Q2 区分マンションを買い続ける良い点と欠点について

その方の投資目的とポジションによって、長所と欠点は変わってくると思います。
ここでは全ての方の事情は到底網羅できませんので一般論として考えてみましょう。

■長所
ご自身が区分マンションに得意な方であれば、それが長所になると思います。
前にも申し上げたとおり、ご自身が一番有利なポジションを取って、有利なフィールドで勝負できるからです。

区分マンションを最も得意とする売買仲介や賃貸管理など、その道のエキスパートにパートナーになっていただき、プロが揃っているとします。

その場合、区分を買い続けるということは、ご自分が最も得意な領域で、区分のエキスパート・プロ集団に最も得意とする仕事をしてもらうわけですから、得意フィールドで有利な投資ができることでしょう。

区分物件はその流通数や成約の足の速さは最高ですから、検討対象数も多く、チャンスも多いといえます。

同じシステム上で同じことの繰返しなら、環境が急変しない限りは失敗の確率は低いといえます。

また、市場物件数は膨大ですので、タイミングをずらして複数分散運営することで、区分独自の土地が付いていない建物の老朽化や災害リスク、共用部に自己裁量が効かない欠点をヘッジできます。

あくまで、ご自身がこういったプロを制御していることが重要で、言われるがまま、逆に動かされてしまうのでは本末転倒です。

■短所
一方、短所はいくら数を揃えても「土地持ち」にはなれないことでしょう。
キャッシュフローが積上がれば融資の際の個人与信には繋がるでしょうが、物件自体が狭い1Rは担保になりません。

沢山所有していても、含み資産を持っているというより、キャッシュフローを産み出す生産設備を持っていると考えるべきでしょう。

更に、区分マンションという同じテリトリーへ集中すると、大きな状況変化があった場合、全てが共倒れするリスクがあります。

こういった意味で、欠点を良く理解し、それをリカバーできるように長所の部分を活用してヘッジしておくべきでしょう。

例えば、腹一杯ギリギリに区分を持たず、ある程度のキャッシュポジションをいつもキープしておき、状況に応じて手が打てる「手綱のゆとり」が必要だと思います。

まとめますと、自分の得意分野を長所として、欠点も良く理解しておき、両方を見ながら、可能な限り手を打ちながら運営してゆくことが大切なのではないでしょうか?

そして買い続けることで良いのか?手持ち内で売却すべき物件はないか?手持ちの各物件をそれぞれどのように最適化運営してゆくか?いつもチェックを怠らないことではないでしょうか?

1つ1つ物件個別に異なる戦略を取れることも区分のメリットです。

Q3 マンションの1室は駄目だという見方

マンションの1室は駄目だという見方のほうが大勢だと思います。
なぜ、区分が良いのですか? 出口戦略はどう考えていますか?

区分というと、必ずこのご質問が付いて回ります(笑)
総合的には、区分物件よりも一棟物件の方が、ハイパフォーマンスが可能であることはいうまでもありません。

■区分の良い点は?
区分の良い点は、このコラムでも何度も上げている「管理がシステム化されている」「建物維持に時間とエネルギーを取られない」(お金は取られます)という点が大きいと思います。
購入すれば、自動的に(建物)管理システムが物件に付いてくるのです。

一棟物件は、購入できるのは物件が全てで、元オーナが大規模修繕に備えた資金までは譲っては頂けません。ですから、購入以降の大規模修繕は全て自分の持ち出しです。

一方、区分物件の場合は、管理組合の積立修繕金をも含めて購入しますので、旨くすれば、建物+数千万円の積立金(の一部)を購入できることになります。

しかも、建物全体を管理組合、管理会社、熱心な一部オーナー、実需居住者など、複数の目で常時監視しています。

大衆の多数決の力が働いて、個人として殆ど手をかけなくとも(費用を出せば=それも管理会社と親施工会社が2~3割のマージンを乗せ、割高ですが・・・を出せば)ほどほどのレベルに長年維持できます。
これは時間とエネルギーを縛られているサラリーマンにとっては有難いことです。

物件が遠隔地にあって自分では中々見に行けなくとも、この点では心配ありません。

例えば、毎日終電で帰り、土日も出勤しているような多忙なサラリーマンの方が、
エレベータの交換工事800万円の見積もりをあと100万円下げる施工変更設計と価格交渉をやらねばならない。
その資金調達も必要。
給水ポンプが故障した。それを機に給水タンク方式から圧力式に変更設計施工しよう。
屋上防水を予算100万円以内で至急施工が必要。
などなど、パートナーがいたとしても、そのプロモートは大変です。

区分オーナーは、専有部のメインテナンスと賃貸付けに専念できます。

他に、小額で現金投資可能。それをエリアや建物で分散投資できる。などがあります。

■欠点
一方、最大の欠点はご承知のとおり、土地がなく、空中権利の建物だけの区分の最後が見えないことでしょう。

■いつ売却しても利益がでる価格で買う
その対策は、一言で言ってしまえば、

「いつ、出口へ出ても、利益が確定できるように、入口へ入る」

ということに尽きるのではないでしょうか?

つまり、出口とは、キャピタルロスとインカムゲインの合計です。

ですから、何時の時点でもランニングコストを考慮した税引後のインカムゲインが、建物の経年減価償却による売却キャピタルロスをカバーして尚、利益確定できる、その価格を逆算して、それ以下の価格で購入できるときだけ、入口をくぐり投資する。

という戦略が、区分の出口戦略だと思います。

■貸すだけで寿命内で利益確定できる価格で買う
一方、全く別の出口戦略もあるのではないでしょうか?
それは、一般的に言われている出口=売却を想定しない戦略です。

コミュニティの時にちょっとお話させて頂きましたが、森ビルや東京タワーの所有会社が、出口戦略と称してそれを売却することは考えにくいです。

個人でも、この物件には一生稼いでもらいたい。そして、自分の寿命が先に尽きるだろうから売却は考えない。生きている間で、ホールドしているだけで利益確定できる。
という物件もあって良いと思います。

それを相続なさるご家族も、小額で売買し易く、管理システムが付属して手間の掛からない区分物件がタダで手に入るわけですから、後は売っても、そのまま貸しても良いわけです。

古い区分は売却するにも、誰も見向きもしないのでは?

という心配も確かにありますが、以下の事例もまた、事実です。

■築45年区分物件の実例
私の義母は、高齢を理由に、この夏、45年間住みなれた東京の区分マンションを売却して、横浜の義姉の近所へ引越しました。

本にも書かせて頂いた、築45年を越えた分譲マンションで、5階建てでエレベータが無い為、15年間も管理組合で何度も建替え議論が絶えませんでしたが、未だに話がまとまっていません。

修繕はしっかりしていますので、住むには何ら問題はありませんし、空室も僅かです。

外観は、スタジオジブリのアニメ作品「耳を澄ませば」の主人公、月島雫ちゃんの家。
といえば、イメージして頂けるでしょうか?
外観も立地も非常に近いです(笑)

それでも、西東京の築45年の、駅からバス便、40数m2 程度3DKが780万円で成約しました。
買い手は渋谷区の自宅戸建てを7000万円で売却された老夫婦の方で、御二人だけで、校外でこじんまりと静かに暮らしたい、というご希望でした。

なぜか、この物件を非常に気に入ってくださいました。

内装リフォーム業者さん同伴でご内見され、この価格なら、内装費を見込んでも予算内なのでOKとのご判断でした。
ですから実需顧客さんでも、それなりに目利きが効く買い手さんといえるでしょう。

もしこの物件を賃貸したなら、月額家賃7万円であれば十分借り手は付く物件です。

私の義父は既に亡くなっておりますので、オーナーの寿命よりも区分物件の寿命の方が長かった実例といえます。

一方、それを相続した義母は、老後にまとまったキャッシュを手にできましたので、自宅の出口戦略はそれなりに成功したといえるのではないかと思います。

Q4 区分不動産の買い時について

私はもっぱらキャッシュ購入のため、買い時は、良い物件情報が入ったとき。 です(笑)

■景気が最悪の時に買う
換言すれば、景気動向による一般提示売価よりも上流情報価格の方が有利です。
売り手の個別事情は件数の多少の差はありますが、区分全体の物件数が膨大なので、いつの時代も「事情のある売り物件」は必ず存在するわけです。

景気が悪い、とか、不動産相場が下落しているなど、周辺環境はあるでしょうが、膨大な物件数が市場に存在する区分の場合、投資がペイでき、有利に買える1室は、数の多少の差こそあれ、いつでも見つかると考えるべきでしょう。

キャッシュで購入する場合は、経済動向による融資状況は直接は関係ありません。

融資を使うとすれば、個人の与信に頼ることになりますから、土地を担保に借り入れる場合にくらべると、一般論としては、与信範囲内で可能な額なら、融資が絞られている時でも借り易いといえましょう。

ただし、融資がつきやすく市場が過熱しているときは、売値が強気です。逆に、融資がつきにくい冷え切った市場の方が、買手は少なく、売値は弱気。というのが一般論です。

ですから、小額の区分では、景気がどん底の時に、売主の事情で現金化を急ぐ物件を、キャッシュで購入する。

という方法は、一理あるといえましょう。

■自分自身の人生でも考えてみる
別の意味の「買い時」として、ご自身のライフサイクルのどのタイミングで?
という課題があります。

これも個人の事情や目的により、非常に難しい設問ですが、「Time is Money」というように、時間は非常に大きなエネルギーです。若い時ほど有利だと思います。

少し違った、ライフイベントの「買い時」で見てみますと、自宅を買う前に、収益賃貸不動産を買う。ということは、ちょっと勉強なさった方では常識化していますね。

ただし私はその逆で、自宅を先に買って後からそれを賃貸しましたので、順番を間違えてしまいました。
上記のようなことを、何も知らずに不動産を購入したからです。

しかし自宅の場合は、個人の生活嗜好や拘りがあります。

知人で、どうしてもゴルフの練習場が自宅に欲しくて、最上階で広いルーフバルコニー付が自宅物件の必須条件という方がいました。

偶然、近所でその条件に適う新築マンションが開発され、それを購入して、ルーフバルコニーへネットを張って、人工芝を敷き詰め、プライベートゴルフ練習場の夢を叶えました。

物件の市場価値など彼には関係なく、この物件に住めることで何時でもクラブを握れ、とても幸せを感じていると思います。

人生、お金の損得だけで、測れないものもあるのです。

これは収益不動産の売買時に逆に活用することもできるわけです。