千葉県松戸市にあるJR常磐線「北小金駅」。同駅の南口エリアでは、住宅、商業施設、駐車場を含むビル2棟の建設計画が進行中だ。
今年8月、再開発事業における市街地再開発組合の設立が千葉県知事によって認可された。
開発用地は駅南口側の0.9ヘクタールの土地。このエリアを南北2つの街区に分け、それぞれに住宅と商業施設、駐車場が入った複合施設が建設予定だ。
この記事では、そんな北小金駅周辺で進む再開発について、計画の内容を紹介しよう。
松戸市にある「北小金駅」
最初に、「北小金駅」の周辺地域の特徴や、松戸市について紹介しよう。
北小金駅周辺は、古くから存在した寺院や城跡が複数見られる。江戸時代に幕府が水戸街道を整備したことで、松戸と小金は宿場町として繁栄した。
松戸の江戸川沿いには河岸(船から荷物の上げ下ろしをする場所)が設けられ、賑わっていた。
北小金で有名なのは、本土寺と東漸寺という2つの古刹だ。
本土寺は5万本のあじさい、5千本の花菖蒲でも有名で「あじさい寺」「紅葉の寺」として親しまれている。
東漸寺は、樹齢340年を誇るしだれ桜やもみじなど、四季折々の自然に触れられる寺として有名だ。
そんな北小金を擁する松戸市は、千葉県の北西部に位置しており、西側は江戸川を挟んで東京都葛飾区、江戸川区、埼玉県三郷市に、南側は千葉県市川市や鎌ケ谷市に隣接している。
松戸市の人口は、11月1日時点で約50万人。千葉県内では千葉市、船橋市に次いで3番目に多い。
現在松戸市は、広域からの集客性向上や市民が暮らしやすい街を実現するため、市街地再開発事業に力を入れている。
都市機能を高めることが必要とのことで、以下のような施策を設定している。
・都市機能立地を促進するための基盤整備の推進
・拠点内の回遊性・快適性向上のための環境整備
・駅前・駅中の利便性を生かした子育て支援施設の誘導
・既存商業施設の維持・充実のための支援
・拠点性の強化に資する公共施設の適切な整備
北小金駅南口が抱える課題
北小金駅周辺も、都市機能誘導区域・居住区域誘導区域に位置付けられている。商店街の充実や公共施設の整備により、子育て世代をはじめとする全ての年齢層の人が暮らしやすい街づくりを目指す。
北小金駅の南口周辺は、松戸都市計画都市再開発方針において、2項再開発促進地区(特に一体的かつ総合的に市街地の再開発を促進すべき地区)に指定されている。
居住・商業環境の充実や防災性の向上を図るため、都市基盤施設を整備したり、オープンスペースを創設するなど、土地の健全な高度利用を促進している。
現在、北小金駅南口の一部の道幅は狭いほか、老朽化した建物や駐車場なども多く、土地が有効活用されていない状況だ。
市民の憩いの場となる公園や広場などのオープンスペースが不足しており、防災性、安全性、快適性などの課題を抱えている。
商業テナント、住居が入るビル2棟が建つ予定
このような課題を解決すべく、計画されたのが「北小金駅南口東地区第一種市街地再開発事業」だ。
同事業の主な目的は、北小金駅南口東地区が抱える問題である「狭あい道路(主に幅員が4メートル未満である狭い私道等)」「老朽化した建物」などの低未利用地を有効活用することだ。
その他に、「防災性・安全性・快適性」などの課題を解決して、市民の憩いの場となる公園や広場なども創出する。
事業協力者は、野村不動産と長谷工コーポレーションで、北小金駅南口東地区市街地再開発準備組合・松戸市・事業協力者が三位一体となり事業を進めているところだ。
この事業は、松戸市における初の「組合施行型市街地再開発事業」だ。これは、地権者の5人以上が発起人となって「組合」を設立し、再開発事業を行うやり方を指す。
隣接する「北小金駅南口地区第一種市街地再開発事業(施行済)」と連続性のある開発を行い、住戸約370戸を擁する複合施設を予定している。(下図)
開発用地は南北2つの街区に分けられ、それぞれにマンション、商業施設、駐車場が設けられる。
1街区(北敷地)には20階建てで高さ約60メートルのビル、2街区(南敷地)には14階建てで高さ約40メートルのビルを建設する。
それぞれのビルには住居と店舗が入り、計300戸を超える住戸が生まれる予定だ。2028年度の竣工を目指す。
両街区を隔てる道路は、現在あるものを拡幅し、南側に憩いの場として広さ約1000平米の広場を設ける。
松戸市が目指すコンパクトシティは実現なるか
本プロジェクトは「松戸市立地適正化計画~魅力あふれる松戸の未来~」に基づく地方創生とコンパクトシティ化を目指している。
立地適正化計画とは、居住機能や医療・福祉・商業、公共交通等のさまざまな都市機能を誘導し、持続可能なまちづくりを目指すこと。
コンパクトシティをつくるためのマスタープランであり、市町村が必要に応じて策定している。
松戸市では少子高齢化に対応するため、「優れた鉄道ネットワークにより形成される駅を中心としたまちづくりを行い、増加する高齢者に対応しながら、まちの活力を将来にわたって持続させていく」との考えを示している。
松戸市ではさらに、「民間投資の誘発や国の支援制度の効果的な活用による、駅周辺等の拠点性強化」、「広域性・集客性の高い施設の立地誘導や公共施設の更新による都市の魅力向上」、「既存住宅ストックの活用推進や駅周辺のまちの更新による人口流入」の3つを掲げ、持続可能なまちづくりを目指す。
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北小金は江戸時代から街道の宿場町として歴史的な情緒が残り、まちの魅力も高い。南口エリアの再開発により、松戸市が目指すコンパクトシティ化がどれだけ進むか。今後の動向に注目したい。
(矢口ミカ/楽待新聞編集部)
矢口ミカ
フリーランスライター。不動産、福祉住環境、整理収納、ビジネス関連などの記事を多数のメディアで執筆・監修。ライター業と併せて家族が所有する投資用物件の入居者管理事務も行っている。
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