PHOTO:kker / PIXTA

不動産投資を行うのに免許など資格は必要なのでしょうか。

継続的に物件の売買を繰り返すことは「宅地建物取引業」に該当するため免許が必要だ、という話を聞いたことがあるかもしれません。

では、一体どの程度の売買を行う場合に免許が必要となるのでしょうか?

今回は、この点に関する宅地建物取引業法の規制について簡単に解説します。

宅地建物取引業法の規制

宅地建物取引業法(以下「法」といいます)では、宅地または建物の売買を「業として行う」行為は「宅地建物取引業」に該当するとされ(法2条2号)、宅地建物取引業を営むには国土交通大臣または都道府県知事による免許が必要だとされています(法3条1項)。

また、免許を受けずに宅地建物取引業を営むこと(無免許営業)は禁止されており(法12条1項)、違反すると罰則(後述)が適用されます。

そして、ここでいう「宅地建物取引業を営む」とは、判例では売買などを「営利の目的で反復継続して行う意思のもとに」行うことをいう、とされています。

つまり、無免許営業とは、免許を受けずに「営利の目的で反復継続して行う意思」のもと売買を行うことをいうわけです(なお、「意思」があればよいので1回目でも該当しうることに注意)。

「営利の目的で反復継続して行う意思」とは

では具体的にどのように売買を行うと無免許営業に該当するのでしょうか。

典型的には、利益を得るために宅地や建物を仕入れ、それを不特定の買主に販売することを繰り返すような行為がこれに該当するといえます。

PHOTO:yasu / PIXTA

ただ、具体的な基準はなく、取引の態様や回数などをもとにケースバイケースで判断されているのが現状です。

なお、前述のとおり「営利の目的で反復継続して行う意思」があればよいので、理論的には1回の売買でも無免許営業に該当します。

また、「売買」が対象なので、売却だけでなく購入のみでも該当しうることにご注意ください(裁判所の競売手続で購入を繰り返した行為が無免許営業に該当するとされた裁判例があります)。

さらに、売却や購入をした事が問題なのであり、(免許を持っている)仲介業者を通したから大丈夫、というわけではありませんのでご注意ください(むしろ、事情を知って加担した仲介業者が共犯とされた事例もあります)。

なお、国交省が出しているガイドライン「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」では、前述の「業として行う」に該当するかどうか(事業性があるかどうか)について、次の5つの要素を総合的に判断すると説明しています。

各要素には濃淡があり、それぞれ、左寄りであれば事業性は認められやすく、逆に右寄りであれば事業性は認められにくいということになります。

ただし、各要素を総合的に判断するので明確な線引きがあるわけではありません。

これはあくまで国交省の見解ですが、裁判所も実際にはこのような要素を考慮して判断していると思われますので参考になるでしょう。

検挙事例も

では実際に無免許営業として検挙された事例を見てみましょう。2010年以降に報道された逮捕事例からいくつか挙げてみます。

・約2年間で宅地約2700平米を6回にわたり計2億5000万円で売却
・約9カ月間でマンションや戸建てを5人に計約4650万円で売却
・約9カ月間で宅地12区画を4人と2社に売却
・約7カ月間で宅地3区画を3人に計1700万円で売却

競売で購入した物件については以下のような例があります。

・約2カ月間で、競売でマンションと戸建てを購入し2人に売却
・約8カ月間で、競売で4物件を購入し、うち2物件を計約1800万円で売却
・約7カ月間で、競売でマンション4室を購入し売却

※経緯などの詳細な情報や、逮捕後にどのような処分となったかは不明。

これらの例を見ても明確な基準が明らかになるわけではありませんが、上記のほかさらに古い事例も含めて見てみると、おおよそ1~2年の間に3~4件の売却を行ったとして検挙されている例が多いように思います。

なお、ここには挙げませんでしたが、暴力団員が関与する事案ではあるものの1回の購入や売却で逮捕された事例もあります。決して「回数が少なければ安全だ」というわけではありませんのでご注意ください。

PHOTO:Haru photography / PIXTA

罰則について

無免許営業行為を行った場合の罰則(法定刑)は、個人については、3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(またはその両方)です(法79条2号)。

法人の場合は1億円以下の罰金とされています(法84条1号)。

なお、仮に有罪判決を受けた場合は、罰金刑であっても宅地建物取引業の欠格事由に該当し、その執行後5年間は宅地建物取引業の免許を受けることができません(法5条1項6号)。

気をつけるべきポイント

たとえ規模の小さい個人投資家であっても、利益を得る目的で行っているわけですから「営利目的」を否定することはできないように思われます。

そして、「反復継続」の判断基準は上記のように明確とはいえません。

条文の文言が抽象的であるため解釈に幅がある規定になっていますが、売買を行う場合には、常に無免許営業として検挙されるリスクは否定できないことになります。

加えて、SNSなどで売買実績などを広く宣伝したり、セミナーなどで人を多く集めたりしていれば、より営利性を強く推認させる事情が増すことになります。

PHOTO:mapo / PIXTA

また、もし売買トラブルになる例が続いたりすれば、警察などへの通報が複数行われ、それが捜査のきっかけになることも考えられます。

大がかりに行うことはよりリスクを高めることになりますので注意が必要だといえます。

こういったリスクに鑑みると、今後も売買を繰り返す予定があるのであれば、やはり宅地建物取引業の免許を取得するのがよいでしょう。

(弁護士・関口郷思)