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静岡県西部に位置する浜松市。県庁所在地である静岡市を超える人口規模を持ち、「静岡・浜松大都市圏」の中心都市として機能している。

政令指定都市でもある浜松市は、遠州地域(静岡県西部)における経済・文化・観光の中心だ。12月現在の世帯数は約35万5000世帯、人口は約79万人に及ぶ。

そんな浜松市では、1月から行政区が変更となる。現在7つある区が3つに再編される。本稿では、今回の再編の内容と、各区の概要について紹介する。

7区から3区へ再編

2023年12月現在、浜松市は中区・東区・西区・南区・北区・浜北区・天竜区の7つの区によって構成されている。

これが2024年1月からは、中央区・浜北区・天竜区の3つの区へ変更となる。

※三方原地区:初生町、三方原町、東三方町、豊岡町、三幸町、大原町、根洗町

新たな区分を地図上に落とし込んでみると、とりわけ南部の区が集約されていることがよくわかる。なお、郵便番号や電話番号、小中学校の通学区域などに変更はないようだ。

出典:浜松市ホームページ「行政区の再編について」

浜松市は今回の再編の背景について、「時代の変化に合わせた、柔軟で効率的な組織運営と住民サービスの向上が目的」としている。

浜松市は少子化やインフラの老朽化、財政の健全化といった課題を抱えており、これらに対応するべく「行政運営の効率化」を図る狙いがある。

再編後の各区の特徴

ここで、再編後の中央、浜名、天竜の3区について、それぞれの特徴を改めて確認しておこう。

■中央区

再編前の中区にある浜松城の天守(著者撮影)

1911年に市政が施行された浜松市は、2005年の合併により現在の規模になった。浜松市・浜北市・天竜市・舞阪町・雄踏町・細江町・引佐町・三ヶ日町・春野町・佐久間町・水窪町・龍山村の12市町村が合併して、新たな浜松市が誕生した経緯がある。

2024年の再編により「中央区」となるのは浜松市の南部で、合併前の「旧浜松市」を中心とする地域である。

市内で最も人口の多いエリアにあたり、中央区全体の人口は60万人に及ぶ。JR浜松駅や徳川家康ゆかりの浜松城などがあるのもこの地域だ。

■浜名区

猪鼻湖の風景(著者撮影)

浜北区と北区の一部は新たに「浜名区」となる。

旧浜北市から浜松市浜北区となった地域に古くから暮らす住民からは、今回の再編で慣れ親しんだ「浜北」という地名がなくなるのは寂しいという声も上がっているという。

浜松の特産品である「三ヶ日みかん」が栽培されている三ヶ日町は、現在の北区にある。

また、北区で猪鼻湖に面した地域にはリゾート地としての顔もあり、湖をのぞむリゾートホテルや東急ハーヴェストクラブなどの会員制リゾートホテルなどが立ち並ぶ場所だ。

■天竜区

SNSなどで話題になった道路標識(著者撮影)

今回の再編において、唯一影響を受けなかったのが北部に位置する「天竜区」だ。人気のローカル鉄道「天竜浜名湖鉄道」の本社が置かれている。

面積は943平方キロメートルと浜松市全体の6割ほどを占めているものの、うち森林面積が680平方キロメートルに及んでおり、中山間地域にあたる。

また、「月まで3キロメートル」というインパクトのある道路標識がSNSで話題になった、珍地名の「月」地区があるのも天竜区だ。

工業都市としての浜松市

浜松市は、ものづくりの街でもある。

本田技研工業株式会社(HONDA)発祥の地として知られるほか、スズキ株式会社(SUZUKI)の本社所在地でもある。

また、日本三大楽器メーカーと言われるヤマハ株式会社(ヤマハ)・株式会社河合楽器製作所(カワイ)、ローランド株式会社(ローランド)は、すべて浜松市内に本社を構えている。

これらのメーカーの工場では外国人労働者も多く働いており、中でも南米出身者の割合が高い。浜松市はブラジル国籍の外国人登録者数が全国で最も多い市町村だ。

工場で働く単身者や外国人労働者が多い街であることは、浜松市の住宅の動向を考える上で念頭に置くべき要素と言えるかもしれない。

そして、今回の行政区の再編によって行政サービス機能に変化が起きる場合は、それが不動産投資の目線でどれほど影響があるのか、注視していきたいところだ。

(羽田さえ/楽待新聞編集部)

羽田 さえ
札幌在住のフリーライター。不動産デベロッパーでの勤務経験があり、保有資格は宅建士・FP技能士2級。新築物件も古民家もヴィンテージマンションも大好きです。