当日ご参加の会員様からのご質問
今月も前置きが長くなってしまい申し訳ございませんでした。
それでは、当日ご参加の皆様からのご質問を補足フォローさせて頂きます。
私自身が不動産投資をスタートした1995年頃は、不動産投資セミナーは皆無に近く、あっても不動産会社さんの物件説明会的なものでした。
その後誕生した不動産セミナーは、大家さんの体験談・御披露目的なものが流行した時代がありました。
しかし、あっという間に爆発的に流行したサラリーマン大家さんセミナーの最新動向は、
「個別の大家さんの事例は普遍性がないし、飽きた。自分の場合はどうしたら良いかを知りたい」
というニーズが急速に高まり、それをビジネスになさる、大家さんとコンサルタントを兼ねる起業スタイルが急増していることは衆知の通りです。
そして、「大家さん家業のノウハウ」というソフトウェアを「販売するシステム」自体がビジネスになっているほどです。
そういう面では、私はサラリーマン大家でしかございませんので、皆様御一人御一人のケースに合わせた個別最適のご回答には力不足と思います。
このコラムでは、ご相談について、区分所有投資という独自の切口から見た場合どうだろうか?
という一視点から、ご一緒に考えてみたいと思います。
あくまで区分所有投資の側面からのアドバイスですので、物件の得失から、こういう手法がある、という解説に留まります。
楽待会員の皆様の個別相談については、当日午後に開催された楽待コミュニティ一棟版に、今後ご参加頂ければ、プロ投資家の松村氏からアドバイスをいただけます。
Q1 はじめの一歩をどうするか?
ご参加の1/3の方は物件購入はこれからでしたので、この疑問をお持ちだったと思います。
不動産投資は金額が大きいだけに、はじめの一歩を踏み違えるとそこから先へ進めなくなり、最悪の場合墜落してしまうこともあります。
勧められるがまま、積算評価額より高い物件を融資を引いて購入し、手に負えず持て余しているうちに、運営環境の経年変化で税引き後のキャッシュフローが回らなくなってしまう。しかも、担保割れで身動きも取れない。などは典型的な例といえましょう。
それには、投資の目的が何にあるのか、いつまでにどうなりたいのかを、ご自身なりに事前にイメージすることが非常に大切だと思います。
つまり巷で言われている、最短で最大の結果を出せる(その結果の定義も難しいのですが・・・)戦略が、ご自身の個別環境や目的達成の最適手法と必ずしも一致しないということです。
ターゲットを設定した上で、その実現に最適の戦略を考え、投資対象と方法を決めるのが宜しいのではないかと思います。
そしてもう一ついえることは、不動産投資はリスクを自分でコントロールできる数少ない投資であるため、それにはまず、ご自身が運転して乗りこなせることが第一です。
自転車と同じで、自分自身で体験してみることが非常に重要なのです。
体験することで、また新たな閃きと展開があり、ご自身に最適な方法を開拓できます。
そこから、原付、中型二輪、限定解除でハーレーダビットソンの1000ccへと乗り換えて行く戦略が取れます。
所有する個々の物件サイズを大きく変えてゆく戦略もあるでしょうし、類似物件で数を増やすことにより、運営規模全体を大きくする戦略もあるでしょう。物件ポートフォリオという捕らえ方をして、経年的に中身を組み替える戦略もあります。
その為には、ゴールをイメージしたらとにかくまず1つ購入して、ご自身で不動産投資・運営をスタートさせることが始めの一歩だと思います。
当然、はじめの一歩のときは未経験ですので、事前に本で勉強したり、セミナーで先人の体験をシミュレートしたりすることは必須です。
もし何かあった場合でもリカバリーできる方法でスタートすることも非常に重要です。
いきおい、最初からいきなり億オーダーの物件をフルローンで購入する。
という場合、よほど優秀なメンターの手引きが必要でしょうから、普通は手頃な金額からチャレンジということになるかと思います。
このような流れから、金額が手頃な区分。
という選択肢を思いつく方が多いのでは?と思います。
しかし、最初の一歩を決めるのは金額だけでなく、あくまでご自身の目的とポジション戦略に合っていることが大切なのです。
一方で、紙系投資にはない物件管理が不動産投資には付きまといます。
これをご自身がどう取組めるかによっても、異なってくるかと思います。
つまり、ご自身がそれに傾注できるエネルギーや時間も大切なファクターです。
更に融資については、最初は個人の与信に頼らざるを得ないと思います。
その後の展開によって、担保余力を持っている物件を増やして行くのか、あるいは、担保価値が無くとも、売却で利益確定しながらキャッシュを手元に残して、次の融資を個人の与信で引いて、何度か繰り返して行くのか?によっても、投資対象物件は異なってくると思います。
不動産投資は個別性が強く、それを生かしてリスクコントロールできる余地が大きい、他に類を見ない投資です。
その意味では、広く浅くよりも、ご自身に合った得意な分野に特化して集中し、その分野・その部分のエキスパートとして得意技で勝ち続ける。
という戦略であれば、失敗を回避できる確率があがります。
失敗を回避していれば、収益が他の投資に比べ安定して急変が少ない事業ですので、時間とともに成功へと繋がってゆくという展開が期待できると思います。
読者がお選びになられた方法が、必ずしも最速最大のパフォーマンスを発揮できるか?
といえば、必ずしもそうでないかもしれません。
最速最大のパフォーマンスを出す方法が、ご自身の能力・適性や胆力、生活スタイルや人生目的に合っているか?
という点もまた、別問題かもしれません・・・。
あるいは、最速最大のパフォーマンス戦略に適した人間になれるよう、自分自身を勉強やトレーニングによって変革する、という戦略も素晴らしいことです。
Q2 余裕資金が200万円・・・
余裕資金が200万円あったとします。これを区分所有の不動産投資に振り向けるとしたら、どのような物件を狙いますか?
なかなか切実なご質問で、その方の状況や目的によって答えは異なると思います。
区分所有物件で、ということですので、ワンルームかファミリーで検討してみましょう。
今の私でしたら、数ヶ月分の家賃を貯めてその200万円に追加して、家賃が6~7万円取れる築浅の1Rを追加購入し、ポートフォリオ全体の築年の若返りを図ります。
私の不動産投資の大きな目的は母親の介護資金捻出ですので、状況の急変によってこの200万円は、介護費用、治療費、入院費、葬儀費用などへ変更、投入されることもあるでしょう。しかしこれは私の場合ですので、もう少しいろいろと検討してみましょう。
検討例1 200万円で買える1Rを現金購入
利点はマイナスへ振れる危険が少ないこと。欠点は普通のこのクラスの物件は家賃が低い割りに維持費がかかるということです。
俗に言う、リフォーム負けです。
築20年前後で表面利回15%などという物件は東京近郊でも普通にありますが、一般には家賃が低いエリアになります。
一度退去があると内装現状復帰に10数万円程度かかり、手残りCFの1年分が飛んでしまう、という状態になります。エアコンや給湯器など突発的な設備故障も懐に響きます。
一方、家賃が高く取れる立地の良い場所の物件は、この価格帯では築年がかなり古くなるか、何か特殊な事情付きのリスクもありますので、慎重な物件調査が必要です。
売主がどうしても現金化をお急ぎ、などの安全な売却理由であることが望まれます。
比較的利便性の良い立地にご自身も御住まいで、直近の駅前の自主管理できる場所に、突発的な安値で、建物管理状態が良い物件が見つかり、賃貸付けや内装工事含めて自分でできる時間的余裕がある、などの場合はこの選択肢もありかもしれません。
大変良い実験・研究材料にもなり、ローリスク教材として活用できます。
じっくり取組めば、この物件から運営ノウハウを学びながら、家賃と他の資金(含む給与)を貯めて次を購入することも、時間はかかりますが可能と思います。
検討例2 提携ローンで中古1Rを購入
一番オーソドックスな方法です。
個人の与信があれば、上手くすれば中古物件とローンをパックにして仲介してくれる業者さんもありますので、手軽に投資ができます。
その場合、担保価値は、実は物件ではなく貴方御自身ですので、ご自分の融資枠を食ってゆくことになります。
同じことを繰り返してゆくと、数室~10室程度で与信の限界が来て、それ以上の融資は受けられなくなります。
その際に、将来一棟物件へ展開したい場合、与信枠一杯になってしまっていると、1R区分所有物件は担保価値がほぼゼロですので、手持ち物件を売却してローンを返済しない限り、新たな融資は受けられなくなります。
或いは築年が古くなった際も、先に築浅物件を追加購入しておいて、古いものをじっくり売却、という戦略が取れません。
まず手持ち物件を売って現金化した後、次を探す、という手順に限定されます。
ですから、今後の展開をどのようにしたいのか?
によって、融資をどう受けるべきかを考える必要があります。
その際には慎重にシミュレーションして、維持コストや空室募集時の諸費用を考慮しても、
・税引き後の毎月のキャッシュフローがプラスで回るか?
・経年による減価償却費減少、金利変動などがあっても、黒字倒産状態にならないか?
を検討して、借入金額、金利、物件価格(利回)を決めることが大切です。
いつまでホールドするかは別としても、シミュレーション上では、ローン完済時の物件築年数と、減価償却した建物の維持運営戦略なども考慮する必要があるでしょう。
手残りCFと物件残存価値、または売却手残りの合計額がどうなって行くかを時間軸でシミュレーションしたうえで購入し、運営中も常時チェックしておくのが宜しいのではなでしょうか?
時間軸上のどのタイミングで出口へ出ても、手残りCF+売却手残りの合計で借入残債を綺麗にしても、利益確定が可能であるようにしたいものです。
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