PHOTO: ’90 Bantam /PIXTA

首都圏では、数億から50億円といった超高額マンションが続々と販売されている。

なかなか手が出せない価格帯だが、既存企業のオーナー経営者、スタートアップ企業の経営者などのほか、外国人のニーズも強いといわれ、超高額でも確実に売れている。

こうした超高額マンションは基本性能に優れているほか、仕様・設備、管理・サービスなどの面で最先端を走るマンションでもある。

そうした新築マンションのトレンドを押さえておけば、居住用・投資用を問わず、今後の物件選びの参考になるのではないだろうか。本記事では、最新の新築マンションについて、その性能やサービスを見ていこう。

東京23区の新築平均価格が2億円台に!

新築マンションの価格高騰が止まらない。首都圏で見ると、図表1にあるように、1月には首都圏平均で6510万円だったのが2月には6776万円に上がり、3月には1億4360万円と、初めて1億円の大台に乗った。

その後は1億円台を切っているが、7月には9940万円と再び1億円に近い水準まで上がっている。

東京23区に限るともっと激しく上昇している。3月には平均で2億1750万円と2億円台に乗った。その後は下降傾向で6月に7703万円まで下がったものの、7月には再び1億3340万円に上昇している。

首都圏と東京23区の新築マンション平均価格

図表1 首都圏と東京23区の新築マンション平均価格(単位:万円)(不動産経済研究所の資料をもとに著者作成)

平均価格の高騰の背景には、都心部を中心に超高額物件の販売が行われたという事情がある。

3月に東京23区の平均が2億円台に乗ったのは、東京都港区の「WORLD TOWER RESIDENCE」の1期1次169戸が平均2億5000万円で販売されたことが関係している。

また、東京都港区の「三田ガーデンヒルズ」が1億5000万円から45億円の範囲で約700戸販売されたことも要因のひとつだろう。

この2物件は2023年秋にも2期販売が行われる。その他にも新たな超高額物件が登場する予定のため、再び平均価格が大きく上昇しそうだ。

帝国ホテルのサービスを入居しながら満喫

では、ここまでに名前を挙げた高額マンションはどのような物件なのか。まずは「三田ガーデンヒルズ」を見ると―。

三井不動産や三菱地所などによる「ガーデンヒルズ」ブランド。現在のヴィンテージマンション(一般的な物件であれば価値が低下するような築年数でありながらも、価値を維持、または高めている物件)の代表格ともいうべき「広尾ガーデンヒルズ」以来、38年ぶりの「ガーデンヒルズ」となる。

それだけでも10年後、20年後のヴィンテージマンション化が約束されたようなものだ。

約2.5万平米の広い敷地に、5棟が配され、三井グループの迎賓館である「綱町三井倶楽部」と並ぶ由緒あるファサードデザインが採用されている。

ワークスペース、ジム、ゴルフレンジ、サウナ、岩盤浴、シアタールームなどの共用施設が敷地の中央に集約されている。外部の人は入れない、居住者のみの空間で、住む人のプライドを充足させるものとなっている。

上質の管理サービスとしてはしばしば「一流ホテル並みのサービス」という言葉が使われるが、ここでは帝国ホテルと提携して、帝国ホテルそのもののコンシェルジュサービスが提供され、バーラウンジでは帝国ホテルのバーテンダーがサービスしてくれるのだ。

高額マンションのエントランスイメージ(PHOTO: 本ちゃん /PIXTA)

一流ホテルのサービスとしては、森ビルの「麻布台ヒルズレジデンス」はそれ以上かもしれない。2023年11月の開業予定だが、高さ約330メートルと日本一高いビル(2023年11月14日時点)で、その上層階にマンションが配置される。

64階のペントハウスは3戸だけで価格は非公開だが、100億円とも、200億円ともささやかれている。一般分譲されず、森ビルの優良顧客などを対象に非公開で販売されているようだ。

このビルには世界的なラグジュアリーホテルの「アマン」が入るが、マンションではそのアマンのサービスが提供される。

例えば、24時間対応でのフロントサービス、ドアマン・ポーターサービス。帰宅時にクルマを駐車場につけてくれ、出発時にはエントランスに準備してくれるバレーサービスなどが提供される。

ホテルそのもの、それも世界的なラグジュアリーホテルのサービスが提供されるわけだ。超高額マンションでは、「ホテル並みのサービス」ではなく、「超一流ホテルそのもののサービス」が定着していくことになるのかもしれない。

ポーターサービスのイメージ(PHOTO: Fast&Slow /PIXTA)

「WORLD TOWER RESIDENCE」も、2023年秋に第2期の販売が行われる。これもやはり2億~3億円は当たり前の超高額マンションだが、JR山手線・京浜東北線などの浜松町駅から徒歩3分で、ルーフデッキ(歩行者デッキ)で駅と直結する。

こちらも管理サービスの充実が強調されているが、それよりは人生を豊かにする陸、海、空の交通網との直結が最大のセールスポイントになっている。

浜松町駅は新幹線が通る東京駅、品川駅までそれぞれ3駅であり、モノレールで空の玄関口の羽田空港とつながっている。さらに、離島や観光都市と航路で結ばれた竹芝埠頭(ふとう)も近く、仕事、観光などさまざまな面での交通アクセスに恵まれている。

このところは駅前の大規模開発による高額マンションが増えている。例えば、浜松町駅のお隣の高輪ゲートウェイ駅は新設の駅であり、今後は駅に直結した超高額マンションの開発が続くのではないかと期待されている。

それ以外にも、都心近くではこうした利便性の高さが突出した物件が増えてくることになりそうだ。

都心ながら第一種低層住居専用地域のマンション

そうした物件とは少し異なるのが、環境の良さを売り物にした超高額マンション。

東急不動産の「ブランズ自由が丘」は、東急東横線・大井町線の自由が丘駅から徒歩5分の都心近接地に位置するが、高い建物が建てられないなど住環境を最優先する第一種低層住居専用地域に建てられている。

鉄筋コンクリート造地下1階・地上3階の低層マンションで、総戸数が24戸という小規模物件だ。

平均価格2億8000万円の超高額物件だが、小規模物件なので共用施設などはさほど充実していない。最大のセールスポイントは環境の良さだ。高い建物を建てられないエリアにあるので、3階でも眺望が開け、開放的な住まいになる。

しかも、敷地の北側には九品仏川緑道があり、南には緑豊かで静かな環境の玉川聖学院がある。将来的にも環境の良さが維持されることは間違いないだろう。

三菱地所レジデンス株式会社の「ザ・パークハウス 代々木大山レジデンス」も、環境の良さを前面に打ち出した超高額マンションだ。

渋谷区の中でも人気の高い大山アドレスで、敷地の北側には緑豊かな代々木大山公園を望み、南には第一種低層住居専用地域の戸建住宅街が広がっている。南北共に眺望が広がり、風通しの良い開放的な住まいになる。

建物は鉄筋コンクリート造の5階建て、総戸数は140戸。2023年11月からの販売予定で、価格の詳細は公表されていないものの、3.3平米当たりの坪単価は平均1000万円前後になるのではないかと言われている。専有面積85平米台は2億円台半ば、108平米台が3億円台半ばになりそうだ。

マンションの価値は立地で決まると言われる。超高額物件となるほどの立地の良さは、何より交通アクセスの良さが第一。とはいえ、都心部では希少な周辺環境などの良さに恵まれていることも、超高額物件の条件になり得るわけだ。

なお、こうした超高額物件は販売価格だけではなく、管理費や修繕積立金なども高くなる点に注意しておく必要がある。

たとえば「三田ガーデンヒルズ」は、居室に関する管理費が6000円台から14万円台。共用部を含めた全体の管理費が2万円台から14万円台で、修繕積立金は7000円台から6万円台となっている。

もっとも、こうした物件を取得できる富裕層にとっては、その点も問題にはならないのかもしれない。

ここで取り上げたマンションは、いずれも超高額物件でありながら反響は上々で、中には第1期販売が即日完売した物件もある。いずれも10年後、20年後にはヴィンテージマンションの1つに挙げられそうな条件を備えている。

簡単には手が届かないマンションかもしれないが、超高額物件なのに人気が高い理由を知れば、これからのマンション選びの参考になるのではないだろうか。

参考のために、機会があればモデルルームの見学を申し込んでみるのも良いかもしれない。

(山下和之)