経験豊富な不動産投資家は、購入直後の築古物件を見て、どのようにリフォーム箇所を判断しているのだろうか?

今回、「空家再生屋」こと川村ふぁるさんに、リフォーム予定の連棟戸建てを案内してもらった。川村さんは、関西を中心に難あり築古戸建てを200戸以上再生してきた実績がある投資家だ。

総投資額13億円超、年間家賃収入1億4000万円超の不動産投資家は、古い連棟戸建てをどのように再生するのだろうか。利回り16%を目指すテクニックや考え方、業者との付き合い方などを語ってもらった。

>>築50年超の連棟戸建て、空家再生屋が「再生プラン」を現地解説<<

修繕箇所のメリハリをつけて費用をカット

─今回購入したのは、どのような物件でしょうか

大阪府大東市にある連棟戸建てです。最寄りの住道(すみのどう)駅からは徒歩20分ほど、裏には公園やスーパーがある住みやすいエリアにあります。

3戸がつながった「三戸一」のうち、左の角部屋にあたる物件を購入しました。

─連棟戸建ての特徴を教えてください

隣同士の壁がくっついているので、通常の戸建てよりも安く購入しやすいことが挙げられます。「テラスハウス」とも呼ばれており、関西に多いようです。

私が購入した物件は、2階部分が2部屋、1階部分が1部屋とダイニングキッチンという間取りですね。

─築年数50年超とのことですが、家賃や利回りはどれくらいを想定していますか?

家賃は安くて月4万円台、高くても月4万8000円くらい。利回りは物件価格とリフォーム費を合わせて計算し、15%以上を狙えればと考えています。

入居者の層としては、シニア世帯や生活保護を受けている方、シングルマザーなどを想定しています。

─購入の決め手は?

すでに下水や都市ガスが通っていたり、洋式トイレが設置されていたりする点ですね。部屋自体も狭いので、コストを抑えやすいと判断しました。全体のリフォーム費は高くても170万円、一方、少し残置物もあるので、その撤去代として10万~15万円を想定しています。

─さっそく物件を見ていきます。外壁まわりで修繕を予定している箇所はありますか?

この窓に網戸がないので、網戸を取り付けることと換気扇の交換ですね。古いポストは交換せず、ラッカースプレーの塗装などできれいにします。壊れている門扉(もんぴ)は切断してしまい、「なかったもの」にします。

修繕が必要な箇所と、工夫で対応できる箇所のメリハリをつけてリフォーム費を抑えます。

やらなくていい場所を見つけながら生活感をなくす作業

─物件の中に移ります。最初に気になる部分はどこでしょうか?

まずはブレーカーを見ます。

30~40アンペア未満だと、「ブレーカーが頻繁に落ちる」といったように、入居者からのクレームにつながります。この物件は足りていないので、容量変更工事をしなければいけません。

所有物件が増えるにつれて、「見えづらいけれど、対処しておかないと運営上しんどい」という部分を優先して対処するようになってきました。

それでいうと、照明をつける引っ掛けシーリングがない場合や、炊事場のパッキンなども、きちんとしておかないとクレームになってしまうことがあるので、利回りを下げてでも交換するようにしています。

─床や畳は、全て交換しますか?

中に入った瞬間に「きれいだな」という印象を持ってほしいので、玄関のたたき部分の古いタイルは長尺シートを貼って修繕するつもりです。

また、玄関入ってすぐの床もはがれている部分があり、清掃だけではきれいにならない可能性があるので、クッションフロアを貼ろうと思います。

この物件は和室もあります。洋室にするか、和室のまま畳の表替えで済ませるかは、畳がきれいかどうかが判断の分かれ目です。畳がきれいなら、表替えで済ませます。畳を新調しないといけないような場合は、洋室化ですね。

この物件はダイニングキッチン以外が和室なので、1室を洋室にリフォームすれば、入居付けもしやすくなると思います。

─壁や天井のリフォームはどうですか?

この物件もそうですが、土壁や綿壁の場合、基本的にはベニヤ板を張り、その上からクロスを張る形になります。ただ、あまり傷んでいない部分は、シーラーのを塗った上に直接クロスを張るとコストカットになるので、そうしてもらうようにリフォーム会社にはお願いしています。

天井は、もちろんクロスを貼りなおしたほうが良いのですが、こうしたリフォームの有無が家賃にそれほど影響しません。この物件でも修繕せずそのまま貸し出します。

─コストがかかりそうなキッチンは、どのように修繕しますか?

換気扇は壊れているので交換が必要です。ガスコンロも新品にします。キッチン台自体は交換しません。鉄サビをなくして、ラッカースプレーで塗装し、壁の汚いところはパテやクロスで対処します。

収納扉の表側はダイノックシートを貼ってきれいにする予定です。包丁立てがないので、これはつけないといけないですね。

私のリフォームでは、「生活感はなくせるだけなくす」が鉄則です。キッチンの壁につけられた古い棚なども基本的には撤去します。

打ち合わせでは修繕箇所を細かく指示

─築古物件ということで、屋根の状態も気になります

基本的にはきれいですね。ただ、一部瓦がずれていたり、ヒビが入っていたりする箇所があるので、修繕が必要になりそうです。表面が剥がれている部分は、コーキング処理もしなければいけません。

これくらいなら、高くても10万円の予算で済むと思います。継ぎ目のコーキングが切れていたりしたら、雨漏りの可能性もあるので、大変だったと思います。

物件のリフォームを考える上では、私自身で戸建ての屋根には登るようにしています。ただ、危険な現場では業者さんに任せます。その場合は写真をもらって、瓦などの状態を判断するようにします。

業者と二人三脚で空き家を再生していく

─今回のリフォーム費用はどれくらいになりそうですか?

おそらく170万~180万円になると思います。

今回の物件は土壁が多かったです。クロスの張り替えだけで済む場所がほとんどないので、下地処理だけで大きなコストになります。部屋が狭い割には、壁のリフォーム費がかかってくる印象ですね。

─リフォームで意識していることはありますか?

これまで行ってきたリフォームに関して、「案外いらなかった」と思った項目や、「もう少しやればよかった」と感じた項目をまとめ、情報を蓄積しています。

こうした項目を次の打合せの時にリフォーム会社の担当者に伝え、現場の監督さんからもアドバイスをしてもらう。業者さんと二人三脚でやっていくようにしています。

─ふだん、物件の内見時には、リフォーム会社に立ち会ってもらいますか?

基本的には、内装業者に立ち会ってもらっています。ほかの業者さんはそれぞれ別で依頼して、個々に動いてもらう形です。

ただ、その場合順番が重要になります。残置物が片付かないと内装工事にも入れないので、まず残置物を片付けてもらう業者さんが一番先。

並行して、別の業者さんに屋根の修繕を進めてもらいます。内装工事のあとに雨漏りをするとコストが無駄になってしまいますからね。雨漏りの心配がなくなったタイミングで、内装の打ち合わせをします。

─今回の物件について、今後の戦略を教えてください。

基本的には利回り16%を上回る想定なので、インカム狙いで保有しても良いし、買った金額より高く売れる可能性もあるので、売っても良いと考えています。

できれば1~2年はインカム目的で保有しておいて、利回り13~14%になるまでの間に出口を取れれば決して悪くないですね。

─震災リスクにはどのように対処しているのでしょうか?

私は基本的に自宅から車で1時間以内で行けるエリアで購入するようにしています。そうなると、同心円状に保有物件が点在する形になります。

いくらドミナント戦略といえども、1つの町だけで購入することは避けます。

空き家に関していえば、何もしないことが最もハイリスクだと思うんですよ。ですので、耐震補強をした上で再生することで、倒壊せずに済んだ…ということもあると思うので、地震対策の1つになっていてほしいな、という願いも込めて空き家再生に取り組んでいます。

川村さんはこれまでの経験を存分に生かし、空き家再生に取り組んでいるようだ。

修繕が必要な箇所や不要な箇所を判断し、業者に依頼していく様子は、動画で詳しくお伝えしている。ぜひこちらも確認してほしい。

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(楽待新聞編集部)