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突然ですが皆さんは、分譲マンションのうちどこが「専有部分」で、どこが「共用部分」であるか、ご存じでしょうか。

居室内は専有部分で、エントランスなどは共用部分…ということは多くの方が認識していることと思います。では、玄関扉外側の塗装部分や、居室の天井を通る排水管はどちらに当たるでしょうか?

その部分が専有部分であるか共用部分であるかにより、使用方法やリフォームなどの制限、あるいは管理に関する責任、修理費の負担などの話が変わってきます。

今回は、この専有部分と共用部分の区別について、近年の裁判例も交えながらご説明します。

専有部分と共用部分の定義

分譲マンションなど区分所有建物の各部分は、「専有部分」と「共用部分」に分けられます。専有部分とは、簡単に言うと個人の所有権の対象になる範囲のことです。

建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法)では、専有部分とは区分所有権の目的となる建物の部分、共用部分はそれ以外の部分とそれぞれ定められています。

共用部分はさらに「法定共用部分」(法律上当然に共用部分とされる部分)と「規約共用部分」(規約により共用部分とされた部分)に分かれます。

法定共用部分については、区分所有法4条1項に「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」とされています。

具体的には、廊下や階段室のほか、エレベーターや建物の基礎、支柱、床や壁など躯体そのもの、屋根(屋上)部分、エントランスホール、パイプスペース、竪(立て)配管などが挙げられます。

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意外に思われるかもしれませんが、裁判例上はベランダ(バルコニー)も共用部分とされています。これは災害時の避難経路として使われることなどが理由とされています(ただし、区分所有者に独占的な使用権(専用使用権)が認められているため、当然ながら、普段は他の人が使えるわけではありません)。

これ以外にも、管理規約などの規約において定められた部分も共用部分となります(規約共用部分)。近年の建物であれば、どこが専有部分でどこが共用部分なのか、管理規約に細かく定められている例が比較的多く見られます。

ちなみに、国土交通省が発表している標準管理規約では、次のように定められています。

躯体部分やエレベーター、ライフラインの配線配管などの法定共用部分に加え、玄関扉の外側の塗装部分や、窓枠および窓ガラスも共用部分だと定められています。

法定共用部分以外の部分については、規約で自由に定めることができるため、マンションやビルごとに細かい範囲が異なっている可能性があります。所有する物件の建物の管理規約は必ず確認するようにしましょう。

配管の修繕費、誰が負担すべき?

上記のような規約の定めない場合、問題となっている部分が前述の法定共用部分に当たるかどうかを判断しなければなりません(規約に記載のない部分が問題となっている場合も同じ)。

ある部分が共用部分かどうかは、裁判例においては、その部分の用途や利用関係、設置された場所、点検や修理の方法などを総合的に考慮するものとされています(東京高裁平成30年5月23日判決)。

この点は次の場合に問題になります。

・使用方法(当該部分を区分所有者が自由に使ってよいか)
・リフォーム(管理組合の承認なく区分所有者が自由に改造できるか)
・管理や修繕(当該部分を誰の責任で管理すべきか、修繕費用を誰が負担すべきか)
・事故時の対応(当該部分の破損などにより第三者に損害が生じた場合に誰が賠償義務を負担すべきか)

近年の裁判例ですと、例えば前述の東京高裁平成30年5月23日判決では、建物内のガス本管から各部屋に向かって分岐した枝管の修繕費用を誰が負担するのかが問題となりました。

破損箇所は部屋の外であり、部屋とメーターの間の部分で、区分所有者が払った修理費用分を管理組合に請求した訴訟です。

判決では、ガス管の当該部分は、区分所有者が自由に立ち入って点検・修理などを実施することができるようになっている点や、区分所有者の支配管理下にあり自ら維持管理することが可能だという点などから、専有部分だと判断しました(区分所有者の請求は棄却)。

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また、排水管が床スラブを貫通して階下の部屋の天井裏を通っている事例においては、その天井裏部分は共用部分であるとされました(最高裁平成12年3月21日判決)。

上階(区分所有者側)から点検・修理を行うことが不可能であることなどが理由です。よって、区分所有者はその部分の破損による修理費や水漏れによる損害賠償責任を負わないとされました。

この考え方からすると、排水管が床スラブ内を通っている事例でも同様に共用部分に当たると考えられます。

一方で、そのような構造であっても破損箇所が床板の下とスラブの間(つまり部屋の内側)である場合には、その箇所は専有部分であるとされた裁判例があります(福岡高裁平成12年12月27日判決)。

このように、破損箇所がどの部分なのかによって責任の区分が変わることもありますので、共用部分か専有部分かというのは時に微妙な問題となります。

言うまでもなく、トラブル防止のためには管理規約をしっかり定めておくことがまず必要です。ただ、これにとどまらず、共用部分のルールや専有部分の管理責任についても周知しておくとよいでしょう。

また、区分所有者側としては、管理規約を確認するとともに、専有部分については自らが責任をもって管理することが必要です。

(弁護士・関口郷思)