PHOTO:gandhi/PIXTA

海外投資家にとって、日本の不動産は魅力的に映るようだ。

収益物件を扱う不動産会社からは、「外国人からの物件の問い合わせ数が激増している」という声が上がっている。

また、日本の主要不動産(10億円以上で取引される不動産)への投資額のうち、海外投資家による割合は約4分の1にのぼるというデータ(調査:不動産サービス会社CBRE)もある。

なぜ、海外投資家が日本の不動産に投資しているのか? 外国人から見た日本の不動産の魅力とは? 日本の不動産を購入した外国人や、外国人向けに不動産を仲介する会社などに話を聞いた。

各地で外国人の不動産購入が増加

都内にあるインバウンド系の不動産仲介会社、「株式会社YAK」。営業一部二課、売買担当の田辺さんは、「2023年は前年に比べ、物件の問い合わせ数が2倍ほどに増えました」と語る。

中国人から見て「今は日本の物件が3割引くらいになっている感覚だと思います」という株式会社YAK営業一部二課の田辺さん

「特に中国人の方からの問い合わせが多いです。中国の不動産は購入しても所有権を持てませんが、日本の不動産はほとんどの場合、所有権が保証されるので、そこが大きな魅力なのでしょう」

実際、どのような物件が外国人に買われているのか。株式会社YAKが売り出している物件、「パークコート麻布十番ザ・タワー」(36階建て)の1室を見ると、3億に近い値がつけられている。

東京タワーが部屋から見える立地で、最上階の部屋の価格は4億円を超えるという。売買の担当者は「特に麻布・六本木は高級住宅街のイメージがあり、海外の方から人気です」と語った。

外国人の不動産購入サポートの事業を営むZiv Nakajima Maganさん。今後10~15年にわたって、日本の不動産を購入する外国人は間違いなく増えると語る

イスラエル出身で、現在日本に居住しているZiv Nakajima Maganさんも、外国人による日本の不動産購入の増加を感じているという。

Zivさんは外国人の不動産購入や管理をサポートする事業を営みながら、自身も日本に物件を所有し賃貸業を行っている。

「今、空き家がますます人気を集めています。外国のメディアには、日本で購入可能な安価な住宅についての記事が沢山あるんです。購入した物件の活用法と成功事例についても多くのメディアで取り上げられています」(Zivさん)

日本の空き家を購入し、民泊や旅館として収益を上げる外国人もいるという。

またZivさんの事業の顧客のうち、約半数がシンガポールとオーストラリアから来る人であり、その他はアメリカから来る人が多いそうだ。

「地政学的な変動があるたびに、人々は安全で安定した環境に資金を向けようとします。そのようなとき、日本は投資先として関心をひきつけるのです」(Zivさん)

リゾート地や湾岸エリアで人気高まる

かつて外国人の「爆買い」が話題になった北海道のリゾート地も、根強い人気が続いている。北海道小樽市の不動産会社「日本信達」代表の石井秀幸さんは、物件の契約件数が数年前に比べて劇的に増加していると語る。

アジアの富裕層向けに物件販売を行う、日本信達の石井秀幸さん

「昨年の契約件数は、コロナが流行った2年前に比べて10倍ほどになっていました。2024年はもっと人気になるかもしれません。どれだけ増加するかは未知数です」(石井さん)

民泊やコンドミニアムのほか、一般の収益物件も人気だという。特にインバウンド需要が戻って観光業が伸びたことで、ホテルなどでの働き手をターゲットにした単身用物件で人気が高まっている。

また、外国人は北海道の美しい自然や水産物などの資源にも、「資産」として価値を見出しているのだという。

「北海道は水、空気、食べ物など環境が資産だと思われています。自然のあるところに憧れて物件を買いたがる外国人は多いです。特にニセコ、小樽、富良野など、空港から数時間で行ける範囲が人気ですね」(石井さん)

湾岸エリアでも、外国人の人気が高まっている。湾岸エリア物件の仲介を行う不動産コンサルタントの「ふじふじ太」さんは、最近の湾岸マンションの売れ行きが「凄まじい」と語る。

眺望の良い物件が外国人に人気だと言う不動産コンサルタントのふじふじ太さん

「異次元というか、驚くべき市況ですね。物件がどんどん売れて、2023年12月時点では半年の間に坪単価が7%くらい上昇しています。湾岸マンションの市場では、非常に好景気が続いていると言えます」(ふじふじ太さん)

昨年12月時点で、直近3カ月の成約数は過去最高となり、タワーマンションの在庫数は半年前から約10%ほど減少。売り出し数は増えているものの、売り出された物件が全て売れ、在庫が余る状況ではないのだという。

「物件を購入して賃貸に出すというよりは、別荘のような感覚で購入しておきたいという人が多いです。また、内見依頼してくる方の半分以上が中国人という印象があります」(ふじふじ太さん)

なぜ、湾岸エリアのマンションが外国人に人気なのか。その理由については「街の綺麗さ、景色などが人気のようです」と語る。

「眺望が良い部屋、高層階の部屋が特に買われています。海沿いや運河沿いのマンションは好まれますし、東京タワーやレインボーブリッジが見えるなど、特徴が目立つ部屋は相場を度外視して買っている方が多い印象です」(ふじふじ太さん)

今後、湾岸エリアのマンション価格がどれくらい上昇していくかについては、「予想は非常に難しい」と言う。

「とにかく『価格はまだ上がるだろう』としか言えませんね。もし日本の国際競争力がニューヨークやパリなど世界の主要都市と同じくらい上がれば、その都市の物件と同じ水準、50平米で2億~3億円ほどになる可能性もあるかもしれません」(ふじふじ太さん)

中国人にとって魅力的な日本の不動産

不動産関係者からは、外国人の中でも特に「中国人による日本の不動産購入が増加している」との声が聞かれた。

なぜ今、中国人が日本の不動産を購入しているのだろうか? 中国経済を専門に研究するジャーナリストの高口康太氏に話を聞いた。

高口氏は中国人の「日本の不動産購入」について、ブームそのものは2010年代の半ばから広がっていたと語る。

PHOTO:xiaosan/PIXTA

「当時も円安に大きく振れた時期がありましたが、相対的に見て日本の不動産は非常に割安感があるんですね。価格としての割安感に限らず、賃貸利回りで見た場合の収益率が日本の不動産は他国と比べてもかなり高いので、そこが中国の方にとっては魅力なのではないかと思います」

日本が経済の長い低迷から脱却する気配を見せつつあり、新築物件の「値上がり益」を期待できる状況になってきたことも、中国人を日本の不動産へ向かわせているのではないかという高口氏。

元来の「賃貸利回りを目的とした中古物件購入」と、新たな「値上がり益を目的とした新築物件購入」の2つの手法が並存しており、中国よりも魅力のある投資先として見られているという。

そのほか、日本が投資先として選ばれる対象となった理由について「日本には勢いと安心感があるからではないか」と語る。

「他の国だと、不動産の購入や運用でトラブルが起きたり、契約が守られなかったり、ひどい場合は詐欺にあったりすることが多いです。日本でもそういったことはゼロではありませんが、他国よりは比較的安心できる場所だというのが、日本の不動産を買う魅力の1つになっていると思います」

さらに日本国内には日本国籍を取得した中国系日本人を含め、中国人が100万人ほど居る中で、中国人が暮らすための法的サービスなどのエコシステムが充実しているという。

そのため、中国在住で日本の不動産を買う人だけではなく、自身が日本に住みながら日本の不動産に投資する人も多いそうだ。

中国に広がる悲観的な感情

中国の経済は、今どのような状況になっているのか。中国の2023年の経済成長率は5.2%であり、政府の目標だった5%は達成できているが、「実際の数字を見ると、不動産は非常に良くない状況が続いています」と高口氏は指摘する。

「コロナが流行り始めた2020年、中国は金融緩和などの対策を取り、マネーが不動産市場に回って不動産バブルのような状況になりました。そこで、不動産デベロッパーに対して引き締めの策が取られ、中国の不動産事業者が経営不振に陥る事態となったんです」

そのため今後の物件の値上がりが期待できなくなり、不動産価格が下落するという流れが生じているという。中国はGDPの30%ほどが不動産関連と言われており、国を支える一大事業である不動産が弱っているのは「非常に大きなダメージ」だという。

中国経済・企業、中国企業の日本進出と在日中国人社会をテーマに扱うジャーナリストの高口氏

そんな状況の中、中国に対して悲観的な感情を持つ中国人が増えてきていることも問題だと語る高口氏。

「中国経済がこれからどんどん落ち込むんじゃないかと考えている中国人が多く、民間投資家の間には非常にネガティブな感情が広がっています。そうして皆が投資や消費を控えるようになると、さらに経済を落ち込ませる要因になりますから、非常に危機的な状況と言えるかと思います」

経済への不信感が募る中、中国の不動産そのものへの信頼感も揺らいでいるのではないかという。

「中国の不動産はこれまで基本的に右肩上がりで発展してきたため、中国では一度家を買ってしまえば後は勝手に値段が上がって人生安泰、というのが1つの分かりやすいルートでした。その信念のようなものが崩れていくと、この先中国の不動産が大きな調整を迫られ、大変な問題になるかと思います」

現時点ではまだそこまでの問題にはなっていないが、中国政府が経済の信頼感を取り戻すような策を打てるかどうかで、今後の中国不動産の先行きが変わってきそうだと語った。

政府から規制が入る可能性も

外国人が日本の不動産を購入する動きは、今後過熱していくのか。

高口氏は、「日本の不動産購入は増えていくと思います」と述べつつ、それによる懸念点にも言及。

「物件に住まず賃貸にも出さず、とりあえずたくさん購入して値上がりを待つために寝かせておく、という中国的な投資方法が広がる可能性もあるかと思います。価格の不安定要因に繋がるため、日本にとってのリスク要因になりかねません」

PHOTO:freeangle/PIXTA

これまでにも、オーストラリアやカナダなど、さまざまな国で中国人が不動産を購入するブームが起きている。中には物件を買えない地元住民からの反発により、中国人の不動産購入に規制がかけられる例もあったと言う高口氏。

「外国人が不動産を買い占めるといった、国の根幹産業を揺るがすような動きは、どこの国でも反発が起こります。物件や土地の購入者と連絡が取れない、税金を払ってくれない、といったトラブルも必ず起こりますし、そうなれば政府からの規制が入るのも自然な流れです」

そういった規制にも触れつつ、高口氏は「上手くバランスを取れれば良いのですが」と語る。

「海外の方が日本に投資してくれること自体は、基本的にメリットだと私は思っているんですよ。難しいのですが、海外からの投資はなるべく引き入れてもらいつつ、起こりえる問題については事態が大きくなる前に早め早めの対処をする、というのが理想ですね」

不動産会社の関係者などからは、外国人による日本の不動産購入は今後しばらく過熱していくのではないかと予想されている。

外国人の不動産購入によって日本の投資家にも影響が出てくるのか、今後の動向に注目したい。

(楽待新聞編集部)