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国土交通省が年に1度「土地問題に関する国民の意識調査」を実施していることをご存じだろうか?

これは、全国の市区町村に居住する満18歳以上の3000人を対象に、身近に感じる土地問題や住まいに関する考え方などを聞くものだ。国民意識の変化を知ることで、国の施策検討に役立てられている。

3月、2023年度の結果が公表され、空き家などに対する問題意識の高まりが見られた。普段から不動産に携わっているわけではない、一般市民の認識はどのように変化しているのか? 今回の調査結果から紐解いていきたい。

2023年度「土地問題に関する国民の意識調査

・調査対象
全国の市区町村に居住する満18歳以上の3000人(有効回答数1579)
・調査事項

(1)身近に感じる土地問題などについて
(2)住居の所有・形態・立地等について
(3)土地に関わる情報の提供・利用について
(4)土地の所有・利用・売買等について
・調査方法

郵送またはオンライン回答(期間:2023年11月22日~2024年2月5日)

質問ごとに調査年度別、属性別(人口規模、都市規模、住居形態、土地所有形態など)の詳細なデータも示されている。

空き家・空き地への問題意識高まる

まず、「日頃、土地に関して身近に感じる問題があるか」(複数回答)という問いに対しては「空き家・空き地や閉鎖された店舗などが目立つこと」が52.4%と最も多くの回答を集めた。

同調査は1993年から継続的に実施されているが、これまでで最も高い割合となった。特に直近の5年間は、連続で割合が増加している。

2019年度の39.9%から12.5ポイントも上昇しており、空き家・空き地、シャッター商店街が市民の目に止まりやすくなった現状がうかがえる。

さらにこの回答をした人の割合は、政令指定都市で46.0%だったのに対して町村では62.6%となっており、人口規模が小さい地域ほど空き家問題への意識が強いとわかる。

空き地が問題だと感じる理由を問う設問に対しては、「雑木・雑草の繁茂」という回答が66.4%、「ゴミの不法投棄」が57.3%を記録。空き地がそのままにされることで発生する実害を指摘する声が多かった一方、「活用しないのはもったいない」という回答も34.5%あった。

「地域に管理不全状態の土地があるか」という問いに対しては、35.0%の人が「ある」と回答。この割合も人口規模が小さくなるに連れ高くなっており、町村に住む139人のうち半数を超える72人が管理不全状態の土地の存在を認識していた。

また、他に身近に感じる土地問題として「住宅価格が高いこと」と回答した人は26.7%だった。

中でも東京圏で39.7%と高い割合を記録し、空き家・空き地問題とは反対に、人口規模が大きい地域ほど住宅価格の上昇を実感している人が多いことが読み取れた。

コロナ禍以後、「永住するつもり」が低下

では、住まいに対してはどのようなニーズを持っているのだろうか。

「住まいの立地に最も重視するもの」への回答では、「日常の買い物など、生活の利便性が高いこと」が27.0%と最も多く、次いで「住み慣れた場所であること」が18.0%、「治安が良いこと」が13.9%となった。

また、「現在の住まいにどのくらい住み続けるつもりか」も質問。持ち家に住む人と賃貸住宅に住む人の回答が合計されている点に留意したいが、「永住するつもり」が31.5%、「たぶん住み続ける」が43.0%で、計74.5%と多くの人が住み続ける意向を持っていることがわかった。

対して、「5年以内に住み替えるつもり」が8.0%、「将来的に住み替えるつもり」が16.0%と、およそ4人に1人が住み替える意向だった。

ここ5年間の動きを見ると、2020年度に大きな変化が見られた。「永住するつもり」の大幅低下である。

これはコロナ禍に入ったことで、住まいの在り方について考える人が増えたことに起因すると推察される。それ以前の永住意向の割合は50%前後で推移していたが、一気に30%台にまで低下した。

今回の調査時期はコロナ禍明けと言えるが、割合は戻らなかった。しかし、現在の住まいに住み続けるか、住み替える予定かの2択で言えば、両者の割合に大きな変化はないと言えるだろう。

相続で増えゆく空き家・空き地

住宅所有に対する考え方では、「土地・建物については、両方とも所有したい」と回答した人が65.0%、「借家(賃貸住宅)で構わない、または借家(賃貸住宅)が望ましい」は17.5%、「建物を所有していれば、土地は借地でも構わない、または借地が望ましい」は3.0%と、引き続き土地・建物両方の所有意欲が高いことが確認された。

ただし、「土地・建物は両方とも所有したい」割合も小幅ではあるが低下している。2019年度に73.5%を記録も、2020年度には68.3%に。その後も低下傾向が続いている状況だ。

この住宅所有に対する考え方は、回答者の住居形態・土地所有の有無によって2極化していた。

持ち家に住む人のうち、「土地・建物の両方を所有したい」と回答したのは78.5%であった一方、賃貸住宅に住む人で同じ回答をしたのは23.5%にとどまった。

同様に、土地を所有する回答者のうち81.7%が土地・建物の所有を希望した一方、土地を所有しない回答者は38.4%しか上記回答をしなかった。

また、この結果を人口規模別に見てみると、人口の多い都心部ほど賃貸住宅希望者の割合が高く(土地・建物所有希望者割合が低く)、人口の少ない地方圏ほど土地・建物所有希望者割合が高く(賃貸住宅希望者の割合が低く)なった。

では回答者のうち、実際に土地(区分所有を含む)を所有しているのはどれほどの割合なのか。

「本人また配偶者が現在居住している土地のみを所有」が37.9%、「現在の居住地とそれ以外の土地を所有」は19.7%、「現在の居住地以外の土地のみを所有」は2.7%、「土地は所有していない」が37.4%となった。

今年の結果で特徴的なのは、現在の居住地とそれ以外の土地を所有している割合が、大都市圏の中で名古屋圏(25.3%)が突出していたことだ。明確な理由は不明だが、東京圏(9.5%)、大阪圏(16.1%)に比べて10ポイント近く高くなっている。

自宅以外の土地を所有する者に取得経緯(複数回答)を聞くと、「相続」が73.2%で最多、「購入」が29.1%であった。これらの土地のうち未利用なのが45.8%もあり、多くが空き家・空き地になっているようだ。

未利用となっている理由としては「遺産として相続したが、今のところ利用する予定がないため」が49.0%を占めた。

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不動産取引時に何を参考にする?

不動産の売買をする際、この記事を読む皆さんならどんな価格情報を参考にするだろうか。

調査結果によると、不動産投資でよく聞く「公示地価・基準地価」や「路線価・固定資産税評価額」を見るという人はそれぞれ20%台前半とやや低い数字をつけた。

最も高い割合となったのは、意外にも「知人・友人の話」(30.1%)で、次いで「不動産会社の広告」と「不動産会社や展示場を訪問して得る情報」(ともに29.4%)だった。

「不動産会社等のホームページ」(28.8%)、「不動産の取引価格情報」(26.6%)、「不動産の情報誌」(25.1%)と大差ない数字が続くことから、さまざまな媒体を参考にしている人が多いこともわかる。

また、非価格情報の取得については「周辺の公共施設等の立地状況・学区情報」が59.2%と最も高い結果に。「ハザードマップ等の災害に関する情報」や「住宅の維持保全に関する情報」を参考にする人も比較的多かった。

資産としての土地

土地を「資産」として考えるにあたってはどうか。

「土地は預貯金や株式などに比べて有利な資産か」との設問に対して、「そう思う」と回答した人は21.8%、「そうは思わない」が23.2%、「どちらともいえない」が35.5%という結果だった。

回答の経年変化を見てみよう。コロナ禍に差し掛かり、景況の見通しが立ちにくくなったからであろうか、2020年度より「どちらともいえない」と回答する人の割合が大幅に上昇していることがわかる。

コロナ禍の影響が薄れつつある現在、資産として土地が有利だと考える人の割合も回復傾向を見せている。しかし、2024年1月から新NISA制度が始まったことで、市民の資産に対する考え方もまた変わっていくだろう。

この年に1度の「土地問題に関する国民の意識調査」の結果を参照することで、社会における不動産に対する考え方の一端を覗くことができる。

人口減少や空き家問題への意識、持ち家や賃貸に対する考え方の変化を見る資料の1つとして、頭に入れておいても良いのかもしれない。

(鷲尾香一)