はじめに
物件診断編として、今月は「賃貸併用住宅」について採り上げさせていただきます。
賃貸併用というのは、オーナーが共同住宅のひとつを自己使用しながら、他の部屋を賃貸に出す形式の収益物件のことを言います。
それぞれの住居は独立しており、玄関も別個である点が「シェアハウス」や「ルームシェア」と異なります。
通常は、オーナーが使用する2LDK以上の広い住居と、賃貸用のワンルームや1LDKなどで構成されていることが多いですね。
一番広い間取りの住居にオーナーが住まなければならないということはないのですが、ほぼ100%オーナー住居がいちばん広いです(笑)
賃貸併用住宅のメリットとしては、以下の点が挙げられます。
賃貸併用住宅4つのメリット
1.自宅のローン負担を軽減もしくはゼロにできる。
30年前後のローンを返済できるかどうか自信のないという方にとって、入居者さんの家賃をローン返済に充てることができる賃貸併用住宅は、かなり魅力的です。
2.住宅ローンで収益物件を購入できる。
属性や自己資金の問題で、アパートローンなどの収益物件用融資が使えないような方でも、審査が画一的な住宅ローンなら受けられる可能性が高いです。
住宅ローンが使えるかどうかは、住居部分の割合など各行の規定があります。
3.ライフステージに合わせやすい。
例えば賃貸併用住宅を購入した際に、ご夫婦と子供2人の合計4人でオーナー住居を使用していたとして、その後お子さんが大きくなって独立した際に、自己居住部分を区切って賃貸部分を増やすことも可能です。
逆に、ご夫婦ふたりで賃貸部分に住み、自己居住していた部屋を賃貸に出すことも考えられます。
4.税制面でもメリットがある。
住宅ローン控除や相続税の減免措置を受けることもできます。
そのほか、通常の戸建てを建築しにくいような土地値の高いエリアに自宅を持てるなど、いくつものメリットがあるため、最近非常に注目されているのが賃貸併用住宅です。
所在地 | 神奈川県川崎市 |
表面利回り | 約5% |
販売価格 | 約9,000万円 |
築年数 | 1990年(築23年) |
しかし、当然デメリットやリスクもあります。
不動産投資を考えていらっしゃる方は、もちろんしっかりと見極めをされるかと思いますが、第一は収益物件としての空室リスクです。
そのほか、建物の老朽化や設備の陳腐化対策なども、入居者に選んでもらう存在であり続けるためには不可欠ですね。
そのあたりを念頭において、物件をピックアップしてみましょう。
併用住宅を検討する際は○○○から検討すべし!
普通の物件を検討しているときには、速攻でふるいに掛けてしまうような利回りですが、併用住宅の場合はとりあえずネットに掲載されている利回りは無視して下さい。
賃貸併用物件で最初に確認するのは、「間取り」です。
中でも、オーナー居住部分が全体のどれだけを占めるかについて、図面を見て確認することが重要です。

所在地 | 神奈川県川崎市幸区小倉 | ||
沿線交通 | JR横須賀線 新川崎 徒歩21分 | ||
販売価格 | 9,100万円 | ||
表面利回り | 5.56% | 構造 | 鉄骨造 |
築年数 | 1990年 | 現況 | 賃貸中 |
土地面積 | 約213.96㎡ | 建物面積 | 約309.25㎡ |
総戸数 | 7戸(オーナー住居含む) | ||
間取り | 5LDK×1 2DK×5 1DK×1 |
オーナー居住部分の面積割合が広いほど収益性が下がります。
逆に狭くなれば賃貸に回せる面積が広くなるので収益性が上がりますが、「自宅」としての魅力が減少しますし、一定の割合以上のオーナー居住面積を確保しないと、住宅ローンやローン減税の対象ではなくなってしまう可能性があります。
今回の物件は、3階建ての3階部分がオーナー住居。
1~2階は各階3世帯ずつの賃貸物件になっています。
賃貸部分の面積割合が50%を超えているので、住宅ローンを使っての購入はできない可能性が高いです。
オーナー居住部分を抜かした利回りを計算して収支を見極めよう!
販売価格は9100万円ですが、賃貸部分の面積は全体の3分の2ですので、賃貸部分の価格はざっくりと計算して約6070万円と見積もれます。
家賃収入は506万円ということなので、単純計算で8.3%くらいの利回り物件+自宅を購入するとも考えられます。
この築年数だと、川崎市内でもちょっと割高かな・・という感じです。
非常におおざっぱな計算ではあるものの、この作業で「物件そのものが割高ではないか」と確認することができます。
次に、間取り図を見て「用途の可変性」に注目しました。
3階のオーナー使用部分の一部を、賃貸用に変更中とあります。
この「変更中」については詳細を確認する必要があります。
購入して引渡の時にはキレイな賃貸用戸室となるのか、費用負担はどうなのか、または単に「変更できます」というだけのことなのか。
また、表示されている利回りは現状のものなのか、用途変更後の想定利回りなのかも確認しなければなりません。
収益性に大きな影響をあたえる項目なので、見落としのないようにしましょう。
もし、サイトに表示されている利回りがオーナー居住部分の用途変更前のもので、かつ用途が変更された後で買主に引き渡されるとしたら、一気に利回りが向上する可能性がありますね。
逆に、「収益はほどほどで良いので、広いところで住みたい」という方でしたら、ここでの「変更中」はマイナス要素になります。
このように、賃貸併用住宅は購入する人のライフスタイルによって最適な物件が異なります。
一概に利回りを追求するだけでなく、人生全体を考えて購入検討されることをお奨めします。
今回の物件はオーナー居室が約100㎡と広く、サウナまで設置されているということなので、どちらかと言えば収益性よりも自宅にこだわりがある方向けでしょうか。
あとは収益物件としての物件の魅力ですが、単身者や夫婦2人住まい中心の間取りでありながら、駅からの距離が遠いことが気になります。
しっかりとしたエリアマーケティングを行った上で、現状の家賃設定が適切かどうかを見極め、購入価格を決定してください。

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