「50代で、残りの時間が少ないからこそのメリットもあるし、注意しなくてはいけない点もあります。失敗はできない。とにかく『安全運転』を絶対にすべきだと思います」
不動産投資を始めた時の年齢は55歳。自身を「遅駆けスタート大家」と称する小林利弘さん(57)は、そう語る。
家族経営だった小さな葬儀会社を継ぎ、20期連続増収増益を達成。M&Aを経て上場を果たすなどの経歴を持つ小林さんだが、53歳の時に咽頭がんを患う。だが、これをきっかけに不動産投資にのめりこむこととなったという。
これまでの実績・経験を生かして、大家デビューからから2年ほどで3棟2区分まで規模を拡大。現在は家賃年収3400万円、税引き前CFは1000万円ほどになった。
そんな小林さんは、「50代で始めたからこそのメリットとデメリット、注意点がある」と語るが、それはいったいどのようなものなのだろうか。
前編である今回は、小林さんの「1棟目」と、不動産投資に出合うまでの軌跡を追う。
競合多く…「差別化」意識した1棟目
小林さんの1棟目は、2022年に竣工した新築アパートだ。木造3階建ての全12戸で、1LDKと2Kの間取り。単身者や新婚夫婦などをターゲットに、現在満室で運営している。
建築費は約1億7000万円、利回りは7.2%ほどになる。家賃年収は約1200万円。税引き前の年間CFは約400万円ほどだそうだ。
「実は、このエリアには同じようなスペックの競合も多かったんです。それで、アピールポイントを作るために、Amazon Key for BusinessというAmazonの置き配対応の共有玄関を導入しました」
委託先配達員が、このアパート向けの荷物を持っている時にのみ共有玄関のオートロックを解除でき、個々の玄関前への置き配が可能となるシステムだ。
「そもそも導入事例が少なかったし、この物件のエリアではうちしか導入していませんでした。これは良いアドバンテージ、差別化になると思いましたね。このシステムは10戸以上の物件じゃないと導入できないので、それも見越して物件を建てました。物件のホームページにも、わざわざ項目を設けてアピールしています。そのおかげで空室ができてもすぐに埋まります」
大阪府にあるJR吹田駅から徒歩15分ほど。駅からは少し離れる印象だが、近くには国立循環器病研究センターや400床以上の吹田市民病院もある。今後の発展性に期待もかかるエリアだという。
中古物件を買うつもり…新築に転向したワケ
実は、もともと新築物件を扱うつもりはなかった。
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