駅北口方面にある「ボーノ相模大野」(PHOTO:M.Tamiao / PIXTA)

小田急線相模大野駅から徒歩4分、旧伊勢丹相模原店の跡地で超高層タワーマンションの建設が進められている。

地上41階建て・総戸数687と周辺エリアでは最大級の規模を誇るマンションであり、竣工は2025年11月の予定だ。

駅周辺エリアについて「三核構造」を基本に開発を進めてきた相模原市だが、核の1つを構成する要であった伊勢丹相模原店が2019年に閉店したことで、街の活気はやや失われてしまっていた。

今回の再開発によって、駅周辺は賑わいを取り戻すことにつながるのか。事業の詳細と周辺の状況についてまとめてみた。

小田原線の主要駅「相模大野」

相模大野駅は新宿と小田原をつなぐ小田急小田原線の駅で、快速急行・急行・ロマンスカー(一部)などが停車する主要駅として位置づけられている。

また、相模大野駅は小田急江ノ島線の起点でもある。江ノ島線は小田原線と分岐する形で藤沢、片瀬江ノ島方面へと走る。

新宿までの所要時間は約40分、小田原駅までは約45分、藤沢駅までは約25分となっている。

駅ビル「相模大野ステーションスクエア」には、雑貨店やアパレルショップ、家電製品店などが入っており、7~14階は宿泊施設「小田急ホテルセンチュリー相模大野」となっている。

「相模大野ステーションスクエア」外観(PHOTO:t.sakai / PIXTA)

駅北口から南西方向には、駅とペデストリアンデッキで直結する大型複合施設「ボーノ相模大野」があり、商業施設のほか、20階建てと26階建ての2つのマンションがそびえる。

駅南口、北口の両方のエリアで、中層のマンションや商業施設などが建ち並んでいる。

道路アクセスに関していえば、駅の北側に線路を陸橋で跨ぐ形で国道16号線が通っている。国道16号線は首都圏を環状に走る道路で、駅から南東に進むと横浜、北西に進むと八王子方面へと行きつく。

北口側には線路と並行する形で神奈川県の県道51号線が通り、北は隣の東京都町田市、南は厚木市へと向かう。

「三核構造」を基本とした開発

多様な交通アクセス手段に恵まれている相模大野駅周辺のエリア。同駅を擁する相模原市は、これまで駅周辺について「三核構造」という考え方を基本に開発を進めてきた。基本となる3つの核は次の通りである。

(1)商業・交通の核…相模大野駅および駅ビル、駅前広場
(2)商業・文化の核…相模大野中央公園、相模大野図書館、旧伊勢丹相模原店など
(3)魅力づくりの核…ボーノ相模大野

上記3地点を核に、街の回遊性向上や面的な賑わいづくりを図ってきた。

しかし、「商業・文化の核」の要となっていた伊勢丹相模原店(1990年開業)は、百貨店市場の潮流に抗えず、2019年に閉店となってしまう。

そして現在、旧伊勢丹跡地で進められているのが、超高層タワーマンション「プラウドタワー相模大野クロス」の建設である。

地上41階建て、沿線最大級のタワマン

野村不動産株式会社が開発する「プラウドタワー相模大野クロス」は、現在建設中。竣工は2025年11月上旬、引き渡しは2026年1月下旬を予定している。

今月25日から、第1期180戸の申込登録の受付を開始した。

同マンションは敷地面積1万186平米、高さ約152メートル、地上41階建て・地下3階建ての規模。総戸数は687戸となる予定で、デベロッパーによれば小田急線沿線で最高級規模の免震タワマンだという。

「プラウドタワー相模大野クロス」外観完成予想図(公式HPより)

低層階には商業施設や広場が整備され、駅からの図書館や相模大野中央公園へのアクセス性を損なわない構造となっている。

公式サイトによると、高層階は1LDK~4LDKの住宅となり、各居室の専有面積は32.66平米~125.48平米のようだ。

予定販売価格の最低価格は3900万円台(1LDK)、最高価格は2億5900万円台(3LDK)で、予定最多価格帯は8500万円台となっている。

代表的な予定販売価格は以下の通り。

2LDK/62.32平米…6078万円~
3LDK/68.97平米…6738万円~
3LDK/73.79平米…7568万円~
4LDK/86.34平米…9558万円~

相模原市内で同時期に建設されているタワーマンションはなく、一概に価格相場の比較はできないが、数少ない市内の新築マンションの予定販売価格を見ると3400万~6800万円台であり、プラウドタワー相模大野クロスが異色の存在であることが推測できる。

相模原市内には、100メートルを超えるタワーマンションはいくつかあるが、いずれも2000年代に竣工しており、JR横浜線の橋本駅や相模原駅周辺に集中している。

今回建設されているマンションは、旧伊勢丹の閉店でやや寂しくなっていた駅北口の雰囲気を取り戻すだけでなく、その高さが街のシンボルとなるだろう。その存在は、さらなるタワマン開発を促すかもしれない。

開発の機運が高まり、マンション等の建設が進めば、地価や賃貸需要にも影響があるかもしれない。引き続き、エリアの動向に注目しよう。

(山口伸/楽待新聞編集部)

山口 伸
経済・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。街歩きが趣味で駅周辺の商業施設や開発状況を調べている。