
2019年時点の津田沼駅南口のようす(PHOTO:7maru / PIXTA)
千葉県内有数の繁華街、津田沼。今年2月にJR津田沼駅前北口のパルコが閉店したことにより少々活気が失われてしまったようにも思われる。
かつては駅周辺に高島屋や丸井、ダイエーなどもあり、百貨店や大型ガソリンスタンドがこぞって出店する姿は「津田沼戦争」とも評されていたが、現在はその見る影もない。
しかし現在、閉店したばかりのパルコ跡地を含め、駅の北口と南口の両方で再開発計画が進められているようだ。商業施設のほかタワマンが計画されている。
消費の街としての魅力を失いつつも、住みやすい機能的な街に生まれ変わることができるのだろうか。
津田沼ってどんなところ?
津田沼駅は千葉県北西部の東京湾沿岸近辺に位置する。「チーバ君」で例えれば顎の部分だ。
JR総武線(各駅)の終着駅となることも多く、駅前周辺が栄えていることから県外の人は勘違いしやすいが、「津田沼市」という行政区分は存在しない。船橋市と習志野市にまたがる駅周辺一帯が津田沼と呼ばれる。
津田沼駅にはJR総武線(各駅)と総武線(快速)が停車する。総武線(各駅)は千葉駅と東京都の三鷹駅を結ぶ路線で、途中駅には御茶ノ水や新宿などがある。
総武線(快速)は千葉駅と神奈川県の久里浜駅を結び、途中駅には東京や横浜などがある。各駅と快速は錦糸町以西で分岐する形だ。
ちなみに各線は途中からそれぞれ中央線・各駅、横須賀線となる。津田沼から千葉へは11分、錦糸町へは25分、東京までは30分程度である。

PHOTO:tarousite / PIXTA
津田沼駅から西へ300メートルの地点に新京成線の新津田沼駅がある。新京成線は千葉県北西部を南北に結ぶ路線であり、隣駅の京成津田沼と松戸を結ぶ。
なお京成津田沼より西を通る京成千葉線との直通列車も運行されており、千葉(京成千葉)へ向かうことも可能だ。
道路関係については津田沼駅北口から北方へ300メートルの位置に県道69号線がある。南口に面するメインストリートは「まろにえ通り」と呼ばれ、そこを1キロメートルほど南下すると国道14号線(千葉街道)と交差する。
ランドマークだった津田沼パルコが閉店
津田沼といえば駅北口にあったパルコ(PARCO)がランドマークのような存在だった。
津田沼パルコは1977年、百貨店が競いながら進出した「津田沼戦争」時代にオープンし、ダイエーや高島屋、丸井が閉店した後も生き残り、街を代表する商業施設として存在感を示していた。

2018年11月時点の津田沼駅前(PHOTO:彩恵 / PIXTA)
だが時代の潮流に逆らえず今年2月に閉店。そのため現在の駅周辺はやや寂れた印象がある。
北口側は駅前ロータリーを渡るペデストリアンデッキが整備され、オフィスや飲食店が入居する飾り気のない中層ビルが並んでいるだけだ。
とはいえ津田沼駅と新津田沼駅間の「ぶらり東通り」は路線の乗り換え客が行き来し、一定の活気を保っている。
そして新津田沼駅には駅を挟み込む形でイトーヨーカドーとイオンモールが隣接している。
狭く感じる北口側と違って南口側は広々としている。出口の目の前に駅前広場と津田沼公園があるためだ。
南東側には千葉工業大学の津田沼キャンパスがあり、西側には低層から中層のビルが並ぶ。

PHOTO:sunny / PIXTA
そして津田沼公園の南側には「モリシア津田沼」がある。複合商業施設である同施設の低層階はショッピングモールとなっており、11階までの高層階レストランやオフィスなどが入居する。
敷地面積約1万6700平米、4階以上で2棟に分かれる構造となっているため、かなりの存在感を示している。駅から見てモリシアの後ろには地上44階建て・総戸数759戸のタワマン「津田沼ザ・タワー」がそびえる。
パルコ跡地にマンション建設か
現在、北口と南口の両側で再開発計画が進められている。
まずは北口について見てみよう。
公式な計画内容は公表されておらず詳細は不明だが、報道によると津田沼パルコの2館のうち駅側に面するA館を三井不動産レジデンシャルが既に取得したようだ。
現在は解体工事が進められ、来年4月に完了する予定となっている。
解体後にどのようなビルが建設されるかは推測の域を出ないが、三井不動産レジデンシャルがデベロッパーを務めていることからマンションが建設されることは間違いないだろう。
同社は数多くの大規模タワマンを建設してきた。
A館の敷地面積は2793平米であり、規模の近いものとしては野村不動産が手掛けた同2655平米の「プラウドタワー金町」があげられる。
プラウドタワー金町は建設面積1835平米、地上21階建て・190戸の高層マンションだ。
面積的に同程度のマンションが建設され、低層階はペデストリアンデッキと直結した商業施設となるのではないだろうか。
南口には地上50階建ての巨大タワマンが建設
北口側に対して南口の再開発計画「津田沼駅南口地区第一種市街地再開発事業」はかなり大規模だ。
施工予定者は野村不動産となっており、12月3日に習志野市が現時点での計画内容を公表したばかりである。
対象は現在の津田沼公園とモリシア津田沼で、面積は約3.5ヘクタールにも及ぶ。
まず、対象地区の南東端には50階建ての超高層タワマンが建設されるようだ。
そしてタワマン以外の部分は地上4階建ての複合施設棟が建設され、現在のモリシア津田沼のようなショッピングモールになるとみられる。
複合施設棟の駅側に面する4000平米の5階部分は屋上広場として整備され、南側には8階建てのオフィス棟と9階建ての文化ホールの2棟が建設される予定となっている。
ちなみに地階には地下駐車場が入る。
現在、駅から津田沼公園の間はロータリーを跨ぐ形でペデストリアンデッキで結ばれているが、計画によると同部分はさらに拡張され、約2500平米の2階デッキとなるようだ。
新しい商業施設は駅とのアクセス性に優れ、乗降客にとって寄ってみたくなるモールとなるだろう。
スケジュールに関しては都市計画の決定が来年10月、事業完了が2032年の目標となっており、完成はかなり先である。
商業から機能重視の街へ
津田沼は現在、大型商業施設がひしめいていた面影はなく、県民の間では廃れてしまった街という印象がある。
だが北口と南口の両側で計画されている再開発事業は街の雰囲気を変えることになるはずだ。
北口のパルコに変わるマンションと南口の超高層マンションは住宅の街という印象を与える。
そして津田沼駅から離れた周辺一帯は住宅街となっており、モリシアに代わる商業施設は住民にとって欠かせない買い物の場となるだろう。
今回の再開発事業は繁華街としての機能を失った津田沼を機能重視の街として再生させる事業といえる。その利便性が認められればさらなるマンション開発が進むかもしれない。
(山口伸/楽待新聞編集部)
山口 伸
経済・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。街歩きが趣味で駅周辺の商業施設や開発状況を調べている。
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