はじめに

こんにちは、船井財産コンサルタンツ京葉の大野晃弘です。

前回は導入編として「景気の三気と昨今の不動産市況」をお話いたしましたが、いかがでしたか?
不動産投資の環境は、景気の三気といった「売主の状況」、皆様の自己資金や属性に基づく「買主の状況」、税制や金融機関の融資状況等といった「外部環境要因」によって変化することがご理解頂けたと思います。

さて、今回のテーマは「取引事例を分析し購入戦略を立てる(分析編その1)」です。

取引事例

まず、【表1】は昨年下半期(7月~12月)の取引事例を一覧表にしたものです。
(※物件の特定を避けるため、駅名は記載いたしません。)

【表1】取引事例一覧表

(金額単位:千円)
項目 取引実績 平均
1 2 3 4 5 6 7
決済日 2008.7 2008.8 2008.9 2008.10 2008.11 2008.12 2008.12
売主 ファンド ファンド ファンド ファンド ファンド ファンド ファンド
概要 所在地 神奈川県 東京都 神奈川県 千葉県 神奈川県 東京都 東京都
川崎市 杉並区 川崎市 浦安市 相模原市 世田谷区 目黒区
交通 小田急線 JR
中央線
田園
都市線
JR京葉線 JR
横浜線
東急大井町線 田園
都市線
駅からの距離 徒歩8分 徒歩4分 徒歩9分 徒歩20分 バス8分 徒歩15分 徒歩5分
構造 RC造4F建 RC造5F建 RC造
7F建
RC造14F建 RC造6F建 RC造5F建 RC造5F建
間取
×戸数
1R×41戸 1K×20戸 1~2LDK
×15戸
店舗×9戸 3DK×37戸 1R×30戸 1K×23戸
完成 1992年 1991年 2005年 2005年 1991年 1991年 1991年 1995年
築年数 17年 18年 4年 4年 18年 18年 18年 14年
権利 所有権 所有権 信託
受益権
区分所有 所有権 信託
受益権
信託
受益権
登記
地積
453.81m2 239.69m2 496.00m2 388.41m2 1040.41m2 347.09m2 191.89m2
登記延床面積 723.04m2 543.22m2 1067.78m2 826.91m2 1948.29m2 519.49m2 437.65m2
募集
状況
満室時想定年収 22,476 17,880 31,488 50,171 34,663 24,717 22,303 29,100
固定資産税 1,224 793 1,265 1,377 2,462 792 722 1,234
建物管理費他 2,038 3,161 4,625 5,534 2,641 956 2,022 2,997
販売価格 240,000 260,000 440,000 567,000 300,000 355,000 300,000 351,714
満室時表面利回り 9.37% 6.88% 7.16% 8.85% 11.55% 6.96% 7.43% 8.27%
満室時NET利回り 8.01% 5.36% 5.82% 7.63% 9.85% 6.47% 6.52% 7.07%
成約値 売買価格 190,000 205,000 350,000 420,000 262,000 255,000 218,000 271,429
満室時表面利回り 11.83% 8.72% 9.00% 11.95% 13.23% 9.69% 10.23% 10.72%
満室時NET利回り 10.11% 6.79% 7.31% 10.30% 11.28% 9.01% 8.97% 9.16%
減額 50,000 55,000 90,000 147,000 38,000 100,000 82,000 80,286
減額率 20.83% 21.15% 20.45% 25.93% 12.67% 28.17% 27.33% 22.83%
買主 借入
機関
都銀 信用
金庫
都銀 地銀 地銀 地銀 地銀
自己資金(諸費用別) 5,000 0 50,000 0 9,800 0 20,000 12,114
目的 投資 投資 相続税
対策
投資 投資 投資 投資
属性 会社員 会社
経営
病院
経営
歯科医 会社員 会社員 会社員
購入
名義
管理
法人
個人 個人 管理
法人
管理
法人
個人 個人
評価 H20年路線価(m2) 140 510 235 245 135 420 530
再調達建物評価(m2) 190 200 190 200 180 200 200
土地評価額 63,533 122,242 116,560 95,160 140,455 145,778 101,702
建物評価額 87,688 67,036 185,612 151,307 216,385 64,107 54,008
簡易積算評価 151,221 189,278 302,172 246,467 356,840 209,885 155,710

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次に、【表1】を項目別に分析していきます。

取引事例分析1(売主)

売主は全て不動産ファンド会社が組成したSPC法人(注:資産の流動化や証券化など特別の目的のために設立されるペーパーカンパニー)です。

これは、不動産ファンド会社の出口戦略が、これまで主力だった「不動産ファンド会社への売却」から、「市場(特に個人)への売却」へとシフトしたためです。今回の不動産不況により、金融機関は不動産ファンド会社・不動産業者への融資を引き締める一方、条件は厳しいものの、属性の高い個人へは引き続き融資していることは、前回お話ししたとおりです。

また買主にとっても、不動産ファンド会社が売主であることは、安心材料の一つとなります。なぜなら、多くの不動産ファンド会社は、厳しい収益不動産証券化の審査に対応するため、物件購入時にエンジニアリングレポート(※)を取得しています。そこで買主は、それ以後の修繕履歴を合わせて取得すれば、今後の修繕費の目安や計画が非常に立てやすくなるのです。

※エンジニアリングレポート
通称ERと呼び、対象不動産の立地状況、管理状況、遵法性、建築物の仕上げ・構造、設備の劣化状況、耐震性能、有害物含有状況、土壌汚染等について、第三者的見地から行う調査資料

<ワンポイントアドバイス>
収益不動産の購入は非常に高額な投資です。できれば購入前にエンジニアリングレポートを取得すべきなのですが、金銭面、時間面ともに現実的には難しいため、売主へ修繕履歴等(ER含む)の有無について確認すると良いでしょう。