不動産を小口化して販売する「不動産小口化商品」(以下、小口化商品)が増えている。事業者が資金を集めて不動産を取得し、賃料収入などを分配金として還元する仕組みだ。

2017年以降、「不動産特定共同事業法(不特法)」が改正されて事業者の参入ハードルが下がったことから、ここ数年、さまざまな商品が登場するようになった。

そうした中、現在16年目を迎えている老舗商品が、「みんなで大家さん」シリーズだ。テレビCMやWeb広告などで目にしたことがある人もいるだろう。

最近、この「みんなで大家さん」シリーズについて、YouTubeやインターネット掲示板などで、運営状況を危ぶむ声が上がっている。なぜ、このような声が上がっているのか? 実際の運営状況はどうなっているのか? 調査を進めていくと、いくつかの疑問点が浮かび上がってきた。

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2000億円以上を集めた「みんなで大家さん」

「みんなで大家さん」は、2007年9月にスタートした不動産小口化商品。1口100万円から出資でき、想定利回りは7%ほどだ。

2カ月に1度分配金の支払いがあり、運用が終わる3~5年後には元本が償還される仕組み。商品紹介のパンフレットには、過去16年間一度も元本評価割れを起こしたことがなく、想定利回りも下回ったことがない、などと謳われている。

現在まで、ホテルやテナントビル、集合住宅のほか、テーマパークや、バナナの加工流通施設などを対象とした商品を展開してきた。のべ3万7000人の出資者から、累計で2000億円を超える資金を集めている。

みんなで大家さんのパンフレット。現在の調達額は2000億円を超えている

みんなで大家さんシリーズを展開しているのは、「共生バンク株式会社」およびそのグループ会社。ファンドの組成や不動産の取得、運営、管理などの核となる事業は、共生バンクのグループ会社「都市綜研インベストファンド」が担っている。

親会社である共生バンクの代表を務めるのは、創業者の栁瀨健一氏。「共生主義・ともいき主義」を掲げ、「精神、心、魂の価値追求を第一とする『共生』の実践」を経営理念としている(栁瀨氏については後述)。

共生バンクのグループ会社の一部(共生バンクWebサイトより)

主力の「シリーズ成田」はどんな商品?

2024年3月現在、同社で販売しているのは「シリーズ成田」というファンドの「みんなで大家さん 成田18号」(以下、成田18号)という商品だ。

千葉県成田市の山林などが投資対象で、2021年からこれまで複数回に分けて販売、今回が18回目(18号)ということになる。そして現在、冒頭で触れたネット掲示板やYouTube上で問題点が指摘されているのは、ほとんどこのシリーズ成田についてである。

みんなで大家さん成田18号のパンフレットに記載のある募集要項。なお、途中解約を希望する場合は、事業者である都市綜研インベストファンド、もしくはそれ以外の第三者に譲渡する形になり、1~3%の手数料が差し引かれる

現在募集中の「成田18号」の募集総口数は、1万5368口。1口100万円なので、完売すれば単純計算で約153億6800万円の資金が集まることになる。

「成田に2兆円の街をつくる」という触れ込み

「シリーズ成田」がネット上で問題視されている理由の1つが、投資対象の土地で行われる開発プロジェクトの内容と進捗の遅れである。

シリーズ成田は、共生バンクグループの栁瀨会長肝いりのプロジェクト、「共生(ともいき)日本ゲートウェイ成田」(以下、ゲートウェイ成田)に基づく商品だ。

成田空港の周辺にある土地を開発し、ショッピングモールや劇場、スタジアム、ホテル、国際展示場、レストランやバーを整備し、資産評価2兆円を超える「街」を目指す、としてスタートした。

栁瀨氏は同プロジェクトに並々ならぬ思い入れを持っている。2021年に出版した自身の著書『成田空港の隣に世界一の街を造る男』では、同プロジェクトについてこう記している。

栁瀬氏の著書。執筆者名は「栁瀬公孝」名義になっている


“私がこの成田の土地を購入し、また設計費や造成工事費などに使った経費は、約100億円。しかし、世界的な評価会社によって、すでにこの土地の資産評価額は約2兆円と算定されようとしている。

つまり、何もなかった土地に「街」を造ることで、200倍近くの資産価値を持つことになったのである。

「そんなことができるのか」と思われるかもしれないが、不動産の世界では珍しいことではない。たとえばアメリカのシリコンバレーは、何もない鄙びた街だった。しかし、多くのIT企業が集積することで、不動産などの資産価値が急上昇した。そのシリコンバレーが好例である。”

引用:『成田空港の隣に世界一の街を造る男』


開発対象の土地は、成田空港周辺に広がる約45.5万平米の土地だ。広さは東京ドーム約10個分に相当する。

ゲートウェイ成田プロジェクトの開発予定地。写真中央下にある建物が「ヒルトン成田」。写真右下にある道路の向こう側に、成田空港がある(出典:地理院地図Vectorの航空写真、および成田市に提出された区域図を元に編集部作成 ※写真は造成工事が始まる前のもの)

この土地を造成して開発することで、これまで成田空港を素通りしてきたインバウンド客を呼び込み、「街」をつくることで資産価値を高める、というのが栁瀨氏の考えだ。ただし、現在はその計画も縮小、コンセプトも「フードイノベーション施設」などがメインとなっており、当初から大きく変わってしまっている。

成田市に開示請求を行って入手した同プロジェクトの造成計画平面図、および建築計画図。黒塗りになっており全体像は確認できなかった

ゲートウェイ成田、造成工事の進捗

現在、工事の進捗状況はどうなっているのだろうか。

当初は2024年中の開業が予定されていたが、コロナ禍などを経て、工事完了予定時期は度々延期されてきた。現時点で発表されている計画では、2026年度末の開業が予定されている。

開発プロジェクトが動き始めてから4年近くが経過した現在の現場の状況を確認すべく、2月下旬、現地に足を運んだ。

現場は成田駅から車で10~15分程度の場所で、すぐ隣には「ヒルトン成田」や「ホテルマイステイズプレミア成田」がある。

開発予定地には、中央を二分するように市道が通っている。全体像を把握するにはこの市道に進みたいところだが、この市道は工事のために長らく封鎖されて通行ができない。

開発地の中央を走る市道は封鎖されている。民間の開発事業によって市道が長期間封鎖されている状況自体、好ましいとは言えないが…(2024年2月、編集部撮影)

仕方なくぐるりと外側を迂回しながら全景を確認する。

当日は平日の昼過ぎだったが、工事の休止期間だったこともあってか、迂回路の途中で車や人と出会うことはほとんどなかった。周辺にもほとんど建物はない。

封鎖された市道を迂回して歩く。写真右側が開発地だが、雑木林に囲まれて何も見えない(2024年2月、編集部撮影)

開発予定地の反対側を見る。山林が広がり、建物や人影はない(2024年2月、編集部撮影)

迂回路を歩くこと約30分、通行止めになっていた市道の終端にたどり着き、ようやく開発エリアの一部を見通すことができた。

開発エリアを見渡す(2024年2月、編集部撮影)

このように、今のところ建物は1つも建っていない状況だ。

ゲートウェイ成田の公式Webサイトでは、工事の進捗状況が写真や動画で定期的に公開されている。投資を考えている人は、どのような場所で、どのような工事が行われているのかぜひ確認しておいてほしい。

建物がないのに、なぜ分配金が支払えるのか?

上記の写真からも分かるように、現場にはまだ何も建っていない。建物がなければ賃料を得ることはできないはずだが、年間100億円を超える投資家への分配金はどこから支払われているのだろうか。

開発用地を見通す。奥に見える建物がヒルトン成田(2024年2月、編集部撮影)

この点に、みんなで大家さん「シリーズ成田」という商品の特殊性があるのだが、シリーズ成田で投資の対象となっているのは「土地」であり、その借主は、実は共生バンクのグループ会社である。

グループ会社間で土地が売買され、その土地に対して賃料が支払われているのである。ビルを借りるテナントや部屋を借りる入居者がいない代わりに、グループ会社が土地に賃料を支払っており、その賃料が分配金に変わっているのだ。