(前編から続く)
身内の相次ぐ死によって、想定外に「二代目大家」となってしまったという長田穣さん。
今でこそ山梨県内に4棟34室を所有し、約1500万円の家賃収入を得ている大家だが、相続した物件は赤字経営が慢性化し、月々20万円超の手出しがある状態だった。
それでも四苦八苦しながら数年かけて満室に導き黒字を達成するものの、わずか数年で再び赤字に転落。
そこで長田さんは、経営戦略の抜本的な見直しを迫られる。
いったい、どのような戦略を打ち立て、どこに勝機を見出したのか。
相場より高い家賃、急に入居がつかなくなり
「もともと2014年に満室を達成し、黒字経営を実現させたときは、基本的には表層だけのリフォームを行っていました。アクセントクロスを取り入れて、ぱっと見の印象が良くなるように部屋を整えていったのです」

当時はアクセントクロスを貼るなどのリフォームを施していた長田さん。「今なら選ばない」という個性的な柄を貼ったことも
このやり方でリフォームをすると、入居募集後すぐに入居希望者が現れていた。このことで、長田さん自身も「このやり方は間違っていない」と考えるようになっていたという。
ところが2017年、退去が出た部屋で募集をかけても、繁忙期にもかかわらず、ほとんど反響がなかった。これによって、赤字経営に逆戻りしてしまう。
「当時、アパートは築24年になっていました。ですが、これまで家賃の値下げは1回しか行っておらず、相場よりも1万円くらい高い家賃設定のままだったんです。簡単に言うと、この家賃を維持したまま、表層だけのリフォームではお客さんがつかなくなっていたんだと思います」
相場の家賃が5万円台半ばなのに対して、長田さんの物件は6万~7万円台に設定していた。
物件の各居室には和室もあり、「古い」イメージの和室があるにも関わらず、家賃が高いことで、敬遠されたのではないかと長田さんは分析する。管理会社からも「家賃相場のかい離が原因だ」と言われた。
だが、家賃を下げるという選択肢は長田さんの頭にはなかった。
「値下げによって客付けできたとしても、収益性が低下してしまっては元も子もありません。入居者の属性が悪くなることでトラブル発生のリスクも高まります。そもそも、値下げしても確実に埋まるかはわからないのです」
実際、長田さんは所有物件のあるエリアの競合物件を賃貸サイトで検索し、募集がかかっている物件を1件1件訪ね歩いた。
外観などの雰囲気や、賃貸サイトに掲載された写真から、「いま募集がかかっている物件は、ほとんどが古く品質がそこまで高くないものばかり。きちんとリノベーションし、差別化すれば、絶対に入居がつく、と確信しました」。
ポイントは「キッチン」と「和室」
そこで、今の家賃設定のまま、入居者に選ばれる物件を作ろうと考えた。「入居者に選ばれる」物件のヒントをくれたのは、通っていた美容室の美容師だったという。
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