日経マネーさんの取材

日経マネー

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先日、日経BP社さんのご取材を頂きました。
現役サラリーマン大家さんの対談という形で、大家さん仲間で、1級建築士をお持ちのふくちゃんさん、株式投資の実力者で区分投資へもレパートリーを広げられたJACKさん(楽待にてコラム執筆中)と、ご一緒でした。
現在発売中の「日経マネー1月号」にご掲載頂きました。

対談のテーマが、不動産投資を全く御存知ない現役サラリーマンの方が、いかにして入門したら良いかについて、本音のお話を聞かせてください、ということでした。
特に、区分投資の場合、最初に躓づいてしまう方も多いため、少しでも読者の為にお役に立て、成功へ繋がる投資家の方が増えて頂ければと考えて、参加させて頂きました。

既に色々と勉強なさっていらっしゃる楽待会員の皆様には、対談の紙面部分だけでは、初歩的なお話に留まるとお感じになられるかもしれません。

しかし、前後の記事に、さくら事務所の長嶋先生や、ファイナンシャルアカデミーでご活躍の束田先生など、プロ・コンサルタントの先生方がポイントを付いた分かりやすい解説を付けてくださっているので、こちらは大変参考になると思います。

同時に、不動産に限らず色々な他の投資との比較という意味からも、参考になるかと思います。

この座談会の雑談で、リーマンショックによる家賃や空室の影響が話題に上りました。
リーマンショックで紙系資産が総崩れとなって、改めて不動産収益の安定性が見直され、色々なメディアでサラリーマン大家さんが取り上げられているようです。

一方、家賃や空室率へのショックの影響はどうなのでしょうか?

座談会の時も、3人の感想は異口同音に「ある」でした。

この日経マネー誌で、記事の自己紹介欄に何を書かせて頂こうか考えて、
「かつてない家賃下落と空室の試練を経験した」
と書かせていただきました。

今月は、実際私が体験したこの事例と、その体験から感じたことなどを、「日経マネー」誌上では紙面スペースの関係もありお話しできなかったので、纏めて簡単にご紹介させて頂きます。

空室物件の概要全貌

一般的に、不動産の賃貸動向は経済指数に対して遅れて影響がでる。
「遅効性がある」と言われています。

私の実感も、リーマンショックから半年から1年程遅れて急に空室・滞納が発生し、その募集から家賃下落と、リフォームによる追加投資が必要でした。

現在27室を運営していますが、今春から集中的に7室の空室を経験し、15年間の大家生活で初めてのまとまった空室体験でした。

従来は、2~3年毎に、年間で1~2室程度の空室発生確率で、リフォーム期間を含めても1~2ヶ月で埋まりました。

それが、今回は3~6月にかけての一番悪いタイミングで7室同時に空室となりました。

その結論は、11月初めをもって、再び満室へ漕ぎ着けることができました。

そこで今月のテーマは、この顛末を俯瞰的に振り返ってみることにします。

都心部での一般的な入居期間は、経験的な統計値から54ヶ月間と言われているようですので、27室ですと、平均確率的には2ヶ月毎に1室、空室が発生する計算になります。
別の見方をすれば、年間6室平均で入退居を繰り返す単純計算です。

ですから、今年経験した7室空室は、この計算値が実際に発生した。
と言ってしまえばそれまでかもしれません。

しかし私の物件の場合、立地が比較的良い便利な場所にあるせいか、前述のとおり、殆どの方は54ヶ月よりも長めに入居頂けておりました。

1室のみがルームシェアのファミリータイプで、他の26室はシングル向ですので、一般的には家族でお住まいの部屋に較べれば、入退居サイクルが短いと言われるタイプです。

それでも前述の統計値?の倍以上の期間、最長で12年間もご入居頂いた女性もいらっしゃいましたので、立地と便利さと家賃の安さが魅力だったのでしょう。

 

空室発生月 入居期間 物件概要 募集期間 対策
(1) ‘08年12月 2年間 中野区1R 3ヶ月間 営業活動
(2) ‘09年1月 5年間 世田谷区1R 1週間 家賃値下
(3) ‘09年3月 3年間 横浜鶴見区1R 家賃保証
(4) ‘09年4月 7年間 中野区1R 4日間 家賃値下
(5) ‘09年4月 5年間 荒川区1R 家賃保証
(6) ‘09年6月 5年間 世田谷区 3ヶ月間 広告強化
(7) ‘09年5月 3年間 渋谷区1R 1ヶ月 用途転換

入居平均期間を単純計算すると4.28年間となり、約51ヶ月で、今回の纏まった退去はほぼ統計値に近い値となります。

(3)と(5)は退去連絡が入った時点で家賃保証手続きを取った物件です。その後、専任の管理会社に募集を任せ切りにして、私自身は内装の装飾や募集活動のテコ入れを全くしませんでしたので、実際には5ヶ月間以上空室になっていたようです。

この他に、入居中での滞納は、2ヶ月滞納が1室、4ヶ月滞納が1室ありました。
これは以前コラムでもご紹介しましたように前オーナーさんからのオーナーチェンジ物件で、引き続きの入居者です。

全ての部屋の退去理由は把握できておりませんが、注目すべき理由に区分独自の現象も見られましたので、この点も以下に解説させて頂きます。

(1)の中野区の物件は第4回コラムで詳細をご紹介したとおりです。
家賃は据え置きのまま、専属専任管理で業者さん了解の下に、大家独自に平行して一般募集をかけて埋めました。3ヶ月の空室期間には専任会社のフォローミスで、某業者さんに1ヶ月間物件を握られて募集停止となってしまった期間を含みます。

この物件は、入居期間が2年間と短く、退去時家賃が周辺相場と整合していたため、募集営業活動の強化と、ルーフバルコニーを活用した簡単な物件へのお化粧と差別化で同棟内他室に先駆けて賃貸付けできました。

それでは、それ以外の状況を物件毎に見てゆきましょう。

家賃値下げで短期成約

マンション

マンションイメージ

(4)の中野区物件は、7年間入居頂き、現状家賃が6.2万円と周辺相場からかなり高めになっていました。

実はこの周辺相場に、もう一つの事情があります。

この物件の管理は分譲時からの系列管理会社の流れが継続していましたが、昨今の不動産業界の再編M&Aで会社組織に大きな動きがありました。

自社直営の賃貸募集店舗を全てたたみ、入居者直付をやめ、全て仲介募集体制になりました。
また、社員にも大きな異動や退職がありました。

そのため、昔に比較すると適正家賃での賃貸付け能力が落ちたと感じています。

その会社が同棟内の多くの部屋を管理しています。

その結果、同棟内でこの管理会社が管理している部屋は、とにかく家賃を下げて空室を埋め、入居率の数値をアップする作戦に出ていました。

ここが区分独特の弊害で、こうなってしまうと私の部屋も伴連れで家賃を下げざるを得なくなります。狭い3点ユニットの1Rでは、私の裁量が効く専有部だけの差別化には限界があります。

しかし、7年前に490万円で購入した任売物件でしたので、単純計算では6.3万円×84ヶ月=529.2万円で、単純に経費等を考えないとすれば、ほぼ投資額を回収して元は取れた物件です。(実際には諸費用や税金を考慮する必要がありますが)

ですから、この管理会社が管理する同棟内他室と同等レベルまで家賃を下げても、私としては問題はありません。

当初シミュレーション値よりは早めの投資回収で推移してきましたので、想定内でまだマージンがあります。

同棟内で4室同時に空室が出ていましたので、5.4万円まで家賃を下げて、広告料を0.5ヶ月出す条件で募集しました。

家賃下落率は単純計算で、((6.2万円―5.4万円)÷7年間)÷6.2万円=1.8%/年です。
シミュレーションでは1%と見込んでいましたので、想定より0.8%程大きな値です。

一方、空室率は、今回分を含めて、リフォーム期間を入れて、7年間で1ヶ月間でしたので、1ヶ月÷84ヶ月=1%でした。

シミュレーションでは10%を見込んでいましたので、こちらは想定より小さな値です。

結果的には、家賃を必要以上に下げて無理やり空室を埋めたことになりますが、この当りが同棟内相場に伴連れで引きずられる区分の致し方ない側面だと思います。

別の見方をすれば、この専属専任管理会社さんが独自に設定している家賃相場は、近隣エリアの他棟物件に比較して安すぎるということが、数値的に検証された結果になました。

それは、近隣エリアを不動産サイトで家賃順に検索すると、RC物件では一番最初に引っかかり、それも、木造アパートの同等クラスの中に紛れて表示されることからも分ります。

そういう管理会社さんでも管理を切らずに継続契約したのは、ポートフォリオ全体でのバランスから、代行、保証と切替ができる管理メニューを残しておきたかったためです。私自身が募集や管理面で色々と動けなくなった場合のリスクヘッジです。

もちろん、自分がいつでもバリバリに動ける大家さんでしたら、専属専任賃貸管理契約を打ち切って、自主管理にする選択肢も有効でしょう。

しかし区分の場合は、あくまで同棟内他室との伴連れ現象から脱却できないので、自分一人がいくら頑張っても、家賃下落防止には限界があることも計算に入れる必要があります。

同棟内同時募集は、5.3万円が2室、5.4万円が2室でしたが、私の物件が真っ先に、リフォーム後、募集開始してから4日間で埋まりました。

他の3室は広告料ゼロでしたので、その差が一番大きかったと思います。

私自身、このエリアで広告料を使ったのは初めてのトライアルでした。
競合4室がこの管理会社一括だったので、募集条件の詳細がつかめた為、差別化を図れました。

キャッシュフローに余裕があったので、わずかAD0.5ヶ月分で優位に立てるなら、0.5ヶ月の空室はあっという間に過ぎてしまうだろうと踏みました。

また、前述のように私自身の所有物件の他室でも空室が出ておりましたので、埋められる可能性のあるものから優先的に対処しないと大変になりそうな予感がありました。

この当りの状況からも、昨今の状況の厳しさを肌身で感じました。