半期に1度、融資に関するアンケートを実施し、その結果を調査・分析する本企画。今回は、2023年10月~2024年3月までの半年間の融資動向について、約360人の投資家に行ったアンケート結果を公開する。

金融機関の融資姿勢が厳しいと言われる昨今、思うような融資が受けられずに悩んでいる投資家もいるだろう。また、金利について関心を寄せる投資家も多いかもしれない。

アンケート結果を見ると、投資家からの融資獲得報告が急増した金融機関があった一方、報告件数が半年前の3割以下まで減少した金融機関もある。

下記のボタンから、不動産融資の実例約370件をまとめた資料がダウンロード可能だ。資料を見ながら、最新の金融機関の融資動向を探っていこう。

※アンケート結果のダウンロード期間は終了いたしました

「年収400万円以下」への融資割合、直近1年で最高

今回のアンケートでは、期間中に融資がおりた物件について融資条件を回答してもらい、369事例が集まった。金融機関数は119行分になる。

以降は、アンケート結果をもとに投資家の属性や融資の傾向を掴んでいきたい。

■本業年収

家賃年収を除く本業年収を見ると、1000万~1500万円が22%(前回22%)で最多。600万~800万円が19%(同18%)、800万~1000万円が17%(同21%)と続いた。

400万円未満の割合が11%となり、前回から4ポイント上昇。前回に引き続き、年収が高くない層にも融資が出ているようだ。直近1年ではこれまで、400万円未満の割合が10%を超えたことはなかった。

年収1000万円を基準に全体を俯瞰すると、年収1000万円以下で融資を受けた人が57%、それ以上で融資を受けた人が43%という結果に。前回と比べて大きな変化はなかった。

■金融資産

保有している金融資産額を見ると、最も多かったのは1000万~3000万円。割合は前回から3ポイント増加し、33%だった。次に500万円~1000万円が17%(前回13%)、3000万円~5000万円が16%(同15%)と僅差で続く。

なお500万円以下の割合は11%となり、前回から5ポイント減少した。本業年収とは対象的に、金融資産については一定以上の水準を求める傾向が強まった可能性がある。

■負債総額

負債総額を見ると、最も多かったのは1億円以上で39%。前回から7ポイント上昇した。次いで5000万~1億円が23%(前回25%)、3000万~5000万円が16%(同13%)だった。

負債総額3000万円以下の割合が22%となり、前回の30%を大きく下回る結果となった。

「低金利」で融資を引く投資家の特徴は

マイナス金利の解除が発表されるなど、昨今の金融情勢は転換点にある。多額の融資を受ける投資家にとって、やはり気になるのは金利の動向だろう。今回は金利について、3つの視点から分析する。

■融資時期×金利

まず、過去3回のアンケート結果について、金利の割合をグラフ化した。比較すると、「1%未満」~「2%未満」の割合は減少傾向にある。全体として、金利はやや上昇傾向にあるといえそうだ。

とはいえ、「3%未満」の割合が例年上昇しているため、「4%未満」「4%以上」の割合は2023年下期・2022年下期でほぼ変わりない。

以降は、今回のアンケートに絞って金利動向を見ていこう。

■金融資産×金利

金融資産額が大きいほど「1%未満」の割合が増加しており、「資産額1億円以上」では3割近くに達する。反対に「4%以上」の割合は、金融資産額が小さいほど増加している。

■年間家賃収入×金利

年間家賃収入が大きくなるほど「1%未満」の割合が上昇し、「4%以上」の割合が減少する。年間家賃収入3000万円以上では、「4%以上」は0%だった。

年間家賃収入と金利の関係からは、どれくらいの投資規模の投資家がどのような融資を活用しているのかをうかがい知ることができる。

例えば、年間家賃収入5000万円前後まででは「2%未満」の回答が多い。金利水準から推察するに、主にアパートローンを活用して規模を拡大している人が多いのではないだろうか。

一方、年間家賃収入1億円を超えてくると、「3%未満」が一気に増える。信金・信組をメインバンクとし、プロパーローンを活用しながら、事業規模で不動産投資に取り組む人が多い傾向にあるのかもしれない。

一棟アパートへの融資が増加

ここまで融資が下りた「投資家」の属性について見てきたが、続いて融資が下りた「物件」に注目する。

■物件所在地

融資が下りた物件を所在地別に見ると、最も多いのが「南関東」で26%(前回27%)となった。次いで東京都が21%(同21%)、近畿が16%(同15%)など、前回とほとんど変わりない結果となった。

 

■物件種別

物件種別を見ると、最も多かったのは一棟アパートで53%。前回から7ポイント増加した。

次いで区分マンションが23%(前回26%)、一棟マンションが11%(同13%)、戸建賃貸が10%(同10%)、一棟商業ビルが1%(同2%)という結果となった。

■物件価格

物件価格については、前回同様1000万~3000万円が34%(前回34%)で最多だった。3000万~5000万円が18%で、前回から4ポイントの上昇。5000万~1億円も25%(同23%)とやや上昇したが、1000万円以下の物件と1億円以上の物件はどちらも3ポイント減少している。

物件種別では、一棟アパートへの融資件数の増加が目立つ。物件価格を見ると、3000万~5000万円の価格帯への融資件数が増えているようだ。