前回は、不動産購入後の管理会社さんとのつき合い方について話をしてきました。
その人の本業の仕事や不動産に関わることができる時間などによって、何をどこまで任せるのか、スタンスは変わってくる、管理会社さんとどういった距離感でやっていくのかを考えてみようといったことでした。
今回は、管理の中でも最も大切なひとつである、入居者づけについて話をしていきたいと思います。

入居者づけしやすい物件は

退去があると当然、入居者を募集することになりますが、自分で全て入居者づけまでしている、という方以外は、仲介業者さんのお世話になります。この入居者募集は、自分でしている方は本当に少数派で、大半の方は仲介を依頼しているでしょう。
清掃など、普段の建物管理は自分でされている方も、募集だけは委託しているという方も多いものです。
ということは、入居者づけの成否は、仲介業者さんの手に握られているところが多分にあると言えるでしょう。
もちろん、最終的には入居する方が決めるものですが、そこに至るまでの仲介業者さんの役割は非常に大きいものです。
実際、内見するまでは興味を持っていなかった物件だったのに、案内されて初めて興味を持つようになったということもあります。

そういった中でオーナーができる対策としては、当たり前のことですが、業者さんが入居者を決めやすい部屋にするということでしょう。入居条件、家賃設定、設備などという観点から多角的に検討する必要があります。
また時と場合によっては、(業者さんに対して)インセンティブを渡す、などということもあります。

仲介業者さんに一度「決めやすい物件」と思ってもらえると、次の退去があった時も覚えていてもらいやすくなるようなので、そのあたりは意識しておきましょう。 逆に言うと、「なかなか決まりづらい物件」と思われてしまうと、後々まで、その印象がついてしまう可能性もあるので、変な先入観を持たれないようにしたいものです。

あなたの物件は「捨て物件」になっていませんか?

入居者が決まるまでには一般的に、10件の内見があって1件が決まるとはよく言われていることですが、何とかしてこの確率を少しでも上げていきたいものです。
それと同時に、内見の数自体を増やすことも大切になります。
内見数を増やすことに関しては、お客さんと直接やりとりとしている仲介業者さんの采配がものを言うところです。
このことに関して大家さんとして知っておきたいことは、仲介業者さんも、クロージング(契約)に持っていくには自分なりに「ストーリー」を作っているということです。

ある時、こういう話を聞きました。「内見時には4つ物件を用意し、本命は3番目に紹介をする」ということです。
まず、あまりぱっとしない物件を2件見せて、お客さんが「イマイチだなぁ」と思ったところで、本命の3件目を紹介する。そうするとお客さんとしては、「いいかも」と思う。ただそれでも、あと1件くらいは見て、本当に3件目のものがいいかどうかを自分で納得したい。そこで4件目を見てみるが、やっぱり3件目がいいと確信できる。
業者さんは、このような流れをつくって、クロージングに持って行くということです。
もちろんこれは、お客さんから「この物件だけ」という絶対的な指定がない時だと思いますし、ひとつの例に過ぎないですが、お客さん側の心理を上手くついているなと思います。

いずれにしても、仲介業者さんも自分なりにクロージングまでのストーリーを描いている場合があることを覚えておいた方がいいでしょう。
そうすると、物件を所有している者としては、何に力を入れたらいいのかが自ずと分かってくるのではないでしょうか。

私ももちろん、自分の物件が、「捨て物件」にならないようにしなくては、と常に思っています。
以前は、どうにかして自分の物件も内見の候補に入れて欲しい、と思っていたものですが、今は、単に内見案内があったと聞いても、捨て物件になっていないかどうかを考えるようになりました。
いくら内見数が増えたところで、それが「捨て物件」としてのものなら、永遠に契約には至らない可能性があるからです。

賃貸住宅だけではないですが、どんなにいい商品でも、見せ方次第で売れなくもなり、それほどのものではなくても、見せ方で売れてしまうことがあるのだと思います。
さしあたり、自分の物件がどういう位置づけにあるのか、考えてみてはいかがでしょうか。

あと一ヵ月もすれば今年も終わり、1月になると、いわゆる繁忙期にさしかかってきます。入退去が集中し、慌ただしくなると思いますが、空室をひとつでも多く埋められるよう、段取りなど、事前準備はしっかりしておきたいものです。
「捨て物件」ではなく、「お客さんをつけやすい物件」と認識してもらえるよう、戦略を考えていきたいですね。