取引事例分析8(借入機関・自己資金・評価[物件の担保価値])

a.借入機関
今回の取引事例を見ますと、借入機関は、都市銀行から地方銀行へと移行しているのがお分かりいただけると思います。なお、一般的なサラリーマン投資家よりもさらに属性の良い方は、現在でも都市銀行からの借入が可能な場合もあります。

都市銀行の特徴は、比較的低金利であり、全国の不動産への融資が可能なため、物件の選定も幅広くなります。一方、地方銀行や信用金庫は地域密着型ですので、管轄地域でのみ融資を行うことから、物件選定の幅が狭く、都銀に比べ金利も高くなる傾向にあります。

b. 自己資金
収益不動産への融資状況は、昨年9月のリーマンショック以降、更に厳しさを増しています。融資申請者の属性にもよりますが、現在では10%~30%の自己資金が求められています。

さて、収益不動産購入資金の借入は、いわゆる「アパートローン」として融資を受けることになるのですが、「アパートローン」には、「商品として定型化されているアパートローン」と、プロパー型のアパートローン(以下、「プロパーローン」)の2種類あります。ここでは、それぞれの特徴を説明します。

まず、商品として定型化されているアパートローンとは、融資対象が不動産投資に限定されているため、「ご利用いただける方」「ご融資金額」「ご融資期間」「適用金利」等、あらかじめ決まった条件が明示されており、この枠内でしかローンが実行されません。よって、一つでも条件から外れた場合は融資しないため、融通が利かないのがデメリットですが、逆に言えば、条件を満たせば融資してもらえるということになりますので、各金融機関に条件を確認し、皆様の状況と照らし合わせてみていただければと思います。

次にプロパーローンとは、各金融機関が企業の「事業資金」として貸し出す融資のことで、あくまでアパート経営を一つの「事業」として判断して貸し出す融資のことを言います。(信用保証協会の保証もつけません。)
また、プロパーローンは融資条件の枠組みが特に決まっていないので、臨機応変にローンを組むことが可能ですが、その分審査項目が多く、厳しく審査されるため時間(約1ヶ月程度)もかかります。

<ワンポイントアドバイス>
実を言いますと、今回の取引事例では、自己資金比率が低い融資は全て「プロパーローン」なのです。どちらでの融資で審査を行うかは金融機関との話し合いによりますが、自己資金比率のことを考えれば、条件は厳しいものの、まずはプロパーローンで審査してもらうよう打診してください。なお、地方銀行や信用金庫を利用する場合は、定期預金(積立含)をするといったことも融資を引きやすくする要因となりますので、担当者と交渉してみると良いでしょう。

c. 評価[物件の担保価値]
融資審査において、購入物件の担保評価はとても重要な項目です。
物件評価の算出方法は、「積算法(原価法)」と「収益還元法」の2通りがあります。
どちらの評価方法をとるかは金融機関により異なりますが、多くの場合、いずれも算出して低い方を物件評価とします。通常は積算法(原価法)の方が低くなるのが一般的です。

担保価値は、物件の評価に決められた「掛け目」(50%~80%程度)を掛けて算出しますので、担保価値は物件評価より低くなることになります。

なお、物件評価(担保評価)が高いほど融資条件は良くなりますので、購入物件の検討の際には、下記に示した各種物件情報を収集し、計算式にあてはめて簡易積算評価を算出するようにしてください。

【簡易積算評価算出式】
(土地評価)=地積(m2)×路線価(※4)
(建物評価)=
   建物延床面積(㎡)×再調達価格(※5)×(法定耐用年数(※6)-築年数)/法定耐用年数
(合計評価)=土地評価+建物評価

※4 土地評価を算出するに当たっては、国税庁発表の路線価を参照するのが良いでしょう。
【路線価図】http://www.rosenka.nta.go.jp/

※5 再調達価格は金融機関毎に設定が違いますので、詳しくは融資を申込む金融機関にお尋ねください。
例:RC造の場合(180千円/m2~200千円/m2)

※6 法定耐用年数は前回の取引事例分析3を参照。

<ワンポイントアドバイス>
収益不動産を購入には、まず融資が通らなければ始まりません。
金融機関の融資状況は日々変化していますので、日頃から収益不動産を取扱う不動産業者と連絡を密にして、最新の情報を収集してください。

いかがでしたか?
次回は、「取引事例を分析し購入戦略を立てる(戦略編)」をお送りいたします。