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企業の決算から、不動産業界の現状について考える本連載。今回取り上げるのはスターツコーポレーション株式会社です。

不動産管理を中心に、建設、賃貸仲介や売買仲介、分譲不動産など、多様な不動産事業を行っています。

2024年3月期通期の業績では、分譲不動産事業で前期比144億円の減収、建設事業でも前期比5億円の減益と、一部で苦戦が見られました。

今回はそんなスターツコーポレーションの決算から、不動産業界の動向を包括的に見ていきましょう。

主力の不動産管理で堅調に拡大

まずは事業内容から見ていきます。スターツコーポレーションの事業セグメントは、以下の9つです。


建設

賃貸仲介、売買仲介

不動産管理

分譲不動産

ホテル、レジャー

高齢者支援、保育

金融、コンサルティング

出版

物販、文化


不動産仲介を行うピタットハウスの運営や建設事業、不動産管理事業、分譲不動産事業、住宅ローンなどを取り扱う金融事業や高齢者施設の運営、ホテルの運営、さらには出版など不動産関連事業を中心に多角的な経営を行っていることが分かります。

2024年3月期時点でのセグメント別売上の構成は以下の通りです。

利益で見た場合、建設が22%、賃貸仲介が8%、売買仲介が9%、不動産管理が40%、分譲不動産が2%、ホテル・レジャーが4%、高齢者支援・保育が2%、金融・コンサルティングが5%、出版が7%。 ※端数処理の関係上、内訳の和が100%ではない(スターツコーポレーション株式会社「2024年3月期 決算説明資料」をもとに作成)

売上・利益ともに、建設事業と不動産管理事業が主力となっており、特に不動産管理事業はどちらも4割ほどを占めています。

安定的な収益を見込める不動産管理が主力の構成となっていますから、企業としても比較的安定した業績が期待できるということですね。

続いて、2016年3月期以降の業績の推移を見ていきましょう。多少の増減はありつつの推移ですが、基本的に右肩上がりでの成長傾向が続いており、堅調な状況です。

スターツコーポレーション株式会社「2024年3月期 決算説明資料

セグメント別の売上を見てみると、分譲不動産事業のような、案件が大型でその引き渡し時期に業績が左右されやすい事業が要因で、全体としては増減ある推移になっています。

しかし建設事業と不動産管理事業が安定的で、堅調な成長を支えています。

セグメント別の利益の推移はどうでしょうか。近年の建設事業は、売上拡大が進む一方で資材高騰や労務費高騰などがあり、利益面は伸び悩んでいます。

そんな中でも不動産管理事業は安定的な成長が続き、利益面でも堅調な拡大を支えています。

スターツは自社で不動産の建設から、その売買や賃貸の仲介、販売にも携わり、その後の不動産管理まで一貫して行っている企業です。そのため建設、販売量が積みあがっていくほどに不動産管理の量も拡大していきます。

現在の主力事業を見ても分かる通り、これまで長く事業を続けてくる中で、不動産管理事業が積みあがっています。

その積み上がりが続き、業績も堅調な状況だったということで、安定的な成長を期待できる企業であることが分かります。

分譲不動産事業が大幅減収、減益

それではスターツについてある程度分かったところで、直近の状況を詳しく見ていきましょう。

今回取り上げるのは、2024年3月期の通期の業績です。


売上高:2334億円(▲0.2%)

営業利益:305億円(+8.6%)

経常利益:334億円(+11.3%)

純利益:221億円(+9.3%)


若干の減収となりましたが増益と、利益面は堅調な状況です。

事業が非常に多いので、不動産関連の事業に絞ってセグメント別の売上の前期比を見ていくと、以下の通りです。


・建設:+30億円

・賃貸仲介:+2億円

・売買仲介:+10億円

・不動産管理:+38億円

・分譲不動産:▲144億円

・ホテル、レジャー:+35億円


ホテルや建設、不動産管理など多くの事業が増収となりましたが、分譲不動産事業が前期比で大幅な減収となり、企業全体としても減収となっています。

続いて、セグメント別の利益の前期比は以下の通りです。


・建設:▲5億円

・賃貸仲介:+0億円

・売買仲介:+10億円

・不動産管理:+13億円

・分譲不動産:▲11億円

・ホテル、レジャー:+10億円


売上も大幅減収となった分譲不動産が減益となり、売上は伸びていた建設事業の収益性が悪化しています。

ですが、不動産管理の堅調な伸びが続いていること、売買仲介やホテルが好調なことで、全体としては増益となっていました。

分譲事業は停滞、建設はコスト増加で苦戦

ではどうしてこのような状況だったのか、不動産関連の事業についてもう少し詳しく見ていきましょう。

○分譲不動産事業

まず、大幅な減収減益となっていた分譲不動産事業は、前期にあったウェアハウジング物件の大型譲渡による反動が大きいです。それを除くここ数年は、横ばい傾向の推移となっています。

そもそも不動産分譲事業自体が、大きな物件の引き渡し時期による影響を受けますから、業績の増減が大きいです。

物件の完成時期によって将来の収益の見通しも立ちやすいですが、2025年3月期以降、2027年3月期までは大型の物件の引き渡し予定はなく、苦戦を想定しています。

分譲事業は停滞傾向で、しばらくは苦戦が続く可能性が高い状況ということです。

スターツコーポレーション株式会社「2024年3月期 決算説明資料

○建設事業

続いて、増収ながらも減益となっていた建設事業は、低層賃貸が前期比で+10棟となり、中高層賃貸の増加による工事の大型化もあって売上は堅調でした。

しかし資材高騰と労務費上昇の影響によって、1.2%の減益となりました。

2025年3月期以降では、資材費は一定の落ち着きを見せ始めていますが高止まり傾向にありますし、労務費の上昇は今後も続くことが考えられますから、利益面は一定の苦戦が続くことが想定されます。

スターツの2027年3月期までの営業利益の予想を見ても、利益面は2023年3月期を下回った状況で推移する見込みです。

コスト増加の中で、建設事業は利益面が伸びにくい状況だということですね。

不動産市況の悪化で受注面にも影響

○不動産管理事業

その一方で、安定した成長を見せていた不動産管理事業は管理物件数も増加していて堅調です。

建設事業も収益性は悪化していましたが、需要が大きく低迷しているわけではなく、単価が上昇する中で売上は拡大していました。

さらに受注残高(商品の注文を受けているものの、まだ納品できておらず、売上として計上できない金額)も積みあがっています。

となると建設事業の収益性悪化は続いたとしても、その建設後の不動産管理事業の方では安定した成長が期待できます。

建設費高騰の影響はありますが、安定収益が期待できる不動産管理事業の収益へ繋げられるのは強みとなっていますね。

とはいえ、懸念点が無いわけではありません。建設事業の受注残高は増加していましたが、2024年3月期の受注高自体は前期比で減少となっています。

不動産市況の悪化を受けて、受注面に影響が出ていることが考えられますから、今後の受注面の状況には注目です。

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○賃貸仲介事業

賃貸仲介は増収でわずかながらも増益でしたが、賃貸管理戸数の増加によって住宅更新手数料が増加していることも、その一因となっています。

賃貸仲介は不動産相場に関係なく、安定した実需があります。この事業でも仲介件数の増加と共に一定の収益の積み上がりが見込めるということですから、今後も堅調な状況が期待できます。

○売買仲介事業

売買仲介は大幅な増収増益と好調でした。その要因は仲介の手数料単価の増加で、前期比+22%となっています。

都心部のマンションを中心に不動産価格の高騰が進んでいますから、そういった中で好調だったことが分かります。

○金融事業

金融事業も好調でしたが、それには不動産価格の上昇による住宅ローン取り扱い手数料増加の影響がありました。

手数料は借入金額に一定率を乗じて計算されていますから、不動産価格が上昇して借入金額も上昇すると、手数料も増加することが考えられます。

不動産価格の上昇が、売買仲介、金融事業に好影響を与えていたということですね。現在もマンション価格を中心に高止まり傾向が続いていますから、今後も堅調な業績が期待できます。

とはいえ、価格高騰が需要面への悪化を招く可能性がありますし、金利上昇局面となればなおさら懸念されます。金利動向や市場環境には注意が必要です。

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○ホテル事業

大幅な増収増益だったホテル事業では、顧客数も回復していますし単価も大幅に上昇しています。

客室単価に関しては、コロナ前より上昇しているとしています。

レジャー需要やインバウンドの回復があり、ホテル単価は高止まりしています。円安が続く中でインバウンドの活況が期待されますから、ホテル単価上昇による好影響が続くことが期待できます。

人口減少が続くことが予想される国内の不動産市場において、ホテル事業は数少ない成長分野です。

そういった中で2024年4月には新ホテルブランドである「ホテルコメント 横浜関内」を開業しており力を入れています。今後も積極投資を進めていく可能性があり、ホテル事業には注目です。

今後は業績改善で増益か

全体を振り返ってみると、不動産分譲は停滞、建設事業は資材費や労務費高騰で収益性が悪化し利益面が苦戦しています。

とはいえ需要が大きく減少しているわけではなく、建設量自体は堅調な中で不動産管理は成長、不動価格高騰の中で売買仲介や金融事業が単価上昇で好調、ホテル事業も単価上昇で好調となっていました。

そして、賃貸仲介は実需が影響を与えますから、安定した推移となっています。

同じ不動産関連の業界の中でも、業態によって差が出ていることが分かりますね。

今後も分譲事業や建設事業の苦戦が想定されるものの、堅調な状況が期待できる事業も多数あります。

2025年3月期の通期予想を見てみると、建設事業や分譲事業の減益を見込むものの、仲介や金融、ホテルや不動産管理の成長によって全体では若干ながらも増益を見込んでいます。

また、2026年3月期以降は建設事業の業績改善を見込み、それによって大幅増益となることを見込んでいます。

不動産価格上昇、金利上昇の中で需要面に大きな悪影響が出なければ堅調な状況が期待できそうですから、需要面には注目です。

(妄想する決算)