
PHOTO:Ryuji/PIXTA
9月19日、国土交通省が2023年7月1日時点の「基準地価(都道府県地価調査)」を発表した。全国平均では、全用途平均が前年比で1.0%上昇、住宅地では0.7%上昇、商業地では1.5%上昇と、それぞれ2年連続のプラスとなった。
新型コロナウイルスの感染が徐々に収まり、景気が緩やかに回復している中、全国平均や三大都市圏の上昇幅は拡大し、下落が続いていた地方圏でもプラスに転じる結果となった。
地方圏では31年ぶりの上昇
公表された結果によると、基準地価の全用途平均は昨年の0.3%上昇に続き、1.0%の上昇。住宅地、商業地も2年連続の上昇となり、上昇率も拡大した。
全用途平均、商業地は、東京圏で11年連続、大阪圏では2年連続、名古屋圏では3年連続で上昇となった。住宅地においては、東京圏・名古屋圏では3年連続、大阪圏では2年連続で上昇。いずれも上昇率が拡大している。

基準地価の前年比変動率 ※単位は%
( )内は前年の数値であり、▲は下落を表している
そして注目すべきは、地方圏で長らく続いていた下落傾向を脱したということだ。全用途平均・住宅地は31年ぶり、商業地は4年ぶりの上昇となった。
札幌市・仙台市・広島市・福岡市を指す「地方4市」では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、これまで10年連続の上昇だったのに対し、その他の地域では、下落が続いていた。
今回の調査では、その他の地域でも全用途平均が30年続いた下落から横ばいに転じ、住宅地は下落が継続しているものの下落率が縮小、商業地は32年ぶりに上昇に転じる結果となった。
公示地価を補完する「基準地価」とは
ここで、基準地価とは何か、簡単に振り返っておこう。
基準地価とは全国の「基準地」1平米あたりの価格。公示地価や相続税路線価は1月1日時点の価格であるのに対し、基準地価は7月1日時点の価格を示す。これらを比較することによって、半年ごとの評価の動向を計ることができる。

土地価格の算出方法5つ
基準地価の計測目的は公示地価と同じだが、計測対象など細かな点で違いがある
熊本県菊陽町など大幅上昇
今回の結果について、不動産鑑定士の冨田建氏は地方で局地的に上昇率が大きいエリアがあった点に注目する。
「台湾のIT企業が進出し、特需に沸いている熊本県菊陽町と、その隣町の大津町の商業地で極端な地価上昇がみられました。中でも『大津5-1』は全国一の32.4%、『大津5-2』も27.3%の上昇でした。このエリアで地価上昇が本格化していると考えられます」
スキーリゾートとしても知られる長野県白馬村の変化についても次のように指摘する。
「商業地の基準地が27.3%上昇しました。背景には投資目的での海外需要があるようです。個人的には北海道・ニセコのように投資過熱による問題が起きないかという懸念もあります。軽井沢でも地価が上昇しており、こちらはリモートが契機でそのまま快適性を追求した首都圏からの需要があるからと考えられます。通常は県庁所在地の地点が最高価格地点となりますが、住宅地限定で考えると長野市を軽井沢町が上回ったのもポイントといえます」
一方、都市部をみると、住宅地の最高価格地点は赤坂の「港-10」で524万円/㎡と4%上昇。「今後どこまで上昇し続けるかに注目」と話す。また、全体的な地価上昇について「物価高で相対的に貨幣価値が下がり気味である点にも留意すべき」としている。
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今回の調査で、都市圏に加えて地方圏でも土地価格の上昇が見られることがわかった。再び新型コロナウイルスの感染拡大の不安も生じている中、インフレなどの影響も今後どのように反映されていくのか、注目が集まるところだ。
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※基準地価は2023年発表の最新の情報に更新済みです。
(楽待新聞編集部)
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