エリアとしても注目を集めることになるだろう。再開発によって区の目指す街づくりが実現するのか、期待が寄せられる。
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将来の再開発計画が進んでいるものの、現状北千住駅の東口に広がる光景は「下町情緒」という独特の味を感じさせるものだ。再開発建物が下町との調和を図れるのかどうかについても、今後の行方を注視したい。
(朝霧瑛太/楽待新聞編集部)
朝霧瑛太
10年以上不動産業界で経験を積んだあと、フリーライターとして独立。特に不動産投資記事の執筆実績多数あり。一次情報に基づくニュース記事やデータ分析の記事などが好評を博している。
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