区分ならではの管理事例
賢明な「楽待」会員の皆様なら、もうお分かりのように、この物件の共用部管理は、非常にユニークな独特の事情があり、手間をかけずに管理を維持できる可能性が大きいのです。
区分物件の弱点は建物共用部の管理に自己裁量が効かないこと。
そのため、管理会社任せのため、コストと品質にリスクを伴う場合があることです。
しかし、この物件の1階店舗と最上階ファミリー区分を持つ、実需オーナーがお住まいの限りは、管理人住み込みレベルのハイレベルな管理を期待できることになります。
通常、管理人住み込みの場合、20万円/月以上の人権費が必要で、この物件規模ではあり得ないシステムです。
仮に、一棟物件だと仮定すれば、ここまで管理してくれるシステムを自分で構築するのは、それなりのエネルギーと時間をかけて、人脈を育てて行く必要があります。
一方、自主管理しようとすれば、よほど近所で足繁く通わなければ、このレベルの管理は維持できません。
更に、専有区分も隣の法人が18年間、バブル期の家賃相場のままで、自動更新していることから、今後の契約更新も自動的になされ、空室や家賃値下げ交渉が発生するリスクは極めて低いと推定されます。
その法人の事務担当の方とお話した際、最たる興味は、家賃のコストではなく、如何に手間なく、毎月の家賃処理ができるかにあることが分かりました。
そこで、私にオーナーチェンジする際は、開発販売会社であるA社の賃貸商品メニューである、サブリースシステム(借上家賃保証)を外してしまい、管理会社もB社さんに変えて、契約書を巻き直しました。
そして、B社さんの一番ローコストメニューである「一般管理メニュー」として頂き、家賃を直接、借主の法人から、私の銀行口座へ満額振り込む契約としました。相手が法人の場合は、自動送金の手続きをしてもらえるので、決まった日に必ず入金があり助かります。
B社さんの手数料は、毎月分からは無料。契約更新時に更新料の0.5ヶ月分です。
前オーナーさんは、A社へ毎月、家賃の15%(9,000円+消費税)を支払い、しかも更新料も全額A社取りで家賃保証としていたのです。これでは、賃貸事情から判断すれば、勿体無い話ですね。
B社さんの「一般管理システム」の場合は、滞納が発生した場合は、私が未納家賃回収に対応しなければならないのが、一番のリスクです。
しかし、上記事情を考慮すると、その可能性は極めて低いと判断しました。
万が一、そのような事態となり、私が本業多忙、その他の理由で家賃回収ができない場合は、B社さんの「家主代行メニュー」に切換えれば、取立てを依頼できます。その場合は、3,000円/月程度を手数料で毎月支払うことになりますが、私の本業、その他の活動との引き換えの価値からすれば、十分だと思います。
そして、10ヶ月が経過しましたが、毎月の入金は1日たりとも遅れたことはありません。
このように区分投資の場合、一部屋ごとに、入居者に最適な賃貸&管理システムを採用できる点も大きな特徴かと思います。
もちろん、入居者が入れ替われば、その都度、管理システムを最適なものに切換えてゆけば良いのです。管理は部屋という箱物だけによって決まるものではなく、入居者のリスクや信用度に最適なものを採用するのです。
それにより、空室や滞納リスクを最小限に抑え、その部屋のパフォーマンスを最適にできます。
管理システムはもともと、賃貸管理会社が標準商品として取り揃えているメニューなので、それを電話1本、契約書1枚で、どれを選択するか、選ぶだけです。
余談ですが、購入後すぐに、建物全体を管理しているA社から、排水管の高圧洗浄のため、専有部に立入らせて欲しいと、新オーナーである私に携帯電話が入りました。
そこで、管理をお願いしているB社さんを紹介しました。
すると、日中で入居者が勤務中でしたが、予備鍵を賃借人である、法人の事務担当の方が持っているので、すぐ隣から駆けつけて対応するので、B社が現地に来なくても良いとのこと。
まるで、専有部分管理会社B社と、入居者の間に、さらにきめ細かく管理してくれる、プラスアルファのもう1社が付いてくれているような感じです(笑)
共用部管理リスク
それでは、この物件の共用部管理リスクは何でしょうか?
それは、言うまでも無く、前述の等価交換元土地オーナーの実需者所有の1階店舗が倒産し、オーナーも最上階の持家を退去してしまう場合でしょう。
そうなると、管理組合のプロモーターと、管理費の大きな財源の両方を一挙に失うことになります。
しかし、この場合でも、次の店舗テナント、最上階のファミリー区分のオーナーまたは、実需購入者が決まれば、いわゆる「普通のマンション」のレベルになるわけです。
ファミリー区分も、店舗区分もオーナーさえ付いていれば、管理費は定額入金されますから、財源は確保されます。
管理業務運営も、管理会社が行っていますから、元地主が居なくなったとしても、管理が放棄されるわけではありません。
これらに対しての私のリスクヘッジは、「早期の資金回収と利益確定」および、「物件分散」となります。
専有部分リスク
一方、専有部分のリスクは、法人借上げの解消でしょう。
この場合は、ごく普通に募集をかければOKです。
前述の周辺環境と賃貸需要から、借り手は付くと推定されます。
計算上では、1年経過するごとに1%程度家賃を下げて募集するリスクと、年間空室期間を10%見込んであります。このパラメータは、この物件の実情から推定すると、かなり辛目の値です。以下、計算パラメータと、実際の予想を比較してみましょう。
以下、シミュレーションツールを使って試算してみます。
興味のある方は、沢孝史さんの「お宝不動産鑑定ツール」の保護機能を外して、区分物件用にご自分で使い易いよう編集し直せばよいでしょう。
計算パラメータ | 実際の予想 |
---|---|
家賃下落率 1%/年 | 実際は、自動更新のまま0%の可能性大 |
空室率 10%/年 | 実際は、法人借上継続で0%可能性大 |
専有部分修繕費 11万円/6年毎 | 実際には、借上げなので、 エアコン、給湯器故障程度 |
共用部大規模修繕臨時拠出 25万円/15年毎 |
組合財源潤沢で、実際はゼロの見込み |
この計算パラメータですと、仲介手数料、登記費用、司法書士費用、不動産取得税、固定資産税、所得税、地方税、火災保険、管理修繕積立金、管理代行手数料、賃貸募集広告費などを考慮した、手取りのキャッシュフローで、諸費用を全て含んだ投下資金を回収するまでに、13年間を要し、この時点で物件は築30年という計算になります。
仮に5年保有して売却するとすれば、その時点での手残りキャッシュフローの累積は204万円。仮に物件が減価償却分だけ値下がりすると、売値は414万円です。(こればかりは、売ってみなければ絵に描いた餅ですが・・・)
もし、法人契約が解消されて、一般入居者が入り、家賃が1%/年の割合で下落したとしても、この時点で家賃5.7万円の計算ですから、16.5%の表面利回りとなります。
(実際には、家賃は1年毎に下がるのではなく、退去&新規募集時に下げて空室を埋めることになります。つまり、この場合は5年経過後に空室となり、3,000円家賃を下げて募集するという想定です)
法人契約が継続していれば家賃は6万円ですから、表面利回17.4%の投資物件となります。
いずれにしても、築23年を考慮しても、この利回りと横浜の立地でしたら、買い手は現れるでしょう。
つまり
手残り累積キャッシュフロー204万円+売値414万円―買値470万円=148万円
が利益(売買の諸費用を考慮すると、この1割減程度でしょうか・・・)となります。
5年間で年平均約6%程度の投資だった。
ということになります。
この程度の金額なら、売却して利益確定するよりも、安定した家賃を得た方がメリットは大きいですが、あくまで試算です。
しかし、上記パラメータは最悪を想定した、非常に厳し目の値のため、実際には、おそらく8年間程度で、投下資金を全額回収できる可能性が高いと推定できます。この時点では築26年です。
その時点で売却すれば、元は取れていますので、売値が利益となります。
築26年ですので、更に、賃貸し続けても良いでしょう。
その場合は、手残りキャッシュフローが毎月、利益として積み上がって行きます。
つまり、いつ売却しても、売値と家賃の手残りで、利益確定できます。
また、10年以上賃貸し続け、家賃の手残りだけでも利益確定できます。
その後は、もし仮に、売値1円でも利益が確定しています。
建替年代を迎える前に、買値の2倍以上の手残りキャッシュフローで利益確定しているはずです。
このようにいつでも出口に出れる戦略をとることができます。
まとめ
以上は、たまたま私の一つの実例であって、この物件が良いとか、この方法を「楽待」会員様へ推薦しているわけでもございません。
一つのご参考例と考えています。
先月申し上げたエッセンスを、今月の実例に当てはめてみますと、現役サラリーマンである、私のポジションで可能な方法に特化してリスクコントロールし、それ以外は、本業や生活活動を妨げないことが、逆に自分自身のリスクコントロールになる。
と考えております。
購入時は、インサイダー情報を可能な限り集め、それを最大限活用することで、有利な売買で、リスクコントロールできる物件を手にできます。これは、自分の生活圏や地の利、人脈などを最大限活用できます。紙の投資と異なる、不動産投資の最大のメリットです。
紙の投資でインサイダー取引をやれば、法律で塀の向こう側へ落ちてしまいます(笑)
ルールが違えば、手法は全く違います。これが投資はルールの勉強と情報量が大切といわれる原点だと思います。
管理も、不動産投資の大きな裁量の一つですが、ここは、自分のポジションを考慮し、区分物件の特徴を生かすことで、裁量よりも、如何にエネルギーをとられずに運営できるかを狙います。
特に、区分所有は建物管理と、区分専有部管理、賃貸募集を完全に分離することも可能です。
これを、区分毎、最適となるように、自分が取れるリスクと注げるエネルギーとのバランスで、選択できます。
区分の特徴である、物件毎に運営システムを独立して構築できる利点を活用する一例です。
不動産投資は人それぞれ、最適解が異なります。「楽待」会員の皆様も是非、研究を重ねられ、ご自身に一番適した得意技を確立し、ご成功なさることを心からお祈りいたします。
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