PHOTO:Princess Anmitsu / PIXTA

元日に起きた能登半島地震では、古い木造住宅が多数倒壊した。

これを受け、東京都練馬区は木造住宅密集地域にある住宅の耐震化費用の助成を拡大する方針を示した。耐震診断費用を全額助成するなど、物件所有者の負担が小さくなる。

木造住宅密集地域、いわゆる「木密地域(もくみつちいき)」とは、震災時に延焼被害などの恐れのある老朽木造住宅が密集している地域のこと。

全国には危険な木密地域が少なくない。これまでも対策が進められてきたが、この度の震災を受けて、自治体による防災対策は加速していくのだろうか。

先陣を切ったとも言える、練馬区の助成拡充の内容や影響について見ていこう。

さまざまな危険をはらむ木密地域

練馬区は、東京都23区の北西側に位置する住宅都市で、人口はおよそ74万人。

区の一部には、古い木造住宅が密集し、災害時に火災や倒壊の危険性がある「木密地域」が今も残されており、耐震化が課題となっている。

さらに、道路が狭い場所については、災害時の早急な避難の妨げとなる可能性や、消防車が入りづらいことも課題として指摘されてきた。

区はこれまで、防災上早急な対応が必要として、木密地域における耐震化などの対策を進めてきた。

しかし、住民の意向、高齢化など複雑な要素が絡み、一朝一夕に進めることは難しく、解消にはまだ至っていない。

阪神淡路大震災で倒壊した家屋(PHOTO:カワグチツトム / PIXTA)

そのような中で起きた能登半島地震。木密地域にある築年数の古い木造家屋が多数倒壊した。石川県内の住宅被害は一部破損から全壊まで4万3000棟超となり、旧耐震基準で建てられた住宅も多くあった。

今回、練馬区は能登半島地震の被害状況を鑑み、旧耐震基準の住宅が多く存在する木密地域の耐震助成の大幅拡充を決定。

2020年より「防災まちづくり事業実施地区」に指定されている区域の、耐震改修工事などを推進する。

耐震診断は全額助成、上限額も引き上げ

練馬区が「防災まちづくり事業実施地区」に指定しているのは、西武鉄道池袋線の「富士見台駅」の北側や「桜台駅」の北東部など、区内の5つの地域。

これらの地域にある住宅のうち、旧耐震基準で建てられた約1100棟が助成拡充の対象となる。議会の承認を経て、2024年4月から実施される予定だ。

耐震診断費用については、現行の助成率が4分の3であるところ、全額助成(上限20万円)とする。

耐震改修工事費の助成率は、これまで3分の2だったところ、4分の3に拡充し、上限額は130万円から270万円と大幅に引き上げる。

区は、2027年度末までに5地域の住宅の耐震化率を95%にまで高める目標を掲げている(現在は92.5%)。区に残る木密地域について、これまで以上に徹底的な防災対策に取り組む姿勢がうかがえる。

練馬区HPより著者作成

また、あわせて、区内の新耐震木造住宅の耐震助成の新設も行う。

対象となるのは1981年6月1日から2000年5月31日以前に建てられた建築物のうち、木造2階建て以下の在来軸組工法の住宅だ。

2000年に建築基準法が改正され、耐震基準が厳格化される前の在来軸組工法の住宅に焦点が当てられた。

耐震診断の4分の3(上限12万円)、実施設計の3分の2(上限22万円)、耐震改修工事の3分の2(上限130万円)が助成される。

能登半島地震の後、練馬区には耐震化の相談などが大幅に増えているという。区が建築士を派遣して行っている無料簡易耐震診断の申し込みも大変混み合っているといい、診断結果が報告されるまでに3カ月ほど要するようだ。

防災に関する意識が高まっていることや、首都直下地震が今後30年で70%の確率で起こるとされていることも影響しているのかもしれない。

耐震化の動き広まるか

木密地域は全国に点在している。国土交通省によると、その中でも特に危険性が高いとされる「地震時等に著しく危険な密集市街地」は、2021年3月末時点で12都府県の111地区に2219ヘクタールある。

1位は大阪府(1014ヘクタール)、2位は神奈川県(355ヘクタール)、3位は東京都(247ヘクタール)という結果だ。

能登半島地震により、人々の防災意識が高まっているのは間違いない。これを背景に、自治体が木密地域の早期解決や防災性向上に向けて、対策を強めていくことが考えられる。

木密地域の抜本的な解決は、権利関係者の多さなどから、すぐには難しいだろう。まずは、耐震化についての啓発活動や、練馬区のような耐震助成拡大の動きが広がっていくのではないだろうか。

また、木密地域に限らずとも、旧耐震基準の建物の耐震化工事への関心が高まっている。特に首都圏では、首都直下地震への備えとして、建物の安全性に思いを巡らせる人も多いだろう。

今後、耐震診断や耐震改修工事の需要はさらに拡大していくことが予想される。不動産投資においても、震災後の入居者のニーズの変化や自治体の動きを慎重に見ていく必要があるだろう。

(福本真紀/楽待新聞編集部)

福本 真紀
不動産・鉄道分野のフリーライター。鉄道会社に10年以上勤務していた経験を活かし、都市開発の最新事情やビジネス関連の記事を執筆する。趣味は鉄道巡り、街歩き。埼玉県出身。