前回は、物件を所有する大家さんにとっては最も大切な要素のひとつである、入居者づけについて話をしました。
入居者募集を管理会社さん経由にされている方は、そこに「決めやすい物件だ」と思ってもらえることが大切だという話でした。
今は、ちょうど繁忙期ということもありますので、ぜひ意識されてみてください。

今回の話に入る前に・・・
こちらのコラムですが、今号で最終回となります。

ということもあり今回は、不動産投資を大きな目でとらえた話をしたいと思います。

不動産はどこまで増やすのか

セミナーなどをしていて最近感じることは、不動産投資に興味を持っている方が多くなったなぁということです。もちろん、既に物件を所有されている方もいらしていますが、まだ持たれていない方や、不動産投資の勉強をし始めたばかりという方も多いです。
そういった中でよくいただく質問に、「最初はどんな不動産を購入した方がいいのでしょうか?」というものがあります。

私の答えとしては、「それは、人によって違う」ということです。
なぜなら、最終的に何を目的としているのかが、人それぞれ違うからです。
不動産を購入して、最終的に手元に残るキャッシュが、年間1,000万円欲しい人と100万円欲しい人では、戦略、方法が変わるのです。更に言うと、いつまでにそれを達成したいのか、今使える資金はいくらあるのか、などによっても変わってきます。
途中の手段を間違うと、次の物件購入ができなくなってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

ですのでやはり、最初に考えるのはある程度の目標、そしてそこに向けてのストーリーを描くことになります。もちろん、ストーリー通りにいくことばかりではありませんが、最終目標があることで、軌道修正をしながら進めていくことができるようになります。
とは言え、綿密にストーリー組みをしなくてはいけないというわけではありません。

ある程度の方向性を定め、後は実際に行動しながら組み立てていく方が、結果的には早いのではないかと感じています。

不動産と金融資産

今私は、目標まで資産を増やす時なので、不動産にある程度資金を集中させています。
ただ資産はやはり、将来的には、金融資産と不動産両方をバランスよく持つことを目指したいと思っています。
もちろんこれは私のやり方であって、先ほども話をしました「いつまでにどのくらいの資産が欲しい」というものは人それぞれ違いますので、そこに至る手段も違うはずです。

私は、資産を「増やしていく」ためには、不動産という手段を選びました。
理由はいろいろあるのですが、金融商品を比べて「自分で調整する」のが可能なことがたくさんあるからというのが一番です。
「調整」できることは、いろいろあります。

まず購入する時。
不動産は相対取り引きなので、市場よりも安く購入することが可能です。売主や物件の事情などによって、価格の交渉をしていくことができるからです。
金融商品だとそうはいきません。取引される市場が決まっていますから、同じ瞬間に同じ商品を購入するのであれば、価格はひとつです。
(そもそも不動産は、同じ瞬間に同じものを購入することは不可能ですが。)

その他にも、土地と建物の価格を調整する、融資条件を交渉により調整することなど、それぞれの段階で、自分にとって有利になるように相手と調整していくことが可能です。
もちろん、相手があってのことですので、すべて自分の思う通りにいくわけではありませんが、少なくとも土俵にのせて、話し合うことはできるのです。

また物件を購入した後も、同様に調整できることがあります。
収益を上げていくために、大家として工夫、努力できることはいくらでもあるからです。
それから、不動産投資の特徴でもある、減価償却費や所得分散などを上手く使うことで、所得・手元に残るキャッシュを「調整」することも可能です。
金融資産ですと、売却益、配当、それに関わる経費は一目瞭然、税金も一律10%~20%かかります。
というわけで、不動産の場合は、知識の有無や経営手腕などによって、最終的に手元に残るキャッシュが変わってくるのです。

よく、株式投資などをしている方などからは、「不動産は不確かなことが多い」ということで、それがリスクだと言われることもあります。
まさにその通りで、投資をする上で大切なことは、「不確かなことをいかに少なくするか」を心がける必要があります。これは不動産でも同じことだと思います。
また、その他にも金融商品とは違ったリスクはあります。
一番大きなこととしては、ローンを利用して不動産投資をしている方でしたら、借入金を返済できなくなる可能性がゼロにはならないということでしょう。

上記は、金融商品と不動産を比較したほんの一部ですが、他にもメリットとリスクを考えると、私個人としては不動産で資産形成をしていくことが性に合っているのではないかと感じています。
そして、ある程度の資産をつくることができたら、金融資産と不動産のバランスを考え、資産を振り分けていきたいと思っています。

繰り返しになりますが、これはあくまで私自身のやり方です。一時的にでも、お金をどこかに集中させることのリスクは、もちろんあります。
とはいえ、私の場合、不動産投資でリスクを取っている間は、金融資産は非常に安全なもののみで運用をし、不動産以外ではリスクはほとんど取らないことを方針としています。

大家業を始めて6年になりますが、つくづく、賃貸経営は地道なことの積み重ねだなと実感しています。やったことが成果に結びつくかどうか分からない中で、試行錯誤の連続です。
「必ず成果が出る」という保証があれば頑張りも効くのですが、そんな保証もなく手探りで進んでいく中では、ややもすると、「どうせやってもやらなくても変わらない。」と思ってしまうこともあります。

そんな時私が思うのは、今やっていることは、直接的ではなくても必ず何かに結びついていくはずだと信じることです。全ては、「上手くいくまでの投資」だと思うようにするということです。
そう思うことで、すぐに結果が出なくても、待つこと、続けること、ができるようになりました。
もちろん、何も考えずやみくもにでは効果は半減だと思います。

常に考えながらではありますが、このように気持ちの拠り所をつくることで、モチベーションも続くものだと実感しています。
精神論ではありますが、不動産とは長い付き合いになりますので、自分の気持ちの持ち方、モチベーションをケアしていくのは、とても大切なことです。

さて、冒頭でも話しをしましたが、今回でこちらのコラムは最終となります。
第1回は、2007年の12月、それから1年ほどでしたが、毎回お付合いいただきまして本当にありがとうございました。
様々な出会いの中では、「コラム見ています」というお声がけもたくさんいただき、大変励みになりました。

私もまだまだ道半ばですが、これからも、なるべく「楽しい」と思える時間が増えるよう、日々大家業を営んでいきたいと思っています。
みなさんの不動産投資・賃貸経営が成功されますことを、心より願っています。
またいつか、このような機会がありますことを楽しみにしています。

長い間ご愛読いただきまして、ありがとうございました。