絶対仕事辞めるマンさんが札束に見立てた段ボール(引用元:@MaqwgNaJKDOnxGb)

あるときはマヨネーズ、またあるときはパンの耳で数日間をしのぐ…。そんなドケチ料理のポストがSNSで話題を呼んだ、「絶対仕事辞めるマン」さん。

資産を貯めてブラック企業を辞めるために、20年ものあいだ壮絶な節約生活を送ってきた。そんな絶対仕事辞めるマンさんが今年1月、ついに目標の「資産1億円」を達成したという。

絶対仕事辞めるマンさんは、20年の節約生活でいったい何を得ることができたのか? 1億円達成の心境と、今後の展望について語ってもらった。

【関連記事】FIRE目指す45歳会社員、20年で1億円貯めた「壮絶すぎる節約生活」

■絶対仕事辞めるマンさんの資産の内訳

 【安全資産】

・現金、IPO資金など 約8340万円
・金券、ポイント類 100万円相当

【リスク性資産】

・株 約1525万円
・米国債 約18万円
・外貨(米ドル) 約23万円
・暗号資産 約29万円

【合計】

1億35万6882円

(※2024年1月25日時点)

クリスマスも贅沢は無し、変わらない節約生活

―資産1億円を達成して、今の率直なお気持ちはいかがですか

月並みな言葉ですけど、めちゃくちゃ嬉しいです! 肩の荷が下りたような気持ちですね。ここを目指して20年もがんばってきたので、本当に1億円を達成したんだなと感動しています。

―前回の取材から半年が経過していますが、どのように過ごしていたのでしょうか

相変わらずの節約生活でしたね。食事は安いときに買いだめして、納豆や卵や豆腐が主という感じです。昼は株主優待券で食べられるお店を走り回っていました。

これまでと何も変わらない生活で淡々と走り抜けて、ようやく目標を達成できました。

―この半年の間にはクリスマスなどもありましたが、奮発することもなかったのでしょうか

特別な支出はなかったです。ただ、せっかくなので何かクリスマスらしいことはしたくて、ケーキの代わりに冷ややっこに花火を立ててクリスマスのお祝いをしました。

その時の様子を撮影してXにも投稿しているんですが、すごく寂しい図が撮れましたよ(笑)。

―これまで、さまざまなメディアにも登場していたかと思いますが、何か影響はありましたか

そうですね。いくつかのニュース記事や全国ネットのテレビなんかにもいくつか出演したんですが、それによって爆発的にXのフォロワーが増える…ということはありませんでした。時間をかけて毎日じわじわとフォロワーが増えていった、という感じです。

―現在のXのフォロワーは5万7000人を超えていますね

これだけ増えると、けっこう緊張感もあります。よくよく考えてみると、東京ドーム満員が5万5000人なんですよ。満員の東京ドームのど真ん中でマイクに向かって「会社行きたくねー」とか「今日何食べました」とか言っているようなものなんですよね。

そんなことしていいのか、と時々思ったりもするんですが、これだけ多くの人に見ていただけるのはありがたいなと思いながら日々投稿をしています。

PHOTO : jessie / PIXTA

自分の投稿を見てたくさんの人が楽しいと思ってくれるなら、少しは人に貢献できたことになるのかなと。フォロワーが多いと、どうしても影響力が大きくなるという部分はあるかと思いますが、それを悪用したり嫌な思いをさせたりはしないように気をつけたいと思っています。

―有名になったことで、何か悪影響もあったのでしょうか

私の偽アカウントみたいなものがけっこう出てきていたようで、それは嫌でしたね。一時期は20人くらい発生していたみたいです。私がXに投稿した直後、リプライに同じアイコン・名前のアカウントで宣伝を貼られたりして困ることがあります。

こういうのって本人から通報すると、身分証明書を出すなどややこしい手順が必要らしいです。第三者が通報するとやり取りが簡単になるそうなので、偽アカウントを見つけたら通報してほしいです。

私は怪しいリンクを貼って宣伝したりしないので、見かけても騙されないでくださいね。

苦節20年で目標達成、一種の寂しさも

ー20年間の歩みを振り返って、いかがですか

これまでの資産の推移を表したグラフが以下のものですが、赤線が当初の計画です。節約を始めた2003年当初は、このラインに沿って5000万円まで貯めて仕事を辞めようと思っていました。

絶対仕事辞めるマンさんの資産の推移グラフ(編集部作成)

青線が実際の数値で、30歳くらいまでは計画より前倒しで貯められていたんです。その後急に角度が緩くなっているのは、リーマンショックが起きたタイミングですね。これがなければ、もっと早い段階で1億円に到達していたかもしれません。

それでも45歳の現時点、目標ラインの1億円を達成したということで、感無量です。ただ、これは目標に到達する少し前から感じていましたが、いざ目標に到達したとなると寂しい気持ちもありますね。

ーお気持ちについて詳しく聞かせてください

私はこれまで節約・貯金にものすごく特化して突っ走ってきたので、アスリートに近い精神状態にあったと思うんですよ。アスリートとして高校球児を例に考えると、小さいころから甲子園を目指して、他の全てを捨てて人生を野球につぎ込む人もいますよね。

それでいざ甲子園での決勝に進んだとして、最後の最後、9回裏のあたりで「これが終わったら引退か」という寂しい気持ちが湧くと思うんです。めちゃくちゃ勝ちたいけど終わるのは寂しい、みたいな。

私のここ最近の気持ちはそれに近かったです。全力で1億円を目指すんだけど、目前になったら「これが終わったらどうしようかな」という気持ちになっていました。

―1億円到達を周囲に伝えたい気持ちはありますか

Xではすぐにでも報告したいですが、リアルな知り合いには絶対言わないと思います。

言うつもりがないですし、そもそも言ったところで信じてもらえないかもしれませんね。普段の私の行動を知っている人からすれば、「お前みたいな貧乏くさい奴が1億円なんか持っているわけないだろう」みたいな。

職場の人にも言うつもりはないです。もし辞める時に揉めるようなことがあれば、「俺1億円持ってるから」なんて言ってしまうかもしれませんが、平和に終われば隠したまま引退します。

独身で節約している貧乏くさい奴、というイメージを持たれていると思いますが、そのイメージのままでいこうかなと思っています。

1億円の内訳、「株」が順調に伸びた?

―1億円達成時の資産の内訳を教えてください

ざっくり見ていくと、現金など無リスクの資産が8340万円で、株があわせて1525万円ほどですね。前回取材を受けたときはたしか株が1200万円くらいだったと思うので、ここがずいぶん増えています。

それからポイントや金券類が100万円くらいで、暗号資産が29万円、外貨(米ドル)が23万円ほど、米国債が18万円ほどになっています。

―ここ最近、為替が大きく動いたり日本の株価上昇が続いたりしましたが、その影響も受けたのでしょうか

そうですね。ずっと持ち続けている株が、ここ最近かなり上がっていると思います。

1億円のうち、節約で貯めてきたお金が大半を占めていますが、2000万~3000万円くらいは節約ではなく投資などで増やしてきたという感覚があります。

PHOTO : Graphs / PIXTA

―さまざまな投資をする中で、自分に一番合っていると感じたものはありましたか

私は頻繁な売買をするような投資は全く得意ではないので、長期保有で利益を出す投資が向いていたなと思います。

長期で持っていた株ですごく利益が出ているんです。あとは、コロナの時期に底値まで下がった株を買っていたんですが、その後伸びたので良いタイミングでの投資だったなと思っています。

不動産投資については、前回取材を受けたときから考え方は変わっていなくて、良い物件があれば欲しいなという気持ちがあります。今は不動産投資には手を出していませんが、高い利回りで安定して稼げるような物件があれば始めるかもしれません。

いま欲しいものは「ニトリの枕」

―1億円が貯まった今、何か買いたいものなどはあるのでしょうか

過去にXのポストで「1億円貯まったら欲しいものメモ」というものを投稿したんですが、とりあえずいくつかすぐに買いたいものがあります。

まず、ニトリに行って枕を買いたいです。今も枕はあるんですが、なんというか、おぞましい状態になってから1年くらい経っていて…(笑)。1億円貯まったらすぐに買おうと思っていました。

ものすごく良い低反発枕を買おうというつもりではないので、ニトリで5番目くらいに高いくらいのものが欲しいです。あとは、パジャマも良いものを買いたいですね。

それと、目が細かめのザルが欲しいです。以前株の優待でにゅう麵をたくさんいただいたんですが、ザルを持っていなくて水切りができないんです。調理できないので、乾麺のまま部屋に放置してあります。

ひとまずこの辺りのこまごましたものは、今日にでも買いたいですね。

―今後について、仕事はすぐにやめるのでしょうか

気持ちの上では今日すぐに辞めたいくらいですが、やっぱり私も組織の歯車ではあるので、すぐには辞められません。歯車といえど1ついきなり欠けるとあらゆるところに影響が出てしまいますから。

それと、退職金は欲しいんですよね。会社からの早期退職の募集に合わせて辞めることで、退職金をもらうことを狙っています。ただ、早期退職の募集はいつもやっているわけではないので、募集が出るのを待っています。

もう本当に早くリストラしてくれ、と思っているんですが、しばらくは働き続けることになりますね。

―パワハラなどがひどい職場だと聞きましたが、今も変わらないのでしょうか

そうですね。実はこの半年で少し昇進したんですが、それでも全く楽しくない職場ということに変わりはありません。パワハラがひどかった人はここ最近はなぜか大人しくはなっているんですが…。

この仕事を楽しむのは絶対に無理なので、タイミングを見て辞めることは決めています。

「結婚かFIREか」2択を迫られ苦悩

―今は独身ということでしたが、結婚などは考えていないのでしょうか

結婚のタイミングがこれまでになかったわけではなく、30代後半のときに数年付き合っている彼女がいたんですよ。その人には仕事を辞めたいから節約している、ということは一切伝えておらず、向こうからしたら「貧乏な彼氏」という感じだったと思います。

そんな折に、年齢もあってやっぱり心配になったのか、「結婚する気はあるのか」と聞かれました。結婚するつもりでいたのでその気はあるよと言いつつ、仕事をいつか辞めるつもりということをそのタイミングで伝えました。

「実は今4000万円くらい貯金があって、45歳で8000万円くらいにはなる見通しだから、それを運用していけば1カ月に20~30万くらいは使えて充分やっていけるよ」と説明したんです。

PHOTO : polkadot / PIXTA

―彼女の反応はどうだったのでしょうか

「無職ってこと? 何それ!」という感じの反応をされてしまいました。いやいや、無職といってもただの無職じゃなくて、FIREっていうのがあって…と説明したんですが、それはダメでしょというような反応で。

とりあえずもう少し考えるか、とその場は収まったんですが、1カ月後くらいに彼女から電話がかかってきました。そこで「無職はやっぱり嫌。結局私と結婚したいのか、FIREっていうのをしたいのか、どっちを選ぶの」と迫られたんです。

正直、結婚してFIREできなくなるというのも別に良いのかな、という気持ちはありました。それでも既に15年ほど節約生活を頑張っていたので、ここまできてやっぱり諦められないなと…。長考の結果、「FIREしたい」と伝えました。

そうしたら「あ、じゃあもう無理」という感じで別れることになり、今に至ります。

―今後もしお付き合いするとしたら、どのような相手が良いですか

やっぱり誰かとお付き合いするなら、「FIRE前提」が良いですね。結婚前提ではなく、FIRE前提です。

FIREして私が家で1日中ゴロゴロしているとか、何カ月かちょっと旅行してくるね、と突発的に出かけるとか、そういうのを許してくれる人が良いです。旅行は一緒に行ってくれるというのでも良いですが、やっぱり1人で行くのも許してくれる人が良いなと思っています。

「国士無双」の人生

―メディアに取り上げられる中で、「そんな人生で本当に幸せなのか」というコメントも見られました

幸せなのかと言われると、一周回って幸せになっていると思います。というのも、私のこの生き方が幸せかどうかを疑問に思う人というのは、「節約=苦痛、支出=楽しい」という考え方が前提にあると思うんです。

ただ、私は節約自体を楽しんでいる部分があります。苦痛だと思いながら節約するのではなく、楽しいと思いながらそれができるのであれば、それは幸せと言えるんじゃないでしょうか。

人生は配られたカードで勝負するしかない、というような格言がありますが、その通りだなとすごく感じています。私は生まれも良くなければ運も才能も大した頭もない、屑カードばかり配られていました。

だからもう頑張るしかない人生だったんですが、結果的に良い形で上がれたんじゃないかと思います。麻雀でいえば「国士無双」です。

PHOTO : Rocky / PIXTA

―どういうことでしょうか

麻雀にたとえると、私は一九字牌ばかりの人生だったんですよ。配られる牌がひどすぎて、でもどうにかやるしかないという状態でした。

人生が順風満帆な人って、きっと「三色同順」とかの役でサクサク上がっていきますよね。私はそうはいきませんでした。だから手元にある牌で何とかしようと必死に1億円貯金を目指してきたんです。

それで目標をいざ達成したときに「あれ、これって国士無双じゃん」となりました。ひどい牌ばかり配られたと思っていたんですが、結果的にはいつの間にか最強の役ができていました。

―20年にわたる節約生活の結果、何を得られたと考えていますか

今回1億円貯めるという目標を達成したとき、私はいったい「何」になったんだろう? と考えたんですが、たぶん「本物の貧乏人」になったんじゃないかと思っています。

私は今回1億円を貯めて、一般的には一応「お金持ち」と言える部類にはなったのかなと思います。ですが、「本物のお金持ち」というのは生まれながらにお金を持っていて余裕がある人です。

質素な節約生活という茨の道を進んで、ようやく1億円を貯めることができた私は、本物のお金持ちとは似ても似つきません。

一方で私は、この20年間で「貧乏」そのものを楽しめるようになりました。偽物の貧乏人だったら、貧乏な生活に耐えきれませんよね。だからきっと私は「本物の貧乏人」になったんじゃないか…そういう考えです。

絶対仕事辞めるマンさんが節約生活中にダンボールで作った1億円の偽札束。「絶対に全部本物に変えるんだ」と泣きながら節約貯金を続けた(引用元:@MaqwgNaJKDOnxGb)

―「仕事を辞めたい」という人に伝えたいことはありますか

私は氷河期世代ということもあって、会社から逃げようと思っても逃げ道がありませんでした。でも今の時代、特に若い人なんかはいくらでも逃げ道があると思います。

私が言うのもなんですが、仕事を辞めたい人はまず転職を考えるのが良いと思います。というのも、お金を貯めてFIREするのはすごく大変なことで、人生の方向性そのものが大きく変わってしまうんですね。

今はそんな過激な節約をしなくても人生を良くする方法というのはいくらでもあると思うので、私の轍を踏まないようにされると良いんじゃないでしょうか。

それでもどうしても辞めたいという場合は、やはりストイックに貯金をするのが良いです。

5000万円や1億円というのは、途方もなく遠い目標に思えるかもしれません。やっぱり最初の1000万円を貯めるまではすごくつらいですが、とにかくそこを乗り切れば次に向かって進んでいけると思います。

もし節約の道に進みたい人がいらっしゃったら、ぜひご相談ください。

○取材協力
絶対仕事辞めるマンさん(X

(楽待新聞編集部)