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「住民税非課税世帯」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

最近、給付金の給付条件などでこの用語を聞く機会が増えてきたように思います。

住民税非課税世帯とは、読んで字のごとく「住民税が課税されない世帯」のことです。もう少し詳しく言うと、「住民税が非課税になる要件を世帯員全員が満たし、住民税が課税されている人がいない世帯」が住民税非課税世帯です。

このような住民税非課税世帯は、いま日本にどのぐらい存在するのでしょうか? そして、このような世帯は今後、不動産賃貸の市場にどのような影響を与えるのでしょうか? 今回は、「住民税非課税世帯」に焦点を当ててみたいと思います。

住民税非課税=低所得?

日本では、住民税非課税世帯にさまざまな公的支援があります。

そうした中、近時問題になっているのは、住民税非課税世帯の多くが高齢者世帯であることから、「結局は高齢者支援なのではないか?」という論調です。

そもそも住民税は、私たちが日々の生活の中で利用する公共施設、上下水道、ごみ処理、学校教育といった行政サービスの活動費に充てる目的で、その地域に住む個人に課される地方税です。

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住民税が非課税となるのは、生活保護を受けている個人だけではありません。

障がい者・未成年者・寡婦(夫と離婚または死別した独身女性)またはひとり親で、前年の年収が204万3999円以下(給与所得者の場合)である個人、また前年の合計所得金額が市区町村の条例で定める額より少ない個人が、住民税非課税となります。

ごく単純に言えば、「所得が低い世帯」が住民税非課税世帯となっています。この住民税非課税世帯の割合は、日本全体でどのぐらい存在するのでしょうか。

全世帯の4分の1が非課税?

日本全体の住民税非課税世帯数は、統計としては整備されていません。ただし、厚生労働省が所管している「国民生活基礎調査」では、限られた調査対象世帯のうち、住民税非課税世帯がどの程度の割合となっているかが示されています。


<令和4年国民生活基礎調査>
・29歳以下の非課税世帯…95世帯
・30~39歳の非課税世帯…70世帯
・40~49歳の非課税世帯…115世帯
・50~59歳の非課税世帯…178世帯
・60~69歳の非課税世帯…384世帯
・70~79歳の非課税世帯…886世帯
・80歳以上の非課税世帯…695世帯
※調査世帯数1万世帯のうち、住民税非課税世帯=2424世帯
出典:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002042929


このデータを割合に直してみると、より分かりやすくなります。

そしてこのデータをさらに見ていくと、世帯主が年金受給年齢である65歳以上の世帯5171世帯のうち、住民税課税世帯は3360世帯だということが分かります。つまり非課税世帯は1811世帯であり、全体の35%です。

当該調査全体では、住民税非課税世帯が24.2%、特に高齢者に住民税非課税世帯が多いことになります。

住民税非課税世帯というのは、当然ながら定期的な収入が少ない世帯です。高齢者層で住民税非課税世帯が多いということは、「受給している年金が住民税を課税される所得に達していない」ということと同義です。

総務省によると、日本人住民及び複数国籍の世帯数は、5849万3428世帯(住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数:令和5年1月1日現在)です。

簡易な試算となりますが、5849万世帯×24.2%=1415万世帯が、日本全体における住民税非課税世帯と想定されます。言い換えれば、日本は全世帯の4分の1にあたる、1400万世帯以上が住民税非課税の低所得世帯ということです。

これが住民税非課税世帯の状況から見る日本の姿です。

日本の年金受給額は?

ここまで、日本の住民税非課税世帯の状況について見てきました。特に年金受給世帯において、住民税非課税世帯が多くなっていることがお分かりになったと思います。

では、日本全体で公的年金の受給額はどの程度なのでしょうか?

最新のデータは「令和4年度厚生年金保険、国民年金事業の概況」にあります。会社員が加入し受給する厚生年金保険では、受給者平均年金月額は、令和4年で14万4982円となっています。これは年収に換算すると173万9784円となります。

また、自営業者等が加入している国民年金保険では、受給者平均年金月額は令和4年で5万6428円となります。これは年収に換算すると67万7136円です。

確かにこの年金の受給金額水準だと、住民税非課税世帯となってもおかしくはありません。日本における住民税非課税世帯と年金受給額については上記の通りです。

60歳以上の持ち家比率は高いが…

続いて、世代間の比較として、日本における持家の比率も確認します。

5年ごとに調査がなされる住宅・土地統計調査(平成30年住宅、土地統計調査)では、2018年時点で持ち家が3280万2000戸で、住宅総数に占める割合は61.2%でした。借家は1906万5千戸で、住宅総数に占める割合は35.6%となっています。

持家比率は年代別にすると以下のようになっています。

出典:https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/19/backdata/01-01-08-06.html

持家比率は、年代が高くなるにつれて上昇し、世帯主が60歳以上の世帯では80%となっています。ただし、今後も同様の割合になっていくかは不透明です。現役世代の持家比率が低下しているためです。このデータは2018年までですが、あしもとでは住宅価格が上昇しています。

したがって、現役世代の住宅取得意欲(もしくは住宅取得能力)が低下している可能性はあり、今の現役世代が年金生活になっていく時に持家比率が今までのように8割に達するのは難しいのではないかと筆者は考えています。

なお、同じ調査では、日本全体の空き家は8489千戸、空き家率13.6%となっています。この空き家への対応も日本の大きな課題です。

今後起きること

ここまで、日本の住民税非課税世帯の状況、年金の受給額、持家比率について見てきました。

日本では、これからさらなる高齢化が進みます。

2020年に3603万人(全人口の28.6%)だった65歳以上の人口が、2045年には3945万人(同36.3%、死亡中位推計の場合)まで増加します(国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」)。

すなわち、65歳以上の人口が20年で9.5%増加するのみならず、全人口に占める割合が上昇します。これは、賃貸物件の経営にも大きな影響をもたらす可能性があります。

今回見てきたように、世帯主が65歳以上である世帯は住民税非課税世帯である割合が高く、その要因は年金受給額が住民税の課税水準に満たないからでした。

収入面だけを鑑みると、高齢者は「おカネがない」層が多いということになります。この高齢者がさらに増加し、国民全体に占める割合も上昇していき、そして、持家比率は高まらない可能性があり、賃貸住宅に居住せざるを得ない高齢者も増えていく、ということが予想されるのです。

すなわち、今後の賃貸住宅経営を考えていくと、現役世代と比べて収入が低い高齢者を入居者としてどのように扱うのか、考えるのか、が今まで以上に重要になってくることが明らかです。

収入だけではなく金融資産をしっかりと確認するなど、入居審査も変わっていくのでしょう。これがこれから日本における賃貸住宅経営の1つのイシューとなります。皆様はどのように考えていらっしゃるでしょうか。

(旦直土)